特徴的な8タイプのマーケティング対象と具体例
ここからは先ほどご紹介した、有形財か無形財か単純に分類することができないマーケティング対象の中でも、特徴的なものを8つご説明します。
組織
組織は、
- 企業
- 団体
- チーム
など、複数の個人の集合体のことです。
具体的には、
- 企業
- 学校
- 病院
- 美術館
- 非営利団体
- 宗教団体
- スポーツチーム
- 自治体
- 政党
- 政府
などなど、世の中に存在している様々な組織を指します。
例えば「環境に優しいイメージ」を企業に持たせたい時には、企業そのものをマーケティングの対象として、地球環境に対する企業価値をターゲット層に伝える必要があります。この場合には、企業の製品やサービスの価値を伝えるわけではなく、企業の取り組みや姿勢などを伝えることになります。
また組織のマーケティングでは、キャッチフレーズやコピーを使うこともあります。スポーツ用品メーカーの「ナイキ」の「Just Do it!」などは世界的に有名です。その他にも、企業名を聞いたら思い浮かぶキャッチフレーズがいくつも存在しています。
人物
人物は具体的に、
- 歌手・アーティスト
- スポーツ選手
- 芸術家
- 企業経営者
- 医者
- 弁護士
- 投資家
- 専門家
- 個人事業主
などの個人を、マーケティングの対象とします。
個人のマーケティングでは、当然ながら個人を売買したり
個人のマーケティングでは、「セルフブランディング」などと呼ばれる手法で、自分自身をブランド化する方法があります。
参考
セルフブランディング – 検索結果Amazon.co.jp
しかし商業的に大きな売上が見込める場合には、企業やマーケティングのコンサルタントが個人のマーケティング活動を担うことも多くあります。
芸能事務所などは、人物をマーケティング対象とする代表的な業種です。またプロスポーツチームなどは、チーム自体のマーケティングを行いながらも、選手個人のマーケティングを並行して行うことがあります。
地域
地域とは具体的に、
- 国
- 都道府県
- 市区町村
- 観光地
- 産業集積地
などがあります。
一番イメージしやすいのは「観光地」だと思います。全国各地の観光地は、その地域に住んでいる人たちや企業が共有する地域資源です。その地域資源を共同でマーケティングすることで、観光地の価値を伝えることができます。
また過疎化に悩む市区町村などでは、移住者を募集するためにマーケティングを行います。そして人だけでなく産業を発展させるために、産業が集積するエリアを造成して企業誘致を行います。
イベント
イベントとは具体的に、
- スポーツイベント
- 音楽イベント
- 宗教イベント
- 伝統行事
- お祭り
- 学園祭
- 展示会
- 講演会・セミナー
などがあります。
規模の大きいものでは、オリンピックやワールドカップなど国を挙げてマーケティングを行うイベントが存在します。このような規模の大きいイベントは、単一組織や個人ではなく複数の企業が共同でマーケティング活動を行います。
逆に比較的規模の小さいものでは、専門家の講演会やセミナーのマーケティング活動などが挙げられます。
権利
権利とは、
- 不動産の所有権
- 有形財の使用権
- 株式
- 投資信託
- 債権
- その他金融商品
などの様々な権利のことです。
例えば「日本国債(日本政府の公債)」は、日本政府に貸したお金を返してもらう「権利」なので、形はありません。また権利が与えられたとしても、日本政府からサービスを提供されるわけでもありません。
政府や金融機関は「日本国債」を対象にマーケティングを行いますが、それは、
- 政府:国の財政を安定させるため
- 金融機関:金融サービスを提供して利益を得るため
であり、「日本国債」自体が物やサービスというわけではないのです。
情報
情報とは、
- 個人情報
- 統計データ
- 予測データ
などのことです。
2000年代にインターネットが普及してからは、以前よりも「情報」が手に入りやすくなり、ビジネスでの重要性も格段に高まりました。
情報も形がなく、情報そのものからサービスが提供されるわけではありません。(「情報を提供する」サービスとは区別します。)しかし情報は使い方次第で高い価値を生み出すため、高値で取引されることも多くあります。
例えばマーケティングの調査会社や研究機関などは、調査や研究結果から原料となる情報を手に入れます。そしてさらに統計分析や、専門家の解釈を加えることでより高い情報へと加工します。
加工された価値の高い情報はマーケティングの対象となり、情報を必要とする適切なターゲットに価値が伝われば利益を生み出します。
経験・体験
経験・体験とは、
- テーマパークのアトラクションや演出
- ワークショップ
- 農業体験
- 就業体験
など、顧客の経験や体験として記憶に残るもののことです。
テーマパークでは、様々なアトラクションや演出で「非日常」を体験することができます。またワークショップでは、実際に手や体を動かすことで参加者が新しい経験を得ることができます。農業体験や就業体験も同様に、参加者が経験をすること自体が価値になります。
これらの経験や体験の価値を顧客に伝えることが、マーケティングの活動につながります。
また上記で挙げた例だけではなく、先ほど紹介した「イベント」などでも経験や体験を得ることができます。マーケティング活動をイベントそのものに焦点を当てるか、そこから得られる経験や体験に焦点を当てるかによって、マーケティングの内容が大きく変化します。
アイデア
アイデアとは、
- ノウハウ
- 考え方
などのことです。
例えば、薬物乱用を防止するために厚生労働省が主催した「ダメ。ゼッタイ。」普及活動は、アイデアがマーケティングの対象です。「薬物を使用するのはダメだ」という考え方を、ターゲットとする層に伝えるために、一連のマーケティング活動を行って成果を上げました。
マーケティングの対象まとめ
マーケティングの対象となる事柄は、
- 形のあるもの(有形財):製品・品物・物品
- 形のないもの(無形財):サービス
だけでなく、どちらにも分類しにくい、
- 組織:企業、団体、チームなど
- 人物:アーティスト、スポーツ選手、著名人、個人など
- 地域:都道府県、観光地、産業集積地など
- イベント:スポーツイベント、祭りなど
- 権利:不動産の所有権、株式、債権など
- 情報:名簿、統計データなど
- 経験・体験:ワークショップ、農業・職業体験など
- アイデア:ノウハウ、考え方など
などがあることをご紹介しました。
わかっていても「マーケティング」と言えば、物やサービスを対象と思い浮かべてしまいがちです。しかし、物やサービス以外にも、様々なマーケティングの対象が存在しています。
もし物やサービスのマーケティングをしていて行き詰まったら、それらの周辺に存在している「有形財と無形財のどちらにも分類できない」マーケティング対象に視点を移してみると、新しい発見があるかもしれません。