ビズリーチのビジネスモデル図解:市場限定と利用者選別のプラットフォーム戦略

ビズリーチの強さ②:利用者選別によるプレミアムの獲得

ビズリーチには、

  • 利用者は全員、審査を通過しないと登録できない

という特徴があります。

つまり「求人企業」「ヘッドハンター」「転職希望者」全てをコストをかけて審査しているということです。

ではなぜ、手間暇をかけて利用者全員を審査するのか?

その理由は、

  1. ターゲット層以外が利用することを防ぐため
  2. サービス品質の向上による追加の利益を得るため

の2つ。

特に注目したいのが2つ目の品質向上による追加利益(プレミアム)です。

これを図で見てみましょう。

ビズリーチ:利用者選別によるプレミアムの獲得

広告宣伝活動によって、たくさんの人に登録を促すわけですが、そこにはターゲット層ではない利用者も紛れ込む可能性があります。

もしターゲット層ではない利用者が紛れ込んでしまうと、マッチングの品質が落ちてしまいます。その結果、本来のターゲット層の利用体験の悪化につながります。そうなると、継続利用者が減ってしまい、利益も減ってしまいます。

利用者選別とネットワーク効果の強化

そこでビズリーチは、事前の審査で利用者を選別し、サービスのコンセプトに合致する利用者だけを内側に入れるという方法をとっています。

その結果、

  • 即戦力人材の候補がたくさん登録されていて求人企業やヘッドハンターは喜ぶ
  • ハイクラスな採用情報がたくさん登録されていて転職希望者は喜ぶ

という状況を作ることができます。

これは前述した「ネットワーク効果」を強化する活動になります。先ほどもご紹介した図で説明すると、利用者の数ではなく直接的に質を高めることで「価値や効用」向上させるということです。

間接的ネットワーク効果

さらに、この仕組みで生み出された「品質の高い転職データベース」は、利用者にとってビズリーチ以外のサービスからは得られない情報となります。

そのため利用者全員に「システム利用手数料」を徴収して、仲介手数料以外の利益を得ることが可能になります。(一部利用者に対しては、大幅に機能が制限された無料プランが用意されています。)

スコア評価によるモラルハザードの抑制

実は、ヘッドハンターに対しては登録時の審査だけでなく、「スコア評価」によって継続的に選別される仕組みも備わっています。

その理由は、

  • ヘッドハンターに採用を依頼している未登録企業を選別できない

という問題があるからです。

もし、

ビズリーチの審査に落ちたから、ヘッドハンターに報酬を積んで優秀な人材を探してもらおう。

という求人企業がいたらどうでしょうか? せっかく登録を希望する求人企業を審査で選んでいるのに、意味がなくなってしまいますよね。

しかし、登録していない企業をチェックすることは無理なので、ヘッドハンターが基準を満たさない求人企業を連れてこないように制限をかける必要があります。

ビズリーチ:スコア評価によるモラルハザードの抑制

そこで導入しているのが、ヘッドハンターに対する「スコア評価」です。

ビズリーチのサイトには、以下のように説明されています。

「ヘッドハンタースコア」とは、ビズリーチでの転職支援実績から算出されたもので、面談したビズリーチ会員の満足度や採用決定数など、複数の指標を5点満点で評価しています。また、評価をもとにSからDのランクもつけられます。

この機能によって、

  • 転職希望者と求人企業の顧客体験の向上

を、ヘッドハンターが意識することになり、

  • 転職希望者の満足度よりも短期的な成功報酬を求める

ようなモラルハザード問題を抑制することができます。

プラチナスカウトによるアップセル

最初にお伝えした「システム利用手数料」について、もう一つの仕組みが存在しています。

それは、

  • プラチナスカウト

です。

プラチナスカウトは「求人企業」や「ヘッドハンター」が追加料金を払うと使える機能で、転職希望者に対して開封率の高いメッセージを送ることができるようになります。

ビズリーチ:クロスセル商品のプラチナスカウト

人気のある転職希望者には、たくさんの求人企業からスカウトメッセージが届きます。そのため、普通にメッセージを送るだけでは埋もれてしまい、スカウトに興味を持ってもらえない可能性があります。

しかし追加で料金を払えば、他のメッセージに埋もれにくい「プラチナスカウト」を送ることができるのです。つまりよりニーズの強い利用者に対応することで、ビズリーチは追加で利益を得ることができるのです。

これをマーケティング用語では「クロスセル」と言います。

クロスセルとは、関連性のある商品をすすめること。ハンバーガー屋がポテトとドリンクを勧めるのがクロルセルです。

つまり、通常のサービスにプラチナスカウトを追加トッピングしてもらって利益を増やしているということです。

これは、独自審査によって本気度の高い利用者を選別しているからこそ効果があります。質の高い転職希望者が集まっているので、求人企業やヘッドハンターの間での取り合いが生まれ、その競争に優位に立つためにプラチナスカウトの存在が成り立つのです。

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