範囲の経済とは?具体例と多角化戦略によるシナジー効果との違い

範囲の不経済とは

事業の統合や経営の多角化を行っても、必ずしも経営効率が高まるわけではありません。

別の事業を1つの組織が行うことで、お互いの事業が足を引っ張ることもあります。そのような状態を「範囲の不経済」と呼びます。

範囲の不経済のグラフ

先ほどの図とほとんど同じですが、A社とB社が合併したことで、

  • 製品Aも製品Bも毎日90個ずつしか作れない

ようになってしまいました。

その理由は、

  • 元A社社員と元B社社員で派閥争いになり工場の雰囲気が悪くなった
  • 物流システムの統合が上手くいかずトラブルが増えた
  • 合併によって社風が変わって辞めてしまう社員が続出した

などなど。

つまり合併したことによって、社内がゴタついて悪い影響の方が強く出てしまったわけです。その結果、別々の会社でやっていた時より生産性が落ちてしまいました。これを「範囲の不経済」と呼びます。

事業拡大や多角化によるシナジー効果との違い

範囲の経済は、事業拡大や多角化による「シナジー効果(相乗効果)」とは区別されます。

多角化とは、新しい商品やサービスで新しい顧客に対応する事業展開のことです。逆に商品または顧客のどちらかが既存のものであれば、事業拡大と呼びます。

  • 既存の商品やサービスを新しい顧客に提供する:事業拡大
  • 新しい商品やサービスを既存の顧客に提供する:事業拡大
  • 新しい商品やサービスを新しい顧客に提供する:多角化

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範囲の経済は、

  • コストが下がる
  • 生産効率が上がる

という状況を指しますが、シナジー効果は、

  • 売上が増える
  • 価格が上がる

といったことが起こります。

例えば、

  • 鉄道会社が駅周辺の土地開発をすることによるシナジー効果
    • 鉄道の利用者が増加する(鉄道事業の売上増加)
    • 人が集まることで駅周辺の地価が上がる(不動産事業の売上増加)

などがわかりやすいかもしれません。この例では、必ずしも規模の経済性が得られるわけではありませんが、大きなシナジー効果が得られています。

つまり、事業拡大や多角化をした場合には、「範囲の経済」と「シナジー効果」の両方が起きる場合もあれば、どちらか片方しか起きない場合もあるということです。

範囲の経済と規模の経済の違い

似ている経済用語に「規模の経済」というものがあります。

規模の経済は製品を作れば作るほど製品1つあたりの平均費用が下がっていく状況を表しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

規模の経済・範囲の経済・経験曲線効果の違いとは?図解すると一目瞭然

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