SCP理論の流れを逆転させる経営戦略への活用
経済学のSCP理論は主に経済政策への活用などに留まっていましたが、1970年の後半にポーター教授によって経営戦略への活用方法が見出されます。
それは、
- 戦略によって企業に有利な業界構造を作ればいい
という考え方です。
まさに逆転の発想。
それを表したのが以下の図。
ここからは、それぞれの要素について対比しながら説明します。
パフォーマンス(Performance:企業業績)
パフォーマンスとは、企業業績と訳されることが多いですが、売上高や利益だけではなく、その企業の生産性や品質など事業活動そのもののパフォーマンスも含んでいます。
従来の経済学のSCP理論では、同じような行動(戦略)をとる企業は、突出した企業があったとしても、いずれは業界の平均的なパフォーマンスに収斂すると考えられていました。
しかしポーター教授は逆に、個別の企業のパフォーマンスの違いが、異なる事業戦略を生み出し、戦略グループを形成すると考えました。
SCP理論と戦略グループ
戦略グループ(Strategic groups)というのは、事業戦略が似通っている企業のグループのこと。同じ戦略グループに属する企業は、似たようなパフォーマンスの特徴を持っています。
この戦略グループという考えは、1972年のマイケル・ハント氏の博士論文で登場しました。
例えば、腕時計で考えてみると、
- 安価な腕時計を工場で大量に生産する
というパフォーマンスを持っている企業と、
- 精巧に作り込まれた腕時計を職人がひとつひとつ手作りする
というパフォーマンスを持っている企業は、戦略グループが大きく異なります。
つまり、個々の企業のパフォーマンスの違いによって、様々な戦略グループが形成されるということになります。
バリューチェーン:パフォーマンスの生み出す価値
ちなみに企業パフォーマンスが生み出す価値をフレームワーク化したのが、1985年のポーター教授の「バリューチェーン」です。
バリューチェーンについては、上記の記事にもまとめていますが、パフォーマンスが異なるということは、企業ごとのバリューチェーンも違うということ。
価値を生み出すためのバリューチェーンが違うということは、同じ戦略をとる(同じ価値を生み出す)ことは難しいということになります。
これは、商品やサービスの差別化の源泉となります。
以下は前述した完全競争と独占の条件一覧ですが、差別化ができれば独占に近づく。つまり、儲かりやすくなるということです。
次のページでは、パフォーマンスの違いが「移動障壁(mobility barriers)」と呼ばれる戦略上の壁になることについてわかりやすく説明します。