総資本回転率の相互比較
相互比較による総資本回転率の分析は、
- 競合他社との比較:同じ業界・規模・業態の競合他社との比較
- ベンチマーキング:同じ業界の優良企業やトップ企業との比較
- ビジネスモデル比較:同じ業界でビジネスモデルの異なる他社との比較
というように比較対象を変えて数値を比較します。
ここでは例として、
- 同業界で同業態の競合他社との比較
で説明します。
競合他社の財務データの入手方法については、こちらの記事をご覧ください。
売上規模が違うのに総資本回転率が同じになる場合
売上の規模が違っても総資本回転率が同じ場合は、
- 資産の構成が似ている
- ビジネスモデルが似ている
ことが考えられます。
資産の中に占める在庫(棚卸資産)の割合や、固定資産の割合が同じであれば、総資本回転率も同じになる可能性が高くなります。
特に同じ業界であれば、ビジネスモデルなども似通っていることがほとんどなので、保有する資産の構成も似ることが多くあります。
しかし詳細を見ていけば、
- 他人資本と自己資本の比率が違う
ということもあります。
そういった場合には、
- 自己資本比率:総資本のうち自己資本がどれくらいの割合を占めているか?
- 負債比率:自己資本に対して負債がどれくらいの割合を占めているのか?
などの安全性の財務分析で確認する必要があります。
総資本は変わらないのに総資本回転率が高い(or 低い)場合
総資本がほとんど同じなのに、売上高の違いで総資本回転率に差がある場合は、
- 競合他社よりも資本や資産を有効活用できている(または、できていない)
- 資産の構成が違う
- ビジネスモデルが違う
ことが考えられます。
もし競合とビジネスモデルが同じで、在庫量(棚卸資産)や保有する固定資産に大きな違いがないのであれば、
- より大きな価値を効率的に生み出せているか
によって総資本回転率に差が現れます。
例えば一方の企業の方が高いブランド価値などを持ってれば、設備や製造原価が同じだったとしても、より大きな売上に変換することができます。逆に顧客にとって価値が低く買い叩かれてしまうようであれば、売り上げは大きくなりません。
また総資本のサイズが同じでも、資産の構成やビジネスモデルが違えば売上高に差が現れます。
例えば同じ業界でチェーン展開している企業でも、直営店が多い企業は土地や店舗の固定資産が多く、総資本が大きくなります。逆にフランチャイズ展開している企業は、所有する土地や店舗が少ないため、総資本が小さくなります。
このようにビジネスモデルが同じでも資産の構成内容が違えば、総資本の規模が同じでも売り上げは大きく違います。
また同じ業界で同じような資産構成の会社でも、物販が中心の会社とサービス提供が中心の会社では、売上を生み出す効率が違います。その結果、総資本の規模が同じでも売上高に差が生まれて、総資本回転率にも差が出ます。
売上高は変わらないのに総資本回転率が高い(or 低い)場合
売上高がほとんど同じなのに総資本回転率に差がある場合は、
- 在庫の回転効率に差がある
- 固定資産の運用効率に差がある
- ブランド価値などの付加価値に差がある
などのことが考えられます。
もし自社よりも規模の小さい同業他社が、自社と同じくらいの売上高を生み出しているのであれば、その競合は在庫管理や資産の活用、ブランド力などにおいて一枚も二枚も上手なのかもしれません。
例えばより少ない量の在庫(棚卸資産)で同じ売上を上げているのなら、在庫をどんどん効率よくさばいているということになります。また店舗や設備が少ないのに売上が多ければ、店舗や設備をより効率的に使っていることになります。
また販売数が同じなのにより多くの売上を生み出せるのであれば、競合の方が販売あたりの単価が高いのかもしれません。
このように同じ売上高の同業他社で総資本の規模に差があれば、その原因が何なのかより詳細に分析する必要があります。