Excelを使ったPPM分析のやり方:無料テンプレートあり

Excelでプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

PPM分析の縦軸と横軸の考え方

ここまででExcelを使ったバブルチャートが完成したわけですが、「市場成長率」という縦軸と、「相対的市場シェア」という横軸について補足したいと思います。

市場成長率という縦軸

縦軸は市場成長率で、上に行くほど市場が急速に大きくなっています。

エクセルPPM分析:市場成長率の軸

今回のテンプレートでは、

  • 上限:30%
  • 下限:0%
  • 境界:15%

という設定にしています。

この「市場成長率」という軸は、

  • マトリクスの上半分:「花形」「問題児
  • マトリクスの下半分:「金のなる木」「負け犬

を分ける目安になります。

今回の例では、たまたま境界線を15%に設定していますが、これは業界によって大きく違います

誕生したばかりの成長著しい新しい業界で活躍する会社は、縦軸の上限や下限が高くなります。それに合わせて境界線の位置も高くなります。

例えば年々市場規模が倍になっているような業界でメインに戦っている企業は、縦軸の上限が100%とか150%になることもあります。逆に数パーセントのような低い成長率の事業は、存在していないかもしれません。

そういった場合には、縦軸の範囲が10〜150%で、境界が80%などに設定した方が収まりが良いと思います。

一方で、昔から存在している成熟した企業では、上限が最大でも10%程度になることもあります。

このように縦軸の上限と下限は、その企業が身を置いている主要な業界にも大きく左右されます。

ここで説明した縦軸の上限・下限・横軸との交点については、エクセルであれば「軸の書式設定」から変更できます。他の表計算ソフトでも、「軸のプロパティ」「軸の設定」「軸のオプション」などの項目から設定できるはずです。

相対的市場シェアという横軸

横軸は相対的市場シェアで、左に行くほど数値が高くなります。

エクセルPPM分析:相対的市場シェアの軸

相対的市場シェアは、先ほど説明したように「自社の市場シェア」を「自社を除く他社のトップの市場シェア」で割ることで計算することができます。

例えば市場シェアが、

  • 自社:他社トップ=50%:50%

であれば、相対的市場シェアは「1」ですし、

  • 自社:他社トップ=10%:40%

であれば、相対的市場シェアは「0.25」になります。

この「相対的市場シェア」という軸は、

  • マトリクスの左半分:「花形」「金のなる木
  • マトリクスの右半分:「問題児」「負け犬

を分ける目安になります。

今回の例では、

  • 上限:1.8
  • 下限:0.4
  • 境界:1.2

に設定していますが、こちらも業界や経営の考え方によって変わります。

相対的市場シェアが「1」というのは、自社と他社がほぼ同じシェアでトップ争いをしているという状況です。そしてよく見かける事例では、境界が「1」になっています。

ここで考えなければならないのは、

  • 他社より少しでも市場シェアで上回っていれば「花形」や「金のなる木」と認識する

ということが、妥当なのかということです。

この点については、筆者がビジネススクールに時代に、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)日本法人のシニア・パートナーの方に直接質問させていただく機会がありました。

その時には、

  • 「昔は『1』だったけど、最近はそれ以上の数値に設定することが多い。」

という回答をいただきました。

つまり境界の相対的市場シェアは「1」にする必要はなく、

  • どれくらい2位以下を突き放せば「花形」や「金のなる木」と考えるか

によって設定を変えても良いということです。

今回の設定では「1.2」としていますが、

  • 2位以下の競合他社のシェアを1.2倍以上突き放せば「花形」「金のなる木

という設定をしたことになります。

1位と2位の差がつきにくい業界であれば、相対的市場シェアの上限・下限・境界は小さくなると思います。逆に、1位が総取りしてしまうような業界であれば、それぞれを高く設定しても良いと思います。

ここで説明した横軸の上限・下限・横軸との交点についても、縦軸と同様にエクセルであれば「軸の書式設定」から変更できます。

ちなみに余談ですが、横軸は通常は右に行くほど数値が大きくなります。しかしPPM分析のBCGマトリックスでは、左に行くほど数値が大きくなります。この点について質問すると「BCG創業者のヘンダーソン氏が、最初のメモ書きにそう描いたから」という回答でした。

PPM分析の無料テンプレート

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