基本ウォンツ
基本ウォンツとは、消費者が自覚している具体的な解決方法を求める欲求のことです。
「ウォンツ」を「デマンド」に変化させるためには、商品やサービスが最低限この「基本ウォンツ」を満たしている必要があります。
また基本ウォンツは、「具体的」と言っても特定の商品やサービスを指すほど具体的ではありません。
そのためマーケティング活動によって、自社の商品やサービスが消費者の基本ウォンツと合致していることを伝える必要があります。
もし消費者が自分自身が持つ基本ウォンツにピッタリくる商品やサービスの存在を知れば、「ウォンツ」が「デマンド」に変化する可能性が高まります。
例えば先ほどの「安眠できる枕が欲しい」というウォンツであれば、
- 基本ウォンツ:枕が欲しい
- 条件ウォンツ:使うと安眠できる
に分解できます。
当然ながら「枕が欲しい」という消費者に「枕」を提案するのが一番ストレートです。
しかしここで重要なポイントが一つあります。それは必ずしも「枕」を提案する必要はなく、
- 「消費者が枕と認識するもの」であれば何でも良い
ということです。
5連バサミの事例
もし消費者が「シュレッダー(裁断機)が欲しい」という基本ウォンツを持っていたとします。
企業はそのウォンツを満たすために、様々なシュレッダーを開発します。その中で、複数の刃が重なったハサミを、「シュレッダー」として販売する会社も現れました。(下記リンクのような製品)
しかし初期に発売したある企業は、当初の売り上げが芳しくなく頭を悩ませたそうです。
そこで今度は「海苔を刻む調理器具が欲しい」という基本ウォンツを持つ別の消費者に目をつけました。
そして売り出したのがこちらのような商品です。
製品自体は全く同じですが、こちらは「海苔を刻むための調理器具」として販売されました。
先ほどのシュレッダーとしてのハサミはオフィス用品や文房具コーナーに置かれましたが、こちらの海苔を刻むハサミはお店の調理器具コーナーに置かれます。そしてパッケージも調理器具としてデザインされました。
その結果、消費者はハサミを「シュレッダー」ではなく「調理器具」だと認識します。
「海苔を刻む調理器具が欲しい」という基本ウォンツを持つ消費者は、この5連バサミを基本ウォンツとピッタリ一致した商品として認識して購入します。
このように、どんな商品やサービスであっても、マーケティング活動を通して消費者に「欲しいものはこれだ」と思わせることができれば、それが「基本ウォンツとの合致」になるのです。
この他にも似たような例はたくさんあります。
iPhoneの事例
例えばApple社が「GPSを搭載した小型コンピューター端末」を発売するときに、「iPhone」と名前をつけて「これは革新的な携帯電話だ」と言い切ったのも同じです。
「小型コンピューター端末が欲しい」という基本ウォンツを持った消費者は、一部の消費者に限られます。しかし「携帯電話が欲しい」という基本ウォンツを持つ消費者は圧倒的に多く存在します。
もしApple社がこの製品を、電話の機能がついた「小型コンピューター端末」として売ったのであれば、一部のパソコン好きのマニアしか買わなかったかもしれません。
しかしマーケティング活動を通して「革新的な携帯電話」として消費者に伝えることで、多くの消費者の基本ウォンツと合致し、興味を引くことができました。