SWOT分析とVRIO分析での強みと弱みの違い
SWOT分析を行う前に知っておきたいのが、VRIO(ブリオ)分析の「強み」「弱み」との違いです。
実は「強み」「弱み」という言葉が登場する分析フレームワークは、SWOT分析だけではありません。経営資源を「強み」「弱み」に分類するための、VRIO分析というフレームワークがあります。
VRIO分析とは、経営資源を戦略に活かすことを説いたバーニー教授によって提唱された分析方法です。
VRIO分析とは?やり方と具体例をフレームワークでわかりやすく図解
SWOT分析とVRIO分析の「強み」「弱み」には、
- SWOT分析 → 目標達成の助けになるかどうか
- VRIO分析 → 機会や脅威に適応できるかどうか
という違いがあります。
これは全く同じ内部要因(内部環境)であっても、前後の状況によって違ってきます。
例として「営業担当者が多い」という内部要因(内部環境)があるケースで考えてみます。
SWOT分析の強み
例えば「市場シェア〇〇%達成」という目標がある場合に、
- 「他社よりも営業担当者が多い我々の方が有利だ」
というのは「SWOT分析の強み」になります。
営業担当者が多ければ、より多くの商談をすることができます。これが市場シェアを伸ばすという目標を達成する「助けになる」ので、SWOT分析の強みと判断できます。
VRIO分析の強み
もし商品がテレビで紹介されて問い合わせが急増するような機会がある場合に、
- 「他社よりも営業担当者が多い我々の方が有利だ」
というのは「VRIO分析の強み」になります。
営業担当者が多ければ、突然降ってきた「問い合わせの急増」という「機会」に対しても対応することが可能です。つまり機会に対応できるVRIO分析の強みと判断できます。
SWOT分析の弱み
例えば「利益率〇〇%達成」という目標がある場合に、
- 「営業担当者が多いことは不利だ」
というのは「SWOT分析の弱み」になります。
営業担当者が多ければ、その分だけ固定費も増えます。もし売上がなかなか上がらない状況であれば、固定費が大きいほど利益率は低くなってしまいます。つまり利益率を達成するという目標の妨げになる内部要因(内部環境)であるため、SWOT分析の弱みと判断できます。
VRIO分析の弱み
もしインターネット上で完結する営業活動が普及することが脅威になる場合に、
- 「営業担当者が多いことは不利だ」
というのは「VRIO分析の弱み」になります。
営業担当者が多かったとしても、インターネットで行う営業活動には対面営業とは別のノウハウや、今までと異なるスキルを持った営業担当者が必要になります。そのためインターネット営業の普及という脅威に対して、営業担当者の多さだけでは対応できないためVRIO分析の弱みと判断できます。
違いを使い分ける意味
このように「強み」「弱み」は、「営業担当者が多い」という1つの事柄でも様々な解釈ができることがわかります。
しかしなぜ、わざわざ使い分ける必要があるのでしょうか?
それは戦略を実行するチームが同じ認識を持つことで、素早い判断や意思決定を行うためです。
もし戦略会議に集まったメンバーが、先ほど紹介した4つのパターンの考え方をバラバラに持って参加したらどうなるでしょうか?
ある参加者は「営業担当者の増員」を提案し、また別の参加者は「営業担当者の削減」を提案します。また「営業担当者の数は問題じゃない」という参加者もいれば、逆の立場をとる参加者も現れます。
その結果、議論はまとまらず、戦略は決まらず、時間だけかけて中途半端な結論で会議を終わらせることになるかもしれません。
こういったことは実際の社内会議でもよく起こります。これは議論の前提となる目的や目標を、参加者が共有できていないことが根本的な原因です。
そうならないためにも、分析の目的や戦略の目標を再確認し、違いを理解した上で「強み」「弱み」を使い分けることが重要になります。