ウォンツとは?基本・条件・期待ウォンツのマーケティング

ウォンツとは、

  • 課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求

ことです。

ウォンツ(欲求)は、マーケティング活動によって「ニーズ(必要性)」から変化したものであり、最終的には「デマンド(需要)」という形で購買につながります。

それを表したのがこちらの図です。

ウォンツとマーケティングの関係

このウォンツは、

  • 基本ウォンツ:具体的な解決の方向性に対する欲求
  • 条件ウォンツ:解決の方向性を選別するための条件
  • 期待ウォンツ:当然満たされるべきと思っている暗黙の事柄

の3つに分けることができます。

ここでは3つのタイプの欲求である「ウォンツ」についてわかりやすく解説します。

ウォンツとは?

ウォンツとは、課題などを解決するための具体的な欲求のことで、マーケティング活動によって「ニーズ(必要性)」から変化して「デマンド(需要)」へとつながります。

それぞれの用語の意味については、

  • ニーズ:消費者が持つ課題の解決や目的を達成する必要性
  • デマンド:ウォンツに消費者の支払い能力が伴うことで生まれた需要

です。

ウォンツ

ウォンツは、消費者の頭の中に解決のイメージが湧いている状態であり、同じニーズに対しても複数のウォンツが形成されます。

例えば「睡眠不足をどうにかしたい」という顕在ニーズに対しては、「(安眠できる)枕が欲しい」「(熟睡できる)睡眠導入剤が欲しい」などの複数のウォンツが同時に存在することができます。

またウォンツそのものも、

  • 基本ウォンツ:具体的な解決の方向性に対する欲求
  • 条件ウォンツ:解決の方向性を選別するための条件
  • 期待ウォンツ:当然満たされるべきと思っている暗黙の事柄

の3つに分類することができます。

ここでのマーケティングの役割は、

  • 基本ウォンツにマッチする商品・サービスの存在の認知
  • 条件ウォンツを形成させるための消費者教育
  • 条件ウォンツの調査と条件を満たす商品・サービスの開発
  • 期待ウォンツを形成させるための顧客体験の提供
  • 期待ウォンツの調査と期待に添える商品・サービスの開発

などがあります。

基本ウォンツ」を満たしているだけでも商品やサービスは選ばれますが、「条件ウォンツ」や「期待ウォンツ」を満たしているものの方が、より消費者に好まれます。

そのため「条件ウォンツ」や「期待ウォンツ」が形成されていない消費者に対しては、消費者教育や顧客体験の提供を行います。

そして自社に有利な「条件ウォンツ」や「期待ウォンツ」を形成させることが重要です。

基本ウォンツ

基本ウォンツとは、消費者が自覚している具体的な解決方法を求める欲求のことです。

ウォンツ」を「デマンド」に変化させるためには、商品やサービスが最低限この「基本ウォンツ」を満たしている必要があります。

基本ウォンツ

また基本ウォンツは、「具体的」と言っても特定の商品やサービスを指すほど具体的ではありません。

そのためマーケティング活動によって、自社の商品やサービスが消費者の基本ウォンツと合致していることを伝える必要があります。

もし消費者が自分自身が持つ基本ウォンツにピッタリくる商品やサービスの存在を知れば、「ウォンツ」が「デマンド」に変化する可能性が高まります。

例えば先ほどの「安眠できる枕が欲しい」というウォンツであれば、

  • 基本ウォンツ:枕が欲しい
  • 条件ウォンツ:使うと安眠できる

に分解できます。

当然ながら「枕が欲しい」という消費者に「枕」を提案するのが一番ストレートです。

しかしここで重要なポイントが一つあります。それは必ずしも「枕」を提案する必要はなく、

  • 「消費者が枕と認識するもの」であれば何でも良い

ということです。

5連バサミの事例

もし消費者が「シュレッダー(裁断機)が欲しい」という基本ウォンツを持っていたとします。

企業はそのウォンツを満たすために、様々なシュレッダーを開発します。その中で、複数の刃が重なったハサミを、「シュレッダー」として販売する会社も現れました。(下記リンクのような製品)

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しかし初期に発売したある企業は、当初の売り上げが芳しくなく頭を悩ませたそうです。

そこで今度は「海苔を刻む調理器具が欲しい」という基本ウォンツを持つ別の消費者に目をつけました。

そして売り出したのがこちらのような商品です。

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製品自体は全く同じですが、こちらは「海苔を刻むための調理器具」として販売されました。

先ほどのシュレッダーとしてのハサミはオフィス用品や文房具コーナーに置かれましたが、こちらの海苔を刻むハサミはお店の調理器具コーナーに置かれます。そしてパッケージも調理器具としてデザインされました。

その結果、消費者はハサミを「シュレッダー」ではなく「調理器具」だと認識します。

「海苔を刻む調理器具が欲しい」という基本ウォンツを持つ消費者は、この5連バサミを基本ウォンツとピッタリ一致した商品として認識して購入します。

このように、どんな商品やサービスであっても、マーケティング活動を通して消費者に「欲しいものはこれだ」と思わせることができれば、それが「基本ウォンツとの合致」になるのです。

この他にも似たような例はたくさんあります。

iPhoneの事例

例えばApple社が「GPSを搭載した小型コンピューター端末」を発売するときに、「iPhone」と名前をつけて「これは革新的な携帯電話だ」と言い切ったのも同じです。

「小型コンピューター端末が欲しい」という基本ウォンツを持った消費者は、一部の消費者に限られます。しかし「携帯電話が欲しい」という基本ウォンツを持つ消費者は圧倒的に多く存在します。

もしApple社がこの製品を、電話の機能がついた「小型コンピューター端末」として売ったのであれば、一部のパソコン好きのマニアしか買わなかったかもしれません。

しかしマーケティング活動を通して「革新的な携帯電話」として消費者に伝えることで、多くの消費者の基本ウォンツと合致し、興味を引くことができました。

条件ウォンツ

条件ウォンツとは、消費者が解決する方向性を選別するための条件のことです。

例えば「枕が欲しい」という基本ウォンツを持っている消費者がいても、枕ならなんでもいい、というわけではありません。

「ふかふかの枕が欲しい」消費者もいれば「硬い枕が欲しい」と思っている消費者もいます。また「安いウレタンの枕が欲しい」という消費者もいれば「高級な羽根枕が欲しい」という消費者だっています。

これらの基本ウォンツに対する条件付けのことを「条件ウォンツと言います。

 

条件ウォンツ

条件ウォンツの内容は多岐にわたり、対象とするターゲット層によっても条件の幅は大きく変わってきます。

条件ウォンツの幅と数

そして消費者がその商品やサービスに対して、

  • こだわりが弱く知識が少ないほど条件ウォンツが少なくなる
  • こだわりが強く知識が多いほど条件ウォンツが多くなる

という傾向があります。

これはマーケティングの用語としては「高関与(関与が高い)」と表現されます。

例えば、

  • どんな枕でも寝ることができる消費者
  • 自分で枕を買ったことがない消費者

などは枕に対する関与が低く、条件ウォンツそのものも多くありません。

なぜなら「どんな枕でも寝ることができる消費者」は、枕を選ぶ必要がないので「こだわり」がほとんど無いからです。

また「自分で枕を買ったことがない消費者」も、同様に関与が低い状態です。自分で選んだことがない消費者は、そもそもこの世の中にどんな枕が存在しているかも知らないですし、枕に対する知識そのものが不足しています。

これらの「低関与(関与が低い)」は、条件そのものがあまり思いつかないため、条件ウォンツは少なくなります。

一方で、

  • 特定のタイプの枕でしか寝られない消費者
  • 何度も自分で枕を購入したことのある消費者

などは枕に対する関与が高く、条件ウォンツの幅が広く数も多くなります。

「特定のタイプの枕でしか寝られない消費者」は、自分の体に合う枕を知っているため、素材・形・大きさなどの条件が付きます。

また「何度も自分で枕を購入したことのある消費者」は、寝具売り場で様々な種類の枕や価格帯の枕を見ているはずなので、条件ウォンツの引き出しも多くなります。

このような「高関与(関与の高い)」消費者に対しては、マーケティングにおいて狙いを外さないように、条件ウォンツを十分に調査しておく必要があります。

消費者教育による条件ウォンツの形成

先ほど説明したような条件ウォンツが多い消費者に対しては、その条件を理解して、条件に合う商品やサービスを提案することで、購買につなげることが可能です。

しかし逆に、条件ウォンツが少ない、または条件ウォンツが無い消費者をマーケティングのターゲットとする場合には、

  • 基本ウォンツを価格で攻める
  • 自社に有利な条件ウォンツを形成させる

という2つのアプローチ方法があります。

まず「基本ウォンツを価格で攻める」というアプローチは、価格競争に陥って体力勝負になる可能性があります。

顧客は商品やサービスに対して「こだわり」が無く条件ウォンツが少ないため、「安ければ何でもいい」という状態になりやすいと言えます。

例えば、衛生用品(トイレットペーパーなど)や洗剤(洗濯用洗剤、台所用洗剤など)の日用品は、消費者の条件ウォンツが少ないため、価格競争に陥りやすくなります。

もし消費者が「汚れが落ちれば何でもいい」と考えてしまうのであれば、価格以外の部分で差別化することが難しくなります。

しかし消費者を教育することによって「自社に有利な条件ウォンツを形成させる」というアプローチもあります。

例えば先ほどの洗濯用洗剤では、各社がCMで様々な特徴を消費者に伝えています。汚れがよく落ちる、悪臭を防ぐ、色が鮮やかになる、香りが良いなど、商品から得られるメリットを伝えることで消費者に知識を与えています。

このようにCMなどで消費者を教育することで、消費者に条件ウォンツを形成させ、自社が有利になる土俵へ誘導することも可能です。

作り手の思い込みによる誤解

ここで注意しなければならないのが、消費者の条件ウォンツの変化です。

作り手・売り手が持っている、

  • 消費者は選ぶときに〇〇を気にしている

というような情報は、時代の変化とともに陳腐化していきます。

しかし過去の成功体験によって、想定する条件ウォンツのが固定されたまま失敗してしまう企業も存在しています。

そのため製品開発をする側は、常に時代の変化を意識し、マーケティング調査によって消費者の持つ条件ウォンツの変化に敏感にならなければなりません。

期待ウォンツ

期待ウォンツとは、消費者が当然のように満たされるべきと考えている事柄のことです。

期待ウォンツ

この期待ウォンツは、消費者の過去の経験や体験によって形成されます。

例えば先ほどの枕を買おうとしている消費者は、

  • 新品の枕は変な匂いはしない
  • 新品の枕は汚れていない

という前提を持っているかもしれません。

そのため、

  • 変な匂いがしない新品の枕
  • 汚れていない新品の枕

を売り場でわざわざ探しません。

なぜなら、一度でも新品の枕を買ったことがあれば、

  • 変な匂いがしない
  • 汚れていない

ということを経験として知っているからです。

このように条件として考えるまでもなく、過去の経験に基づいて当然のことと期待している事柄を「期待ウォンツとして考えます。

この消費者が持っている期待ウォンツは、消費者が経験を重ねることで常に変化しています。

顧客体験の提供による期待ウォンツの形成

期待ウォンツは、消費者の過去の形成によって形成されるので、企業側が顧客体験を提供することで、自社に優位な期待ウォンツを作り上げることもできます。

例えば通信販売大手の「アスクル」は「明日来る」という名前の通り、オフィス用品を翌日到着で配送することによって、顧客に期待ウォンツを形成させることに成功しています。

現在ではネット注文での即日配送も珍しくありませんが、アスクルが営業を始めた当時は「当日配送・翌日到着」ということが強い競争優位性になりました。

アスクルに注文した商品が翌日に届くことを体験した消費者には、何度も利用しているうちに最初は珍しかった「当日配送・翌日到着」が当たり前になり、期待ウォンツに変化していきます。

その結果、もしアスクルの競合他社に注文したものが3〜4日かかってしまえば、消費者は「次の日には届くと思ったのに…」という期待ウォンツが満たされず不満につながってしまうのです。

もちろん競合他社も新しく形成された「当日配送・翌日到着」という期待ウォンツに対応すれば良いのですが、配送システムの見直しなどが必要で一朝一夕には実現することができません。

このように、自社の得意分野や競合他社よりも優位な分野で、期待ウォンツを形成させることができれば、戦略を優位に進めることができます。

条件ウォンツと期待ウォンツが無視されるケース

ここまで条件ウォンツ期待ウォンツの重要性について説明しましたが、消費者がこれらのウォンツを持っていたとしても無視せざるを得ないケースも存在します。

それは「緊急性」が伴う場合です。

例えば「急な雨」に遭ってしまった場合、多くの人が店先に出された数百円のビニール傘を買ってしまいます。

これは、

  • ただし〇色の傘が欲しい
  • ただし折りたたみ傘が欲しい
  • ただし直径〇〇センチ以上のものが欲しい

などのような条件ウォンツや、

  • ビニール傘なら2〜300円で買えるだろう

といった期待ウォンツよりも、「すぐに手に入れたい」や「いま雨に濡れたくない」という緊急性の方が上回ってしまうからです。

このような現象は様々な場所で見ることができます。

例えば映画館やテーマパークのジュースやポップコーンは、スーパーなどで買うよりも比べ物にならないくらい高い値段で販売されています。

それは消費者がジュースやポップコーンに対する条件ウォンツ期待ウォンツを持っていたとしても、「その場で食べる」という緊急性が上回るからです。

このように、条件ウォンツ期待ウォンツが無視されることがあることを理解しておけば、それを逆手にとって付加価値の高い商品やサービスを提供することもできます。

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