直接的ネットワーク効果(外部性)の具体例
まずは直接的なネットワーク効果から。
もう一度ループ図を見てみましょう。
利用者の数が増えれば、商品やサービスの価値が増え、逆に利用者が減れば価値も減る、というサイクルが回るのが直接的ネットワーク効果です。
直接的ネットワーク効果の具体例としてよく挙げられるのが「電話網」です。
電話会社で社長を務めていたセオドア・ヴェイル氏 が、ネットワーク効果の概念を提唱したので、具体例として定番になっています。
まずは電話で具体例を確認した後に、それ以外の具体例についても説明します。
電話網のネットワーク効果
電話機は1台だけだと無価値です。しかし別の利用者が現れて、2拠点が結ばれると初めて価値が生まれます。
さらに3拠点、4拠点と利用者が増えれば利便性が向上します。
以下の図は、4拠点と8拠点の電話網を比較したものです。
拠点と拠点を結ぶ線の数を、電話網の利便性として考えるとご覧の通り。
4拠点から8拠点と拠点数が2倍になると、拠点同士を結ぶ線の数は6本から28本と約4.7倍に増加しています。(実際の電話線は電話交換所を経由して切り替えをするため、電話線の本数は4.7倍になるわけではありません。)
つまり単純計算で、(上図で表したケースでは)利用者が2倍に増えれば、電話の価値である利便性は4.7倍に増えるということです。(計算方法は後述の「メトカーフの法則」にて解説。)
電話網の利便性が向上すれば、さらに多くの利用者を引き込むことができます。そしてさらに利便性が向上するという好循環が生まれるのです。
その他の直接的ネットワーク効果
私たちの身の回りでは、さまざまなネットワーク効果を見ることができます。
- 言語・通信プロトコル
- 道路・路線
- ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)
- OS・ソフトウェア
などが直接的なネットワーク効果に該当します。
言語・通信プロトコル
私たちが読み書きする言語はもちろんのこと、プログラミング言語や、ネットワークの通信プロトコルなども直接的なネットワーク効果を発揮します。
世界的に英語や中国語の学習者は増加傾向にあります。その理由は、経済的なメリットや文化的なメリットが得られるから。
同じ言語を喋る人が多ければ多いほど、よりたくさんの知識を得ることができるようになり、より多くの人と共同で価値を生み出すことが可能になります。
逆に話せる人が少ない言語は、言語を学ぶメリットが少ないため、いつの日か消滅します。これはデジタル化された言語(プログラミングやネットワーク)においても同じです。
道路・路線
道路、公共交通機関の路線、航空路線など、人や物が往復できる公共インフラはネットワーク効果が働くと言えます。理屈は電話網と同じです。(ただし同じ公共インフラでも、電気、ガス、水道などは一方向なので、ネットワーク効果ではなく規模の経済や密度の経済の恩恵が得られます。)
- 環状線と高速道路
- バスターミナルとバス路線
- 物流や航空のハブ・アンド・スポーク方式
- 貿易港と航路
など、利用者が増えるほど利便性や効率性が高まります。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)
個人と個人がネットワーク上でつながるSNSは、利用者が多いほどネットワーク上のコミュニティやタイムラインが活性化し、より多くの利用者を惹きつけます。
また「みんなが使っているから自分も使ってみたい」といったバンドワゴン効果(後述します)も現れやすく、ネットワーク効果が機能し始めると急速に利用者が増加する傾向にあります。
OS・ソフトウェア
OS(Operating System)は、電子機器のハードウェアを制御し、ソフトウェアとの橋渡しになる基盤システムのこと。Windows、Android、macOS、iOS、Linuxなどがそうです。
みなさんの中にも「Windowsパソコンを買おうか、それともMacを買おうか」とか「AndroidスマホにしようかiPhoneにしようか」などと、迷った経験がある方もいると思います。
これは、いずれのOSにもネットワーク効果が働いており、利用するメリットが高まっているため選択肢に入っているということ。逆にみんなが使っていないOSを搭載した端末があったとしても選択肢に入らないはずです。
同様に、OS上で作動するソフトウェアにもネットワーク効果が働きます。多くの人が文書作成ソフトとしてマイクロソフト社の「Word」を使いますが、「みんなが使っているから使う」という理由で使っている人も多いはず。
みんなが使っているからこそ、社内や取引先とWord形式のファイルをやりとりがスムーズにできますし、トラブルの解決も容易になります。利用者が多いほど利便性が高くなるというネットワーク効果が強く働いていることがわかります。