アップセルとクロスセルの意味はそれぞれ、
- アップセル:顧客に上位の商品をすすめること
- クロスセル:顧客に関連する商品をすすめること
です。
「アップセリング(Upselling)」や「クロスセリング(Cross-selling)」とも呼ばれ、個別の顧客にマーケティングを行う「ワン・トゥ・ワン・マーケティング(一対一マーケティング)」で使われるマーケティング用語です。
アップセルとクロスセルの違いを比較すると、
アップセル | クロスセル |
上位の商品をすすめる | 関連商品をすすめる |
顧客が購入を決める前に実施 | 顧客が購入を決めた後に実施 |
です。
またアップセルとクロスセルを一つの図に表すと、下のようになります。
ここでは「アップセル」と「クロスセル」の違いと具体例を、わかりやすく図解で説明します。
目次
アップセルとクロスセルの違い
アップセルとクロスセルの違いは、
- 顧客にどんな商品をすすめるか
の違いになります。
アップセルでは、顧客が買おうとしてるものよりも「高機能なもの」「高付加価値なもの」「ハイグレードなもの」をすすめます。そしてクロスセルでは、顧客が買おうとしているものに加えて、関連性のある商品をすすめます。
そして実施するタイミングは、
- アップセル:顧客が購入を決める前
- クロスセル:顧客が購入を決めた後
になります。
これらを表にまとめると、冒頭でご紹介した下記の比較表になります。
アップセル | クロスセル |
上位の商品をすすめる | 関連商品をすすめる |
顧客が購入を決める前に実施 | 顧客が購入を決めた後に実施 |
ということで、さっそく具体例から見ていきましょう。
Amazon.co.jp の具体例
アマゾンの商品ページは、アップセルとクロスセルについて一番わかりやすいオンラインショップの一つかもしれません。
ちなみに今回の例に挙げているページは、
なので、実際の画面を見ながら確認してみてください。(もし下記の内容が表示されなかったら、商品画面が個人別にカスタマイズされている可能性があるので、別の商品で試してみてください。またこのページのリンクはアフィリエイトになっているので、気にされる方は別ウインドウで型番などで検索してみてください。)
ということで、まずは「クロスセル」です。

クロスセル事例:Amazon.co.jp 商品ページ より引用・加筆 2019/07/05
商品の値段の下に「セット割」として、
- スティッククリーナー(スティック型掃除機)
- 炊飯器
などの合わせ買いを促しています。単品以外に、3つのボタンが用意されていて選択できるようになっています。
こちらはセット割の組み合わせが別商品として用意されているため、売り手側の意図的なクロスセルのようです。
おそらく、オーブンレンジ(電子レンジ)を求める顧客に対しては、炊飯器や掃除機をクロスセルできる確率が高いのかもしれません。
また更に下に画面をスクロールさせていくと、今度は「よく一緒に購入されている商品」の欄が表れます。

クロスセル事例:Amazon.co.jp 商品ページ より引用・加筆 2019/07/05
今度は先ほどとは違って、
- オーブントースター
- 電気ケトル
などが関連商品としてクロスセルされています。
こちらのクロスセルは、おそらくアマゾンが過去の購買データを分析して自動的に行なっているものだと思います。
オーブンレンジ本体が赤と黒のカラーリングですが、オーブントースターも同じメーカーで赤と黒のカラーリングがクロスセルされてます。また電気ケトルは別のメーカーですが、色は他の二つと統一感のでそうなブラックがクロスセルされいます。「家電を同じ色で揃えたい」という買い手のニーズをしっかり押さえている、上手なクロスセルだと思います。
横には「3つともカートに入れる」というボタンが付いており、クロスセルを完結させるアクションを行うためのボタンまで設置されています。
そしてそこから更に下に画面をスクロールさせると、ついに「アップセル」が登場します。

アップセル事例:Amazon.co.jp 商品ページ より引用・加筆 2019/07/05
アマゾンのアップセルは「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」の欄で確認することができます。
この欄に挙がっている商品は、全てがアップセルではありません。
しかし同じメーカーで、
- 容量が26Lから31Lにアップしたもの
- 容量がアップして「熱風2段オーブン」や「Wスキャン調理」の機能が追加されたもの
など、いずれも上位の機種がアップセルされています。
ここで気づいた方も多いかもしれませんが、
- 購入を決めている人に「クロスセル」
- 購入を決めていない人に「アップセル」
をセオリーどおりに行なっていることがわかります。
すでにこの機種のオーブンレンジを買おうと心に決めている顧客は、ショッピングカートに追加する前に、選択した商品が間違いないかの確認をする程度です。
そのような顧客は画面をわざわざ下までスクロールして見ないので、クロスセルを仕掛けるのであれば最初に表示される領域に表示するのがベストです。
そのためアマゾンのクロスセルは、ページの上の部分に登場します。
一方で買おうかどうか迷っている顧客は、多くの情報を必要としてるので画面を下までスクロールします。
そこで登場するのが「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」の欄による、アップセルです。
顧客にもっと高機能な上位機種があることを伝えれば、
- 「値段はそんなに変わらないなら高機能の方を買おうかな…」
などとアップセルにつながるかもしれません。
このようにアマゾンの商品ページでは、アップセルとクロスセルが有効なタイミングを考慮した画面デザインになっており、好調な売り上げの一部を担っていると考えられます。
ちなみに楽天市場の商品ページはアップセルやクロスセルが有効な位置に配置されていないばかりか、お店側の強引なクロスセルなどがあり、買い手にとってストレスの多い商品ページになっています。
下記リンクからアマゾンと楽天市場の商品ページを比較してみると、アップセルとクロスセルの理解が深まるはずです。
携帯電話会社の具体例
身近な例としては携帯電話会社との契約も、アップセルとクロスセルの宝庫です。
まずはアップセルとして、
- 基本プラン
- 長期契約割引
- オプションの追加契約
などがあります。
「基本プラン」については、初めてのお客さんには「たくさん使う可能性があるならひとつ上のプランにしておいて後で下げたらいいですよ〜」とか、「今ならキャンペーンで最初の半年は上のプランにしても下のプランと基本料が同じですよ〜」などと言ってすすめますよね。
また機種変更やプランの見直しに来たお客さんに対しては上位プランへの乗り換えや、サービス内容が微妙に変更された新しいプラン(実質、上位プラン)に契約変更を行ったりもします。
「長期契約割引」については、「2年契約」の上位の商品が「3年契約」になることがイメージしにくいと思いますが、契約期間合計の支払額で考えると理解しやすくなるかもしれません。
- 2年契約:72,000円(月々3000円×24ヶ月)
- 3年契約:104,760円 = 108,000円(月々3000円×36ヶ月)+3%の割引
という2つの商品があって、「3年契約」という商品を選べば、
- 2年契約よりも1年も長く使える
という追加された価値を手に入れることができるということです。
…と言っても腹落ちしにくいですよね。
別の商品で例えると、
- コーヒーをMサイズからLサイズにアップセルする
というのも携帯電話の長期契約と同じです。
例えば、
- Mサイズ:300円(Mサイズ×1杯)
- Lサイズ:500円 = 600円(Mサイズ×2杯)+100円の割引
だったとします。
Mサイズを2杯買うのもLサイズを1杯買うのも飲む量は同じですが、Lサイズを買う方がお得な設定になっています。そのためMサイズでも十分足りるのにも関わらず、Lサイズがお得だとすすめられると買ってしまう人がいるのも、アップセルの効果です。
「オプションの追加契約」については、先ほどのオーブンレンジの例で言えば「熱風2段オーブン」や「Wスキャン調理」の追加機能がついた上位機種と同じイメージです。
携帯電話会社との契約では、「留守番電話機能」や「転送電話機能」などが該当します。それ単体では商品になりませんが、追加することで商品自体の価値を高めます。
つぎにクロスセルとしては、
- インターネット回線の契約
- 電気料金の契約
などが挙げられます。
特に家庭用のインターネット回線の契約は、必ずと言っていいほど提案されるのではないでしょうか。また電気が自由化された後には、電気の契約も携帯電話回線と一緒に提案されるようになりました。
クロスセルされる商品の特徴としては、それ単体でも販売が可能であるということです。
先ほどアップセルで紹介した「留守番電話機能」などは、携帯電話回線を契約しなければ使うことができない商品です。しかしインターネット回線は、携帯電話回線を使わなくても契約することができます。
しかし携帯電話回線とインターネット回線を合わせて契約することで、
- 自宅だと携帯電話のインターネットが快適になる
という組み合わせによる付加価値を訴求することが可能になります。
アップセル・クロスセルの目的
ここまでアップセルとクロスセルの具体例をご紹介しました。
しかし何のためにこのような施策をするかというと、
- 客単価を上げるため
です。その結果、低コストで売り上げを伸ばすことが可能になります。
なぜ客単価が上げると売り上げが伸びるかというと、
- 売上 = 客数 × 客単価 × 来店頻度
に分解することができるからです。
ここで挙げた、
- 客数
- 客単価
- 来店頻度
のいずれかを上げれば、売り上げも上がります。
そして一番お金がかからずにやりやすいのが「客単価の向上」になります。
そのための手法として、
- アップセル:顧客に上位の商品をすすめること
- クロスセル:顧客に関連する商品をすすめること
が存在しているのです。
ちなみに売り上げを複数の要素に分解して考える方法として、「MECE(ミーシー)」というフレームワークがあるので、下記の記事もご覧ください。
アップセル
ここからは、それぞれについてもう少し掘り下げていきたいと思います。
まずはアップセルとは、
- 顧客に上位の商品をすすめること
です。
ただし文脈によっては意味が少し違う場合があります。
- 狭義のアップセル:顧客が再購入する時に上位の商品をすすめること
- 広義のアップセル:初めての購入や再購入の時に上位の商品をすすめること
という2つのパターンがあります。
教科書として使われるような書籍(「ゼミナール マーケティング入門 第2版 」など)には、「再購入する時」と書かれている場合が多いのですが、実際の現場では顧客の状態に関わらず上位の商品をすすめるのが「アップセル」と理解されていることが多いようです。
アップセルを図で表すと、上のようになります。
顧客がどの商品からスタートしたとしても、その商品の上位に位置する商品をすすめるのがアップセルです。
ただし、この「上位の商品」を定義するのが少し厄介かもしれません。先ほどご紹介した携帯電話の「長期契約割引」なども上位商品と認識しにくいものの一つです。
そこで有効な判断基準としては、
- 追加された価値が単体で販売されて商品と成立するかどうか
について考えることです。
もし単体商品として成立するなら「クロスセル」ですし、単体商品として怪しいなら「アップセル」と考えて良いと思います。
例えば携帯電話回線の長期契約割引は、2年契約と3年契約の差分である「2年後から3年後だけ携帯電話を使える契約」というものは存在しません。(1年契約とは別物です。)また電話転送のオプションも、主体となる携帯電話回線の契約が存在しなければ使うことができません。
逆に言えば、
- 単体商品と成立しないオプションの提案はアップセル
と考えることができます。(ただし稀に例外もあるので、あくまで目安です。)
具体例:吉野家
アップセルのわかりやすい具体例としては、牛丼屋のサイズ違いの商品などです。
こちらはうな重のアップセルの例ですが、鰻の枚数が増えるごとにグレードが上がります。

アップセル事例:吉野家 メニュー より引用・加筆 2019/07/05
これは牛丼の盛り方でも一緒ですよね。牛丼だと牛肉の量に比例してグレードが上がります。
同じように居酒屋などでも、「刺身の三種盛り」と「刺身の五種盛り」が用意されていて、メニューには豪華な五種盛りの方の写真を使っているのもアップセルの好例です。
また味噌汁や漬物のセットメニューもアップセルです。

アップセル事例:吉野家 メニュー より引用・加筆 2019/07/05
上記の例では「セットメニュー」が、
- 単品の鰻重
- 鰻重セット
- 鰻重みそ汁牛小鉢セット
の順にアップグレードしていることがわかります。
ここで注意しなければならないのは、あくまで「セットメニュー」としての上位グレードだということです。
もし味噌汁や漬物を単品で完結する商品だと考えれば、クロスセルとも解釈できるかもしれません。
(ただし味噌汁単品だけ注文する客はほぼいないでしょうし、店側も味噌汁を単体で売ろうと思っているとは思えないので、どちらにしてもアップセルと考えるのが妥当だと思います。)
必要なのはお得感
アップセルを成功させるために必要なのは、
- 顧客にとってのお得感
です。
つまりアップグレードした場合に、
- 増加する商品の価値 > 増加する価格
という状態であれば、顧客は上位グレードにお得感を感じます。
例えば先ほどのセットメニューであれば、味噌汁と漬物をそれぞれ単品で追加するよりも、セットメニューを選んだ方が合計金額が安くなるのが普通です。
もしこれが単品で追加するよりセットメニューの方が高くなってしまうのであれば、顧客はお得感を感じないので誰もセットメニューを注文しないでしょう。
またこの「お得感」は、顧客が持っている情報量が少なければ少ないほど生み出しやすくなります。
あまり良くない例ですが、商品に詳しくないお客さんは、上位グレードを選択した場合の機能の差や価値の差を正確に見積もることができません。そのため売り手の表現の仕方次第で、価値が価格差を上回っているように思い込ませることもできます。
これは「情報の非対称性」と呼ばれるもので、ビジネスでは情報量が多い方が有利になることが多々あります。売り手と買い手の関係でも同様に、より多くの情報を持っている方が取引を有利にすすめることができます。
ダウンセルという選択肢
顧客がいつもアップセルを受け入れてくれるとは限りません。
むしろ逆にスタンダードな商品ですら、顧客が想像していた予算より高い場合もあります。
そんな時には「ダウンセル」という方法も存在します。これはアップセルの逆で、下位のグレードの商品をすすめることを指します。
「アップセル・クロスセルの目的」でお伝えしたように、これらのテクニックの目的は売り上げを伸ばすことです。そのため買ってもらえないよりは、ダウンセルをして売り上げに貢献する方が良いという考え方もあります。
しかしこのダウンセルは諸刃の剣であり、強引な販売や、顧客に不必要なものを買わせるようなダウンセルは、売り手の信頼性を損なう危険性も秘めています。
目の前の得を取るより、顧客との長期的な信頼関係を築く方が望ましい場合も多いので、「ダウンセル」を使う場面は十分に考慮する必要があります。
クロスセル
クロスセルとは、
- 顧客に関連する商品をすすめること
です。
タイミングとしては、顧客が主体となる製品の購入を決めた後(または購入後)であり、顧客のニーズに基づいた関連商品を提案します。
クロスセルの対象となるものは、それ単体だけでも商品として成立するのが一般的であり、顧客の財布の紐が緩んだ時に合わせ買いを促します。
よく挙げられる例としては、
- 「ハンバーガーと一緒にポテトもいかがですか?」
というものがありますが、今どきそんなことを聞いてくるハンバーガーチェーン店は存在しません。
近年のハンバーガーチェーン店は、セットメニューが標準になっているので、
- セットメニューから単品にダウングレードする
- セットメニューを上位サイズにアップグレードする(アップセル)
- セットメニューにドリンクとポテト以外のサイドメニューを追加する(クロスセル)
などが一般的な選択肢になります。
具体例:東京ガス
近年よく見られるのが、電力やガスの自由化によるクロスセルです。
下記の例は、東京ガスによる電力のクロスセルになります。

クロスセル事例:東京ガス より引用・加筆 2019/07/05
東京ガスのホームページを見る人は、既存のガスの顧客も多くいるはずです。そのような人たちに向けて「電力」の契約をプロモーションしています。
電気代やガス代を気に掛ける顧客は、「光熱費を下げたい」という共通ニーズを持っているため、ガスと電力のクロスセルは非常に相性が良いと言えます。
そのほかにも先ほど事例で紹介した携帯電話回線と電力のクロスセルも、「固定費を下げたい」という観点から共通ニーズに訴求することができています。
その他の例
その他の例としては、「生命保険」のクロスセルなどがわかりやすいかもしれません。
自動車保険を契約すれば、その保険会社が取り扱っている生命保険のダイレクトメールが届いたりします。また銀行で預金をしていても、窓口で各種保険の案内を受けることは多いかもしれません。
これらは「将来に対する不安」という共有ニーズを持った関連商品のクロスセルと言えます。
他にも、
- コーヒーショップのレジ横にあるスイーツや軽食
- スーパーの野菜や精肉コーナーの近くにある鍋スープ
- ドラッグストアの風邪薬・咳止めコーナーの近くにあるマスク
などなど、共通ニーズに対する関連商品のクロスセルの例は周りにあふれています。
アップセルやクロスセルを成功させる仮説検証
アップセルもクロスセルも、仮説検証を繰り返すことで成功確率が向上します。
仮説検証とは、
- 「AであればB」という仮説をする
- 仮説がどの程度当てはまるか確認する
という作業の繰り返しです。
例えばアップセルであれば、
- 「共働きの夫婦には乾燥機能付き洗濯機のアップセルが成功する」という仮説を立てる
- 実際にその仮説が正しいかどうか1週間程度実践してみて成功率を記録する
という仮説検証を行います。
クロスセルであれば、
- 「小さい子供のいる夫婦には冷蔵庫と掃除機のクロスセルが成功する」という仮説を立てる
- 実際にその仮説が正しいかどうか1週間程度実践してみて成功率を記録する
という仮説検証になります。
もし成功率が高ければ、その仮説が正しい可能性が高いと言えるでしょう。同僚にも共有し、他人でも同じような成果が上がれば、より一般化されたノウハウとして運用することができます。
そしてこの「仮説を立てる」方法は、
- 帰納法(きのうほう):複数の出来事とその結果から規則性を見つける
- 演繹法(えんえきほう):一般論を使って出来事の結果を推測する
の2つに大きく分けることができます。
購買データを使った帰納的仮説
帰納(きのう)法では、
- 複数の出来事とその結果から規則性を見つける
ことで仮説を立てることができます。
アマゾンの関連商品のレコメンドによるクロスセルや、小売店でPOSデータを使った陳列によるクロスセルなどは、過去の購買データに基づいたものがほとんどです。
その購買データからパターンを見つけ出して、仮説を生み出すのが帰納的な仮説の立て方になります。
例えば、
- 商品Aを買った顧客の7割が商品Bも一緒に購入した
ということが購買データからわかれば、
- 商品Aを買う顧客は商品Bも買う
という仮説を立てることができます。
先ほどの例では「小さい子供のいる夫婦は冷蔵庫と掃除機を一緒に買った購買履歴が多い」ということがわかった場合、「小さい子供のいる夫婦には冷蔵庫と掃除機のクロスセルが成功する」という仮説を立てることができます。
その仮説をもとに陳列の並べ方を変えたり、商品Aの購入を決めたお客さんに商品Bを提案することで、クロスセルの成功確率が高いかどうかを検証できます。
またこの帰納的仮説は、必ずデータが必要なわけではありません。
レジ打ちをしたり発注書を何枚を眺めたりしているときにも、購買のパターンが見えてくることがあります。そういった場合には、そのまま放ったらかしにせず仮説として検証をこまめに行うことで、ノウハウが蓄積されていきます。
セオリーに基づいた演繹的仮説
もう一つは、
- 一般論を使って出来事の結果を推測する
ことで演繹(えんえき)的に仮説を立てる方法です。
演繹法は、すでに一般論として仮説検証がされているノウハウを使って、別の場面の仮説を立てる方法です。
例えば
- 共働き夫婦には家事の時短に関するニーズがある
という一般論があったとします。
先ほどの例であれば、
- 一般論:共働き夫婦には家事の時短に関するニーズがある
- 出来事:共働き夫婦が洗濯機を探している
- 仮説:共働き夫婦には乾燥機能付き洗濯機で家事の時短が実現できるのでアップセルが成功する
という流れで仮説を立てることができます。
また、
- 一般論:共働き夫婦には家事の時短に関するニーズがある
- 出来事:共働き夫婦が洗濯機を探している
- 仮説:共働き夫婦にはロボット掃除機で家事の時短が実現できるのでクロスセルが成功する
というように別の切り口で仮説を立てることもできます。
そしてこれらを検証するために記録を取ることで、仮説検証を行うことができます。
このように、アップセルにしてもクロスセルにしても、日々の仮説検証から精度を上げていくことが重要です。そのためには帰納法や演繹法についても理解を深める必要があります。
帰納法と演繹法については、より詳しく別の記事にまとめているので、こちらの記事もご覧ください。