ケイパビリティ・ベース競争戦略とは?ビジネスプロセスを競争力に変える4原則

ケイパビリティ・ベース競争戦略

ケイパビリティ・ベース競争戦略とは、競争力の柱となる戦略的なビジネスプロセス「ケイパビリティ」を見つけ出し、一元管理し、多額の投資を行って磨き上げる戦略のことです。

ケイパビリティ・ベース競争戦略には、

  1. 企業戦略の構成要素がビジネスプロセスであること
  2. 主要なビジネスプロセスをケイパビリティに転換すること
  3. 社内の部門を結びつけるインフラに投資すること
  4. ケイパビリティ戦略の推進をCEOが行うこと

という4原則があります。

ここでは、ケイパビリティ・ベース競争戦略についてわかりやすく解説します。

ケイパビリティとは

ケイパビリティとは、一連の戦略的なビジネスプロセスと、それを実行するための「実行力」のことです。

下の図は、

  • 安くて新鮮な食品を提供する

という戦略的なビジネスプロセス(=ケイパビリティ)を持つ企業の例です。

ケイパビリティ・チェーン

ケイパビリティは、複雑に組み合わさったプロセスであるため、競合他社が簡単には真似することができません。

また、単純に「企業の能力」ではない理由は、

  • 社内外の機能が複数連携している

という部分にあります。

顧客に価値を提供するために必要なプロセスを、すべてひっくるめて「ケイパビリティ」と呼んでいます。

ケイパビリティとは?意味を具体例と図解でわかりやすく解説

ケイパビリティ・ベース競争戦略4原則

この「ケイパビリティ」という考え方ですが、1992年に、世界的な戦略コンサルティング会社であるBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のジョージ・スタークJr氏をはじめとする複数のコンサルタントによる論文「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy(ケイパビリティでの競争:企業戦略の新しいルール) 」によって広まりました。

冒頭でもご紹介しましたが、ケイパビリティ・ベース競争戦略には4つの基本原則があります。(戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)  第9章から引用)

  1. 企業戦略を構成する要素は、製品や市場ではなく、ビジネスプロセスである。
  2. 主要なビジネスプロセスを、他者に勝る価値を継続的に顧客に提供できるような戦略的ケイパビリティへと変換することが、競争の勝敗を左右する。
  3. SBU(戦略的事業単位)と職能部門を結びつける一方、双方の力をこれまでの限界を超えて引き出すためにインフラに戦略的に投資し、戦略的ケイパビリティを構築する。
  4. ケイパビリティは必然的に複数の職能部門にまたがるため、ケイパビリティ戦略を推進するのはCEOの仕事である。

原文だとちょっとわかりにくいと思うので、言い換えると、

  1. 企業戦略の構成要素がビジネスプロセスであること
  2. 主要なビジネスプロセスをケイパビリティに転換すること
  3. 社内の部門を結びつけるインフラに投資すること
  4. ケイパビリティ戦略の推進をCEOが行うこと

の4つを実践することが「ケイパビリティ・ベース競争戦略」だと言えます。

さらにこの4原則を実践することで、

  • スピード
  • 整合性
  • 明瞭性
  • 俊敏性
  • 革新性

の5つの点で競合他社を上回れば、競争力のあるケイパビリティであると判断できます。

スピードがあれば、他社よりも早く顧客ニーズを読み取り、製品に反映させることができます。整合性があれば、顧客の期待をちゃんと反映した製品作りにつながります。明瞭性があれば、ビジネス環境を把握し、顧客のニーズやウォンツの変化も予測できます。俊敏性があれば、ビジネス環境の変化にも素早く適応できます。革新性があれば、新しいアイデアと既存のノウハウを組み合わせて新しい価値を生み出せます。

自社のケイパビリティを特定することができたら、これらの5つの点でどの程度他社より勝っているかを考えてみましょう。

ケイパビリティ競争企業への転換4段階

ケイパビリティを上手く使える企業に変わるためには、4つの段階を経る必要があると言われています。

その4つの段階とは、

  1. 野心的な目標の実現に向けて、戦略のフレームワークを転換する
  2. 選択したケイパビリティを中心に据えて組織を設計し、ケイパビリティの実現に欠かせないスキルと経営資源を社内に整える
  3. 成果を可視化し、業績評価基準と報酬を整合させる
  4. 改革のリーダーシップはCEOが握る

です。(戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)   第9章から引用)

まずはこれまでの戦略フレームワークにとらわれず、新しい「ケイパビリティ」という考え方に切り替えなければなりません。そして自社のケイパビリティ、つまり他社に真似されにくい価値のあるビジネスプロセスは何であるか、について考える必要があります。

自社のケイパビリティが何であるか特定できれば、それに合わせて組織の仕組みを見直します。また、ケイパビリティが継続的に強化されるように、社内の評価基準も変えなければなりません。

ここで重要なのは、経営者が旗振りを行うことです。ケイパビリティ・ベース競争戦略では、会社の競争力の源泉の考え方が大きく変化します。そのため、ボトムアップでは改革が進みません。ケイパビリティ競争企業に生まれ変わるためには、経営者がしっかりとしたリーダーシップを取る必要があります。

コアコンピタンス経営との共通点と相違点

コアコンピタンス経営とは、様々な製品を生み出すための主要な「技術」である「コンピタンス」を特定し、戦略的に経営を進める考え方です。

コアコンピタンス経営とは?競争力の源泉となる技術を見つけて育てる経営

コアコンピタンスの概念は、1990年にプラハラッド教授とハメル教授の論文によって広まりました。今回ご紹介した「ケイパビリティ」の2年ほど前の出来事です。

ストーク氏は、「コンピタンス」や「コアコンピタンス」の考え方では、企業の競争力を全て説明することができないと考え、「ケイパビリティ」という考えに至ったようです。

この「ケイパビリティ」と「コアコンピタンス」は、似たような文脈で語られることが多いので、2つの違いについて別記事にまとめています。

ケイパビリティとコアコンピタンスの違いとは?意味を図解して比較

しかしここでは、ストーク氏の主張を中心に共通点と相違点を説明してみたいと思います。

共通点はSBUに対するアンチテーゼ

SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)とは、戦略立案のために会社の事業や製品群をグループ(=ユニット)化したものです。日本語では「戦略事業単位」や「戦略的事業単位」と呼ばれます。

SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)とは?戦略的事業単位

SBUの考え方は、1970年代に登場しました。SBUとして製品や事業をグループ化することによって、多角化しすぎた事業を効率的に事業計画に落とし込み、戦略を立案するために使われています。

しかしSBUの欠点は、「事業」や「最終製品」など価値を生み出した結果でしか認識できないことです。つまり事業戦略を考えるとしても、過去の結果の延長線上でしか考えることができません。

そこで解決策として考え出された概念が「コアコンピタンス」や「ケイパビリティ」です。

「コアコンピタンス」や「ケイパビリティ」は、会社の内面に目を向け、どんな要素が価値のある事業や最終製品を生み出しているのかを考えます。そしてその価値の源泉を、戦略に育てることを基本としています。

相違点はコアコンピタンスで説明できない部分

ケイパビリティがコアコンピタンスと違う部分は、「技術」以外の部分を説明できる点です。

論文に登場する例として、本田技研工業の二輪車事業がアメリカに進出のエピソードがあります。

ホンダが北米のオートバイ事業を席巻できたのは、エンジンを作る技術力やオートバイを設計する技術力などのコアコンピタンスだけでは説明できませんでした。

ストークJr氏は、ホンダが北米でオートバイ事業を拡大できたのは、バイクディーラーを管理するケイパビリティがあったからだと指摘しています。

ホンダは、ディーラーが地元で成功できるように、マーケティングから店舗デザイン、在庫管理に至るまでサポートを行ったそうです。その結果、出荷から販売までの一連のプロセスがケイパビリティとなって、他のバイクディーラーよりも多くのオートバイを販売することができました。

要するに、コアコンピタンスの考え方のように価値のある最終製品を作ったとしても、それだけでは競争力として不十分だということです。

ケイパビリティは技術だけでなく、その会社の総合力をみるという点で、コアコンピタンスと異なっていると言えます。

おすすめの書籍

「戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)」の第9章には、1992年にBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のストーク氏による論文「Competing on Capabilities: The New Rules of Corporate Strategy 」の日本語訳が掲載されています。アメリカ小売大手のウォルマートを例に、「ケイパビリティ」について詳しく書かれています。

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DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部
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