SBUによる戦略的な事業計画の立案
ここまでSBUの分け方と作り方について説明しましたが、そもそも何のためにSBUを使うのかを忘れてはいけません。
SBUは、事業計画を考えるためのグループです。
そのため、事業や製品をSBUに分けたのであれば、SBUごとに独自の戦略を考えて、事業計画に落とし込む必要があります。
先ほどの電機メーカーの例であれば、
- これからロボット掃除機市場が大きく成長すると予測される
- 家庭用も業務用も両方一緒に製品開発した方が効率がいい
- ロボット掃除機で市場シェアを取れたらモーター事業も牽引される
などの理由から「ロボット掃除機」というSBUで、攻めの戦略を考えることができます。
一方で、その他の事業を「エレクトロニクス」というSBUにまとめることで、成熟した市場で守りの戦略を考えることができます。
このように単純に「事業部」単位で戦略を考えるのではなく、「SBU」という単位で戦略を考えることでより戦いやすくなる可能性があります。
SBUという思考の罠
SBUは物理的な事業部単位の事業計画よりも、より戦略的に考えられることをお伝えしました。しかしこの考え方に異論を唱える人たちもいます。
1990年にSBUを「思考の罠」と表現して批判したのは、プラハラッド教授とハメル教授の書いた論文「コア・コンピタンス経営」です。これはSBUの概念が広まった1970年代から、約20年後に発表された論文になります。
コアコンピタンスとは、事業を支える重要な技術のことです。中心となる技術が「コア製品」を生み出し、それらが様々な「事業」や「最終製品」として花を咲かせる、という考え方です。
つまりコアコンピタンス経営では、今回説明したSBUは社の内面ではなく表層に現れた「事業」や「最終製品」だけを見ていることになります。
プラハラッド教授やハメル教授は、SBUのように競争力が具現化した「結果」だけを見てしまうことに警鐘を鳴らしています。
これと同様に、1992年にストークJr氏によって発表された論文「ケイパビリティ・ベース競争」でも、似たような指摘がされています。