リレーションシップ・マーケティング(関係性マーケティング)とは、
- マーケティング活動に影響をおよぼす人や組織と「マーケティング・ネットワーク」を築く
ことで、
- 顧客
- 従業員
- パートナー(供給業者、協力企業、協力団体など)
- 財務メンバー(株主、投資家、銀行など)
との関係性(マーケティング・ネットワーク)を構築し、競合他社よりも優位にマーケティング活動を行うことを目的とします。
ここではリレーションシップ・マーケティングについて、わかりやすく説明します。
リレーションシップ・マーケティングとは?
リレーションシップ・マーケティングの目的は、
- 関係性の構築でマーケティング活動において競争優位性を得ること
です。
そのため、
- 顧客
- 従業員
- パートナー(供給業者、協力企業、協力団体など)
- 財務メンバー(株主、投資家、銀行など)
といったステークホルダー(関係者)と、「マーケティング・ネットワーク」と呼ばれる資産を築くことが重要になります。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p23 参照)
例えば、社運をかけた新製品を世に出したい場合は、
- 生産するために銀行などから資金を調達する(財務メンバーとの関係性)
- 製品の価値を従業員に理解してもらい品質を高める(従業員との関係性)
- 販売代理店にプロモーションに協力してもらう(パートナーとの関係性)
- 既存顧客に新製品の情報を提供して興味を持たせる(顧客との関係性)
などのマーケティング活動を行う必要があります。
そして一連のマーケティング活動は全てが円滑に連携することが望ましく、どれか一つが欠けたとしても競争力が低下します。
そのようなことを避けるために、マーケティング活動に関わるすべての人や組織に対して、「マーケティング・ネットワーク」を構築して連携を実現させることが重要です。
顧客とのリレーションシップ・マーケティング
顧客との関係性の構築は、製品やサービスを提供する上で一番重要な関係性です。
顧客との関係性を構築することで、
- 顧客から得られる利益を最大化する
- 顧客との取引コストが下がる
という2つのマーケティング上のメリットが得られます。
顧客から得られる利益を最大化する
簡単に言えば、
- 顧客との深いつながりを維持して利益を上げれば会社を継続できる
ということです。
一人の顧客から生涯得られる利益のことを、ライフタイムバリュー(LTV)と呼びます。そしてこのライフタイムバリューを最大化して十分な利益を得ることが、企業の持続的な運営につながります。
これを実現するためには、顧客との関係性を構築・管理しなけれいけません。そのための手法が、CRM(顧客関係管理)です。
CRM(顧客関係管理)とは、
- 顧客ロイヤリティを最大化するために顧客との接点を管理すること
です。
そして顧客ロイヤリティとは、
- 売り手側と長期的な関係を維持しようとする買い手の忠誠心
のことで、顧客ロイヤリティの度合いによって、
- リピーター:2回以上のリピート利用をしたことがある
- プロモーター:友人や知人に製品やサービスを推奨する
- ファン:関係性を維持するために支出を惜しまない
の3つのレベルに分類することができます。
適切にCRMができていれば、製品やサービスを必要としている顧客に適切に提案することができますし、顧客ロイヤリティが高まれば長期にわたって顧客に価値を提供することができます。
顧客との取引コストが下がる
顧客と良い関係性が構築できていれば、お互いに駆け引きをする必要がなくなります。
もし顧客が企業のことを信用していなければ、失敗するリスクを軽減させるために値下げを要求するかもしれません。逆に企業側も顧客を信用することができなければ、様々な調査やリスクを回避しようとする行動によって取引コストが増えます。
しかし信頼関係が築けていれば、お互いに疑心暗鬼になることも、必要以上にリスクを回避することも必要なくなります。
また顧客と良い関係を構築していれば、新しい製品やサービスの提案もしやすくなります。
新規の顧客を獲得するためには大きなコストがかかりますが、既存の顧客であれば少ないコストで売り上げを生み出すことができます。そして既存顧客による評判によって、新しい顧客も獲得しやすくなります。
このように顧客との関係性を構築することが、取引にかかるコストを引き下げることにつながります。
従業員とのリレーションシップ・マーケティング
従業員との関係性を構築することを「インターナル・マーケティング」と呼びます。
インターナル・マーケティングは従業員に対して、
- マーケティングの観点から社内業務を提供して従業員満足度(ES)を高める
- マーケティング戦略への理解を促して全社的な協業体制を築く
などを行います。
特にリレーションシップ・マーケティングでは、後者の「マーケティング戦略への理解を促して全社的な協業体制を築く」ことが重要になります。
いくら優れたマーケティング戦略があったとしても、それを実行するのは従業員です。
そのため、従業員がマーケティング活動を十分に理解することは、円滑なマーケティング活動に欠かせません。
パートナーとのリレーションシップ・マーケティング
マーケティング活動を担うのは、製品やサービスを提供する企業だけではありません。
その製品やサービスを生み出すために原材料を提供する供給業者や、製品やサービスを流通させるための流通業者や小売業者、そしてプロモーションを行うための広告代理店など、マーケティング戦略を成功させるために社外の様々な立場の人や組織が連携して動く必要があります。
しかしこれらの社外パートナーとの連携は、一朝一夕では実現することはできません。
日頃からのコミュニケーションと協業が、パートナーとの強い関係性を築くために重要になります。
そしてパートナーとの連携力が、競合他社が真似しにくいほどに洗練させれば、その連携力が競争優位性となります。この連携による競争力のことを「ケイパビリティ」と呼びます。
下図は社外のパートナーとの連携によるケイパビリティの一例です。
ケイパビリティについての詳しい情報は、こちらの記事もご覧ください。
財務メンバーとのリレーションシップ・マーケティング
マーケティング活動で忘れてならないのは、活動資金の調達です。お金がなければマーケティング施策の選択肢も少なくなってしまいます。
多くの従業員にとっては、
- マーケティング予算は与えられるもの
かもしれません。
しかしプロジェクトの責任者や管理職にとっては、予算の獲得や利益の確保も重要なマーケティング活動の一つです。
さらに経営者やマネジメント層にもなれば、マーケティング活動の資金をどこから調達してどの程度の予算を与えるか考えなければなりません。
このような財務活動に関わるマーケティング活動に関しては、
- 株主
- 投資家
- 銀行
などの財務メンバーとの関係性が重要になります。
例えば、マーケティング活動が短期的に利益が上がらないことが予測されれば、会社に出資している株主の理解を得なければいけません。
また誰も成し遂げたことのないような事業への投資を行うためには、投資家にマーケティング戦略の趣旨を理解してもらい、資金の提供をお願いしなければならないかもしれません。
あるいは、生産活動を強化するために銀行から追加の融資を受ける必要があるかもしれません。
このような場合に、財務メンバーとの日頃の良好な関係性の構築がマーケティング活動に大きく影響します。そのため、マーケティング活動では財務メンバーとの関係性を構築することも必要です。