ニーズとウォンツの違いとは?具体例をわかりやすく図解で説明

ニーズ・ウォンツ・デマンド

ニーズとは、消費者が持っている課題や目的を解決する必要性のことで、マーケティング活動でウォンツに変化させることができます。

そしてウォンツとは、ニーズよりも具体的な欲求であり、マーケティング活動によってデマンドに変化します。

これを図で表すと、下記のようになります。

ニーズ・ウォンツ・デマンドの関係

デマンドとは、特定の商品やサービスに対する需要のことを指します。デマンドは「支払能力の壁」を超えた先にあり、消費者の予算に見合えば商品やサービスが実際に売り上げ(需要)に変わります。

例えば、「通勤」について考えると、

  • ニーズ:会社まで移動する必要性
  • ウォンツ:自家用車、電車、バス、タクシー
  • デマンド:プリウス、JR東日本、都営バス、日本交通

となります。「昼食」について考えると、

  • ニーズ:お昼時に空腹を満たす必要性
  • ウォンツ:ファストフード、定食屋、コンビニ食
  • デマンド:マクドナルド、大戸屋、セブンイレブンのおにぎり

などが考えられます。

また有名な「ドリルと穴の例」であれば、

  • ニーズ:棚を作るために木材に穴を開ける必要性
  • ウォンツ:電動ドリルで穴を開けたい、穴の空いた木材が欲しい
  • デマンド:〇〇社の小型電動ドリル、〇〇社の組み立て棚セット

となります。

ここでは「ニーズ(Needs)」と「ウォンツ(Wants)」に加えて、「デマンド(Demands)」や商品やサービスの基になる「シーズ(Seeds)」についてもわかりやすく解説します。

補足

ここでの「ニーズ」「ウォンツ」「デマンド」の定義については、世界中のビジネススクールでマーケティングの教材として採用されている「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 」に記載されている内容をベースにしています。そのため、マーケターの共通言語としてお使いいただける内容になっています。

ニーズとウォンツの違い

ニーズとウォンツの違いを比較すると、

ニーズウォンツ
必要性欲求
消費者が持っているマーケターが作り出す
無自覚または抽象的ある程度具体的
消費者が持つ課題目的解決するための手段
ウォンツに変化するデマンドに変化する

という違いがあります。

ニーズ」は、消費者が解決する「必要性」がある「課題」や「目的」そのもののことを指しています。この必要性は消費者本人が「無自覚」の場合もあるため、マーケティング活動によって気づかせることもできます。

そしてニーズを持っている消費者に対して、マーケティングによる働きかけをすることで「ウォンツ」に変化させることができます。

ウォンツ」はマーケターが作り出すことのできる「欲求」であり、消費者が「〇〇が欲しい」と「具体的」に考えている状態です。これは消費者が持っている「課題」や「目的」を解決する直接的な「手段」であり、マーケティングでその手段を提示できれば、次の「デマンド」に変化する可能性があります。

ニーズ > ウォンツ > デマンドの流れとシーズ

それぞれの用語は、

  • ニーズ(Needs):消費者が持っている課題や目的を解決する必要性
  • ウォンツ(Wants):課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求
  • デマンド(Demands):消費者の支払い能力が伴う特定の商品やサービスに対する需要
  • シーズ(Seeds):デマンドの受け皿となる商品・サービスのベース技術

という意味で、

  • マーケティング活動で「ニーズ → ウォンツ → デマンド」に変化する

というイメージを持ってください。

この流れを図で表したのが、下記のものです。

ニーズ・ウォンツ・デマンド・シーズの全体像

さらに、ニーズは、

  • 潜在(せんざい)ニーズ
  • 顕在(けんざい)ニーズ

に分けることができ、ウォンツは、

  • 基本ウォンツ
  • 条件ウォンツ
  • 期待ウォンツ

に分けることができます。(それぞれの詳細は後述します。)

例えば、冒頭と同じ「通勤」について一連の流れを詳しく書き出すと、

  1. 顕在ニーズ:消費者「引っ越ししたけど会社までの通勤をどうにかしなきゃ。」
  2. マーケティング活動鉄道会社「〇〇線なら乗り換えなしで〇〇駅まで直通!」
  3. 基本ウォンツ:消費者「バスもあるけど、電車で通勤しよう。」
  4. 条件ウォンツ:消費者「ただし時間がかかっても乗り換え少なめがいい。」
  5. 期待ウォンツ:消費者「少し早く家を出たら座って通勤できるかも。」
  6. マーケティング活動鉄道会社「6ヶ月定期券なら〇〇円」
  7. 支払い能力の壁:消費者「金額に問題なさそうだ。」
  8. デマンド:消費者「〇〇駅〜〇〇駅の6ヶ月定期券ください。」

という感じになります。

念のため、今度は具体例として「昼食」で一連の流れを書き出すと、

  1. 顕在ニーズ:消費者「お腹が空いたな。今日のお昼はどうしよう。」
  2. マーケティング活動牛丼チェーンののぼり「〇〇牛丼、新登場!」
  3. 基本ウォンツ:消費者「新メニューが出てるし、今日は牛丼にしよう。」
  4. 条件ウォンツ:消費者「ただし会社からあまり遠くないお店がいいな。」
  5. 期待ウォンツ:消費者「注文したらすぐに出てくるはず。サっと済ませたい。」
  6. マーケティング活動牛丼チェーン「今ならお得なクーポン、牛丼30円引き!」
  7. 支払い能力の壁:消費者「サイドメニューをつけてもワンコインで済みそうだ。」
  8. デマンド:消費者「〇〇牛丼の味噌汁セットください。」

という感じになります。

上記の事例でニーズ、ウォンツ、デマンドの違いと、マーケティング活動の影響がイメージできるようになったのではないでしょうか?

マーケティング活動の影響

先ほどの具体例で、ニーズがデマンドに変化する一連の流れをご覧いただいた通り、「マーケティング活動」が、消費者の心境の変化を起こしています。

マーケティング活動の領域

最初は「問題を解決しなきゃ」という非常に抽象的な「必要性(ニーズ)」にかられているだけだった消費者は、マーケティング活動によって、「電車にしよう」とか「牛丼にしよう」というようにより具体的な「欲求(ウォンツ)」を持つようになります。

そしてさらに、消費者が支払うことのできる商品やサービスを設計することで「支払能力の壁」を超えさせ、特定の商品やサービスに対する「需要(デマンド)」という形で取引が成立することになります。

このように、

  • 抽象的:通勤どうにかしなきゃ
  • 具体的:電車で通勤しよう
  • 特定:〇〇鉄道の〇〇線で通勤しよう

という段階の変化を促すために、マーケティング活動を行うことが重要になります。

ニーズ(Needs)

ニーズとは、

  • 消費者にとって課題や目的を解決すべき必要性

のことです。

このニーズは、

  • 潜在ニーズ:解決する必要性があることに消費者自身が気づいていないニーズ
  • 顕在ニーズ:解決する必要性があると消費者自身が気づいているニーズ

に分けることができます。

ニーズ

先ほどの例であれば、

  • 消費者「引っ越ししたけど会社までの通勤をどうにかしなきゃ。」
  • 消費者「お腹が空いたな。今日のお昼はどうしよう。」

というのが、消費者自身が自覚した解決する必要性のある課題であり、「顕在ニーズ」と呼ばれるものです。

しかし消費者自身が気づいていない「潜在ニーズ」もあります。

潜在ニーズは、消費者自身にとって当たり前であり、問題を問題と思っていない場合があります。そのような場合には、マーケティング活動によって「顕在ニーズ」に引き上げることや、「デマンド」まで一気に導くなどの方法をとります。

ニーズについてのより詳しい情報は、こちらの記事をご覧ください。

ウォンツ(Wants)

ウォンツとは、

  • 課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求

ことです。

このウォンツは、

  • 基本ウォンツ:具体的な解決の方向性に対する欲求
  • 条件ウォンツ:解決の方向性を選別するための条件
  • 期待ウォンツ:当然満たされるべきと思っている暗黙の事柄

に分けることができます。

ウォンツ

先ほどの「通勤」の例では、

  • 基本ウォンツ:消費者「バスもあるけど、電車で通勤しよう。」
  • 条件ウォンツ:消費者「ただし時間がかかっても乗り換え少なめがいい。」
  • 期待ウォンツ:消費者「少し早く家を出たら座って通勤できるかも。」

という部分が。

「昼食」の例では、

  • 基本ウォンツ:消費者「新メニューが出てるし、今日は牛丼にしよう。」
  • 条件ウォンツ:消費者「ただし会社からあまり遠くないお店がいいな。」
  • 期待ウォンツ:消費者「注文したらすぐに出てくるはず。サっと済ませたい。」

がウォンツになります。

ウォンツは「基本ウォンツ」さえあれば成立します。また「基本ウォンツ」に対してマーケティング活動を行うことで、「デマンド」に引き上げることができます。

しかし「条件ウォンツ」や「期待ウォンツ」も無視することはできません。

先ほどの例の「乗り換えが少なく」「早ければ座って通勤できる」を望んでいる消費者に対して、「乗り換えが多く」「早朝から満員になる」ような通勤電車は、いくらマーケティング活動を頑張っても成果は上がりません。

また「会社の近く」で「すぐに食べられる」飲食店を探している消費者に対して、「会社から離れていて」「食事の提供まで時間がかかる」飲食店では、いくら広告しても訴求することはできません。

このようにマーケティング活動では「基本ウォンツ」を認識するだけではなく、「条件ウォンツ」や「期待ウォンツ」についてもマーケティングリサーチから情報を得ることが重要です。

ウォンツについてのより詳しい情報は、こちらの記事をご覧ください。

デマンド(Demands)

デマンドとは、

  • 消費者の支払い能力が伴う特定の商品やサービスへの需要

のことです。

ニーズ」も「ウォンツ」も、消費者が商品やサービスに対価を払うことによって「需要(デマンド)」に変化します。

補足

需要(デマンド)の状態は、「バランス需要」「過剰需要」「変動需要」「減少需要」「逆需要」「ゼロ需要」「潜在需要」「不健全需要」の8つに分類することができます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

ここで重要なのが「特定の商品やサービス」に対する需要であるということです。

ウォンツ」では、消費者が求めるものがある程度具体的になっているものの、商品やサービスを特定するまでには至りません。

そのため、マーケティング活動によって、自分たちが提供したい商品やサービスまで消費者を誘導することが必要になります。

デマンド

またマーケティングでは、

  • 消費者のニーズを満たすもの
  • 消費者のウォンツに応えるもの

を提供できれば「売れる」と思い込んでいる人たちが少なからず存在しています。

しかしそれは大きな間違いです。なぜなら、

  • いくら優れた商品やサービスも消費者に支払能力がなければ売れない

からです。

そこで立ちはだかるのが「支払能力の壁」です。

支払能力の壁

支払能力の壁とは、

  • 消費者が商品やサービスに支払わなければいけない対価

のことです。

消費者がこの「支払能力の壁」を超えてくれない限り、企業にとっての売り上げになりません。

支払能力の壁

企業が消費者に支払能力の壁を超えさせられない原因としては、

  • ターゲット層に支払能力が無い
  • 支払方法の選択肢が狭い
  • 消費者の支払意思額(WTP)が価格を下回っている

などがあります。

ターゲット層に支払能力が無い

これは、

  • 商品やサービスを利用する人
  • 対価を支払う人

が一致していない場合に起こります。

この一致しない状況は、

  • 子とその親
  • 従業員と企業

などの関係でよく見られます。

例えば、子ども向けのおもちゃやゲーム、学習塾などの習い事などは、それらを利用する本人(子ども達)に支払能力はほとんどありません。そのため、子どもに訴求すると同時に、支払能力のある親のニーズやウォンツを満たさなければ売り上げにつながりません。

同様に、一般企業の従業員の業務が楽になる商品やサービスがあったとしても、従業員個人は会社のために自腹を切ることは難しいはずです。そのため、従業員のニーズやウォンツを満たしながらも、実際に支払を行う企業(の経営者や経理担当者)のニーズやウォンツを満たさなければ「支払能力の壁」を越えることができません。

このように、メインのターゲット層に支払能力が無い場合は、誰が支払をするのか」を考えてマーケティング活動を設計する必要があります。

支払方法の選択肢が狭い

支払方法の選択肢の幅も、支払能力の壁を高くする原因になることがあります。

例えば手元にクレジットカードしか無い消費者に、現金を支払わせることは無理です。しかしクレジットカードで支払うという選択肢があれば、消費者は無事に「支払能力の壁」を超えて「デマンド」が生まれます。

同様に、銀行口座にまとまったお金がない消費者に、高額な商品を一括で支払わせるのは困難です。しかし分割支払いが可能であったり、支払までの期間に猶予があれば、消費者は「支払能力の壁」を越えることができます。

通信販売会社「ジャパネットたかた」の決まり文句の、「金利・手数料はジャパネットたかたが負担します!」は、まさに「支払能力の壁」を超えさせるための施策です。

他にも衣料通信販売「ZOZOTOWN」の「ツケ払い」なども同様の施策になります。

参考 ツケ払いZOZOTOWN

消費者の支払意思額(WTP)が価格を下回っている

3つめの理由は、消費者が考える適正な価格よりも、売り手の考える価格が高い場合です。

消費者が、

  • 「これくらいまでなら払ってもいいかな」と思える金額

のことをマーケティング用語では、

  • 支払意思額(WTP:Willingness To Pay、ウィリングネス・トゥ・ペイ)

と呼びます。

消費者は大抵の商品やサービスに対して、価格の基準を持っています。この基準は個人個人でバラバラですが、

  • WTPを上回る価格:高いと感じる
  • WTPに近い価格:何も感じない
  • WTPを下回る価格:安いと感じる

ようなことが起こります。

そのため、売り手がターゲットとなる消費者のWTPを上回る価格設定をしてしまうと、消費者は「支払能力の壁」を越えることができなくなってしまいます。

そうならないためには、

  • 価格をWTPを下回るところまで下げる
  • 消費者のWTPを引き上げる

などの対応策が考えられます。

価格をWTPを下回るところまで下げる

単純に商品やサービスの価格を引き下げることもできますが、後になって価格を引き上げることが難しくなるため、利益を圧迫し続けることになります。

そうならないためには、

  • 廉価版の商品やサービスを開発する
  • 数量を減らしたりサービス時間を短くしたりする

などで、コストを引き下げながらWTPに近づけるような施策が有効になります。

消費者のWTPを引き上げる

逆に消費者のWTPを引き上げる方法も考えることができます。

そのためには、商品やサービスの価値を消費者に伝えることが重要です。

例えば、同じナイロン製のバッグでも「有名デザイナーがデザインしました」と言えば、そのデザイナーが好きな消費者のWTPを引き上げることができます。

また、同じ商品でも「価格が少し高いけど環境に優しい素材を使用しています」とか、「価格が少し高いけど売り上げの一部を恵まれない子供に寄付します」というような理由づけをすれば、消費者のWTPが引き上がることがあります。

このように、ちょっとした違いで差別化することができれば、消費者のWTPを引き上げることにつながり、「支払能力の壁」を越える助けになります。

支払意思額(WTP)についてのより詳しい情報は、こちらの記事をご覧ください。

ニーズとシーズの違いと商品開発

ニーズという言葉とともによく検索されるのが、「シーズ(Seeds:種)」です。

シーズとは、

  • デマンドの受け皿となる商品・サービスのベース技術

のことであり、競合他社より優れた商品やサービスを提供するための価値の源泉になります。

言わば、

  • 様々な商品やサービスが育つ元となる種(タネ)

です。

わかりやすいものだと、特許技術ノウハウなどが代表的なシーズです。他の経営学の用語であれば「コアコンピタンス」や「ケイパビリティ」が近い意味の言葉になります。

コアこピンタンスとケイパビリティケイパビリティとコアコンピタンスの違いとは?図解で比較

企業はシーズをベースにして、商品やサービスを開発します。

下の図を見るとは、

  • 商品・サービスと「支払能力の壁」は直結している

ことがわかるかと思います。

シーズと製品開発

つまり、先ほどご説明した「支払能力の壁」の高さは、どのような商品やサービスを提供するかによって大きく変わります。

そしてその商品やサービスは、どんなシーズを使うかによってもコストが変わります。

例えば、高度な最新技術を使って電気製品を作れば、その電気製品の小売価格が高くなってしまうかもしれません。これは単に人件費や材料費が高いというわけでなく、高度な最新技術を手に入れるために使った莫大な研究開発費を売り上げから回収しなければならないからです。

そのため、消費者が持つニーズとウォンツを解決するだけでなく、商品開発において適切なシーズを選ぶことで、「支払能力の壁」を消費者が越えることのできる高さに抑えなければなりません。

関連書籍

最強の商品開発

最強の商品開発

M. ラマヌジャム, G. タッケ
2,808円(09/15 16:40時点)
発売日: 2018/02/27
Amazonの情報を掲載しています
実戦 商品開発マーケティング戦略

実戦 商品開発マーケティング戦略

佐藤 義典
1,728円(09/15 16:40時点)
発売日: 2018/07/13
Amazonの情報を掲載しています