マーケティングの対象とは?具体例と特徴的な8タイプを解説

マーケティングの対象

マーケティングの対象は、

  • 形のあるもの(有形財):製品・品物・物品
  • 形のないもの(無形財):サービス
  • 上記のどちらにも分類しにくいもの

の3つに分けることができます。

形のあるマーケティング対象は、食品や電気製品など店頭に並んでいるものや、機械部品や製造設備など企業から企業へ直接納品されるものなどがあります。

一方で、形のないマーケティング対象は、航空路線や鉄道などの交通手段のように機能を提供するものや、医療や教育など専門性の高い知識や環境を提供するものなどがあります。

これらのマーケティング対象は、組み合わせて提供されることも多くあります。しかし形のあるものと無いものでは特性が異なるため、区別することが優れたマーケティング戦略を生み出すことに繋がります。

またいずれにも分類しにくい特徴的な8つのタイプが、

  • 組織:企業、団体、チームなど
  • 人物:アーティスト、スポーツ選手、著名人、個人など
  • 地域:都道府県、観光地、産業集積地など
  • イベント:スポーツイベント、祭りなど
  • 権利:不動産の所有権、株式、債権など
  • 情報:名簿、統計データなど
  • 経験・体験:ワークショップ、農業・職業体験など
  • アイデア:ノウハウ、考え方など

です。

例えば観光地などの「地域」は、形のあるものとして誰かに売るものでもなければ、地域そのものがサービスというわけではありません。しかし「観光地のイメージ」や「地域ブランド」は、マーケティングによって消費者に印象付けることができます。

このように、マーケティングは直接値段が付いて売ったり買ったりするもの以外のものも、対象として考えます。

このページでは、マーケティングの対象となる代表的な事柄についてわかりやすく解説します。

マーケティングの対象とは?

マーケティングの対象とは、マーケティング活動の中心になる物や事柄のことです。

対象は一般的に、

  • 形のあるもの(有形財):製品・品物・物品
  • 形のないもの(無形財):サービス
  • 上記のどちらにも分類しにくいもの

に分類することができます。

マーケティング活動を行うためには、「何の」マーケティングをするのかを決めなければなりません。

同じ製品のマーケティングをする場合でも、ターゲット顧客を誰にするかによってマーケティングの対象は変化します。

例えば、ある工業製品のマーケティングを行うとします。

もし、その工業製品を現場で使う人たちをターゲットとするなら、製品そのものをマーケティングの対象として、機能や利便性を伝えるのが良いかもしれません。

しかし、その工業製品を管理メンテナンスする立場の人たちをターゲットとするなら、製品よりもその製品に付随するサービスや保証などをマーケティングの中心に据える方が望ましいはずです。

また、その工業製品を購入する会社の経営者が重要なターゲットになるなら、製品の機能やサービスよりも、それを販売する会社の取り組みや企業イメージをマーケティングの対象にする方が売れるかもしれません。

このように、同じ製品やサービスを売るとしても、ターゲットによってマーケティングの対象が大きく違います。マーケティングを通して売りたいものと、マーケティングの対象となるものは区別して考える必要があります。

有形財

マーケティングの対象として、典型的なものが「有形財(ゆうけいざい)」と呼ばれる形のあるものです。

有形財は、

  • 製品
  • 品物
  • 物品…など

と様々な形で呼ばれますが、「顧客に手渡す物品そのもの」をイメージするとわかりやすいと思います。

有形財は挙げるとキリがありませんが、小売店の棚に並んでいる食品や日用雑貨、量販店で展示されている家電製品、薬局で処方される薬、カタログに載っている医療機器や工業製品、自動車、家、高層ビルまで多岐に渡ります。

有形財は実体として手に取れる形で存在しているので、売る側としてマーケティング活動を考えやすい対象になります。

無形財

無形財(むけいざい)」は、サービスなどの形を持たないもののことです。

無形財は、バス・鉄道・航空機などを使って「移動する」という機能を提供したり、国家資格や専門性を持った人が特定の仕事を請け負ったり代行したりするものを指します。

誰かの代わりにやてくれる」ものを想像すれば、イメージしやすいかもしれません。

サービス産業は、ここ数十年でマーケティングの対象として拡大してきた分野です。先進国ではサービス産業がその他の産業を上回り、マーケティング活動が経済に大きく影響します。

下記の図は、日本のサービス産業のGDP(国内総生産)割合を「1970年」と「2010年」で比較したものになります。

ざっくりとした分け方ですが、

  • 赤色:有形財
  • 青色:無形財(サービスなど)

です。

日本のサービス産業のGDP割合推移

内閣府「サービス産業の生産性 2014年4月18日」資料1 p2 を参考に編集

日本は、高度経済成長期の後半にあたる1970年には、有形財を造り出す「製造業」がGDPの38%を占めていました。

参考 高度経済成長ウィキペディア

しかし近年(2010年)では、サービス産業(青色)が全体の71%を占めるまで拡大しています。サービス産業ではこの数十年で、新たに情報通信業(緑色)という区分も登場し、ますます拡大しています。

このサービス産業が拡大するという傾向は、世界中の先進国で見られるものです。

例えばアメリカは、1970年時点ですでにサービス産業が63%を占めていました。そして2010年には、サービス産業が79%にまで割合が増えています。(ただし、日本とは区分が異なるので、厳密な比較はできません。)

アメリカのサービス産業のGDP割合推移

内閣府「サービス産業の生産性 2014年4月18日」資料1 p3 を参考に編集

参考 PDF - サービス産業の生産性 2014年4月18日内閣府

このように、無形財をマーケティング対象とする機会は年々増加しており、このあと説明する「どちらにも分類しにくい」マーケティング対象と併せて、マーケティングの重要性が増しています。

どちらにも分類しにくいもの

先ほどご紹介した統計では、

  • サービス産業とそれ以外

などとハッキリと区分されていますが、「マーケティング対象」という視点から考えるとまだ大きすぎるかもしれません。

なぜならマーケティングの対象には、

  • 有形財と無形財が一体になっているもの
  • 有形財とも無形財のどちらでもないもの

が存在しているからです。

まず「有形財と無形財が一体になっているもの」については、どちらかが欠けると不完全になってしまうものです。

例えば「高級レストラン」を考えると、

  • 美味しい料理(有形財)
  • 高品質な接客サービス(無形財)

の2つの要素は、切っても切り離せません。つまり顧客に提供する価値として、有形財と無形財が一体となっているのです。

このような場合には、有形財・無形財のどちらかに無理やり分類することに意味がありません。2つを合わせて1つのものとして考えます。

そして「有形財とも無形財のどちらでもないもの」については、マーケティングの結果として物を売ったりサービスを提供したりする必要がない場合が該当します。

例えば、「企業」そのものをマーケティングする場合には、顧客に対して有形財も無形財も提供されません。その代わりに、顧客の持っている印象を変化させることができます。

これらの「どちらにも分類しにくい」マーケティング対象の中でも特徴的なものが、

  • 組織:企業、団体、チームなど
  • 人物:アーティスト、スポーツ選手、著名人、個人など
  • 地域:都道府県、観光地、産業集積地など
  • イベント:スポーツイベント、祭りなど
  • 権利:不動産の所有権、株式、債権など
  • 情報:名簿、統計データなど
  • 経験・体験:ワークショップ、農業・職業体験など
  • アイデア:ノウハウ、考え方など

の8つのタイプです。

特徴的な8タイプのマーケティング対象と具体例

ここからは先ほどご紹介した、有形財か無形財か単純に分類することができないマーケティング対象の中でも、特徴的なものを8つご説明します。

組織

組織は、

  • 企業
  • 団体
  • チーム

など、複数の個人の集合体のことです。

具体的には、

  • 企業
  • 学校
  • 病院
  • 美術館
  • 非営利団体
  • 宗教団体
  • スポーツチーム
  • 自治体
  • 政党
  • 政府

などなど、世の中に存在している様々な組織を指します。

例えば「環境に優しいイメージ」を企業に持たせたい時には、企業そのものをマーケティングの対象として、地球環境に対する企業価値をターゲット層に伝える必要があります。この場合には、企業の製品やサービスの価値を伝えるわけではなく、企業の取り組みや姿勢などを伝えることになります。

また組織のマーケティングでは、キャッチフレーズやコピーを使うこともあります。スポーツ用品メーカーの「ナイキ」の「Just Do it!」などは世界的に有名です。その他にも、企業名を聞いたら思い浮かぶキャッチフレーズがいくつも存在しています。

人物

人物は具体的に、

  • 歌手・アーティスト
  • スポーツ選手
  • 芸術家
  • 企業経営者
  • 医者
  • 弁護士
  • 投資家
  • 専門家
  • 個人事業主

などの個人を、マーケティングの対象とします。

個人のマーケティングでは、当然ながら個人を売買したり

個人のマーケティングでは、「セルフブランディング」などと呼ばれる手法で、自分自身をブランド化する方法があります。

参考 セルフブランディング - 検索結果Amazon.co.jp

しかし商業的に大きな売上が見込める場合には、企業やマーケティングのコンサルタントが個人のマーケティング活動を担うことも多くあります。

芸能事務所などは、人物をマーケティング対象とする代表的な業種です。またプロスポーツチームなどは、チーム自体のマーケティングを行いながらも、選手個人のマーケティングを並行して行うことがあります。

地域

地域とは具体的に、

  • 都道府県
  • 市区町村
  • 観光地
  • 産業集積地

などがあります。

一番イメージしやすいのは「観光地」だと思います。全国各地の観光地は、その地域に住んでいる人たちや企業が共有する地域資源です。その地域資源を共同でマーケティングすることで、観光地の価値を伝えることができます。

また過疎化に悩む市区町村などでは、移住者を募集するためにマーケティングを行います。そして人だけでなく産業を発展させるために、産業が集積するエリアを造成して企業誘致を行います。

イベント

イベントとは具体的に、

  • スポーツイベント
  • 音楽イベント
  • 宗教イベント
  • 伝統行事
  • お祭り
  • 学園祭
  • 展示会
  • 講演会・セミナー

などがあります。

規模の大きいものでは、オリンピックやワールドカップなど国を挙げてマーケティングを行うイベントが存在します。このような規模の大きいイベントは、単一組織や個人ではなく複数の企業が共同でマーケティング活動を行います。

逆に比較的規模の小さいものでは、専門家の講演会やセミナーのマーケティング活動などが挙げられます。

権利

権利とは、

  • 不動産の所有権
  • 有形財の使用権
  • 株式
  • 投資信託
  • 債権
  • その他金融商品

などの様々な権利のことです。

例えば「日本国債(日本政府の公債)」は、日本政府に貸したお金を返してもらう「権利」なので、形はありません。また権利が与えられたとしても、日本政府からサービスを提供されるわけでもありません。

政府や金融機関は「日本国債」を対象にマーケティングを行いますが、それは、

  • 政府:国の財政を安定させるため
  • 金融機関:金融サービスを提供して利益を得るため

であり、「日本国債」自体が物やサービスというわけではないのです。

情報

情報とは、

  • 個人情報
  • 統計データ
  • 予測データ

などのことです。

2000年代にインターネットが普及してからは、以前よりも「情報」が手に入りやすくなり、ビジネスでの重要性も格段に高まりました。

情報も形がなく、情報そのものからサービスが提供されるわけではありません。(「情報を提供する」サービスとは区別します。)しかし情報は使い方次第で高い価値を生み出すため、高値で取引されることも多くあります。

例えばマーケティングの調査会社や研究機関などは、調査や研究結果から原料となる情報を手に入れます。そしてさらに統計分析や、専門家の解釈を加えることでより高い情報へと加工します。

加工された価値の高い情報はマーケティングの対象となり、情報を必要とする適切なターゲットに価値が伝われば利益を生み出します。

経験・体験

経験・体験とは、

  • テーマパークのアトラクションや演出
  • ワークショップ
  • 農業体験
  • 就業体験

など、顧客の経験や体験として記憶に残るもののことです。

テーマパークでは、様々なアトラクションや演出で「非日常」を体験することができます。またワークショップでは、実際に手や体を動かすことで参加者が新しい経験を得ることができます。農業体験や就業体験も同様に、参加者が経験をすること自体が価値になります。

これらの経験や体験の価値を顧客に伝えることが、マーケティングの活動につながります。

また上記で挙げた例だけではなく、先ほど紹介した「イベント」などでも経験や体験を得ることができます。マーケティング活動をイベントそのものに焦点を当てるか、そこから得られる経験や体験に焦点を当てるかによって、マーケティングの内容が大きく変化します。

アイデア

アイデアとは、

  • ノウハウ
  • 考え方

などのことです。

例えば、薬物乱用を防止するために厚生労働省が主催した「ダメ。ゼッタイ。」普及活動は、アイデアがマーケティングの対象です。「薬物を使用するのはダメだ」という考え方を、ターゲットとする層に伝えるために、一連のマーケティング活動を行って成果を上げました。

マーケティングの対象まとめ

マーケティングの対象となる事柄は、

  • 形のあるもの(有形財):製品・品物・物品
  • 形のないもの(無形財):サービス

だけでなく、どちらにも分類しにくい、

  • 組織:企業、団体、チームなど
  • 人物:アーティスト、スポーツ選手、著名人、個人など
  • 地域:都道府県、観光地、産業集積地など
  • イベント:スポーツイベント、祭りなど
  • 権利:不動産の所有権、株式、債権など
  • 情報:名簿、統計データなど
  • 経験・体験:ワークショップ、農業・職業体験など
  • アイデア:ノウハウ、考え方など

などがあることをご紹介しました。

わかっていても「マーケティング」と言えば、物やサービスを対象と思い浮かべてしまいがちです。しかし、物やサービス以外にも、様々なマーケティングの対象が存在しています。

もし物やサービスのマーケティングをしていて行き詰まったら、それらの周辺に存在している有形財と無形財のどちらにも分類できない」マーケティング対象に視点を移してみると、新しい発見があるかもしれません。

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