SWOT分析の歴史:ハンフリーのSOFT分析
SWOT分析のベースとなった分析フレームワークは、1960〜70年代に生まれたと言われています。そのフレームワークとはSWOT分析の生みの親と呼ばれているアルバート・ハンフリー氏のSOFT(ソフト)分析です。
ちなみにハンフリー氏は自らをSWOT分析の生みの親とは認めていないようですが、SWOT分析という手法の開発に関わりがあったことは間違いなさそうです。(SOFT分析については、この後詳しく説明します。)
その後もSWOT分析は、フレームワークのわかりやすさと使いやすさで広く普及しました。戦略を検討するための「クロスSWOT分析(TOWSマトリックス、ハインツ・ワイリック教授、1982年)」なども生まれ、今でも様々な場面で使われいます。
余談ですが、バリューチェーン(価値連鎖)でおなじみのマイケル・ポーター教授は、大学の授業でSWOT分析が使いにくいため「ファイブフォース分析」を考案したとインタビューで語っています。
SWOT分析の原点:SOFT(ソフト)分析の誕生
先ほどご紹介したSWOT分析の原点「SOFT(ソフト)分析」について、もう少し詳しく解説します。
このSOFT分析についての詳細は、ハンフリー氏が所属していたスタンフォード研究所 (スタンフォード大学が1920年代に設立した研究機関)のOBOG向け会報(2005年12月号)に掲載されました。この会報については下記リンクからPDFファイルで読むことができます。
参考
SRI Alumni Newsletter, December 2005(PDF)SRI International
よく知られているSWOT分析は、1960〜70年代にかけてアメリカのフォーチュン500 (全米上位500社ランキング)の企業を研究するために生まれた分析手法です。
その前身となったのが、このSOFT分析と呼ばれる分析フレームワークです。SOFT分析は後に「SWOT分析」と名前を変えて親しまれるようになりました。
SOFTマトリックス:SWOTマトリクスのベース
SOFT分析は「良いこと・悪いこと」という軸と、「現在・将来」という軸の2つの軸で4つの事象に物事を分類します。
その4つの軸を表にしたものが「SOFTマトリクス」です。
SOFTマトリクスを使うことで、
- 現在起こっている × 良いこと = 良好(Satisfactory)
- 将来起こる × 良いこと = 機会(Opportunity)
- 現在起こっている × 悪いこと = 欠点(Fault)
- 将来起こる × 悪いこと = 脅威(Threat)
という4つの要素に分けることができます。
SOFT分析のやり方
SOFT分析の進め方については、先ほどご紹介したスタンフォード研究所の会報で説明されています。
大まかな流れとしては、
- SOFTマトリクスと6つの課題カテゴリで課題を洗い出す
- 目標を元に短期・中長期で課題解決の優先度を決める
- 課題解決のアクションプランを作って実行する
になります。
具体的には、
- 4つの問いに答えて企業経営の課題を洗い出す
- 現在起こっている良いことは何か?(良好なこと)
- 将来起こりうる良いことは何か?(これから得られる機会)
- 現在起こっている悪いことは何か?(欠点であること)
- 将来起こりうる悪いことは何か?(これから直面する脅威)
- 洗い出した課題を6つのカテゴリに分ける
- 製品(Product)
- プロセス(Process)
- 顧客(Customer)
- 流通(Distribution)
- 財務(Finance)
- 経営管理(Administration)
- 目標と照らし合わせて短期・中長期の課題を優先度が高い順に並べ替える
- 短期的に解決の優先度が高い課題の一覧
- 中長期的に解決の優先度が高い課題の一覧
- アクションプランを作る
- 「各カテゴリの課題に対してチームは何をするべきか?(What shall the team do about the issues in each of these categories?)」を考える
- SWOT(SOFT)から始まる17ステップの計画プロセスを実行する
と分けられます。
ちなみに最後のアクションプランを作るための17ステップについて、詳細は明かされていません。
SOFT分析の目的とメリット
SOFT分析を行う目的としては、経営課題を解決するためのアクションプランを作って実行することです。
フレームワークは「現在」と「将来」の「良いこと」と「悪いこと」ということで、非常にシンプルに作られています。そのため社内で聞き取り調査などを行う際には、どんな立場にあっても答えやすそうです。
ポイントとしては、4つの事象に分類することより、課題を6つのカテゴリに分けることにあるのかもしれません。6つのカテゴリのうち、課題が多くあるカテゴリについては経営的に弱い部分だと判断できます。
そしてアクションプランに落とし込むために、課題に短期・中長期で優先順位をつけることも重要です。多くの課題があるときには、どれから手をつけて良いのか迷うものです。しかしカテゴリごとに取り掛かるべき課題の優先順位があれば、経営判断もしやすくなります。
SWOT分析に対する批判
ファンも多いSWOT分析ですが、一方で「SWOT分析は使い物にならない」という批判もあります。
過去にSWOT分析を使った企業を研究して、
- SWOT分析は企業に悪い影響を与える
- SWOT分析の結果が最終的な戦略の策定に使用されない
などの結論に至った研究者もいるほどです(Hill and Westbrook, 1997)。
SWOT分析が上手く使えない理由としては、
- 目標が明確でないまま分析をした
- 分析のタイミングが適していなかった
などが挙げられます。