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マーケティングマイオピアとは?近視眼を避ける方法と具体例

マーケティングマイオピア(Marketing myopia)

マーケティングマイオピア(近視眼)の具体例

マーケティングマイオピアの具体例としてよく挙がるのが、

  • アメリカ鉄道業界:事業を「輸送・移動」として考えることができず衰退した
  • アメリカ映画業界:事業を「エンターテイメント」として考えることができず苦境に陥った

の2つの事例です。

論文内ではさらっと書かれているだけなのですが、理解を深めるために時代背景も併せて解説したいと思います。

アメリカ鉄道業界が衰退した例

まずは当時のアメリカの鉄道業界の状況を説明します。

この論文が書かれた1960年頃は、アメリカの鉄道業界は急速に衰退していました。

その理由は、

  • アメリカでは第二次世界大戦前(~1939年)にモータリゼーション(車社会化)が完了していた
  • 第二次世界大戦後(1945年〜)に航空輸送や自動車輸送が大きく発展した

ためです。

参考 モータリゼーション#アメリカ合衆国ウィキペディア

その結果、それまで鉄道業界が受け皿となっていた旅客や輸送の需要が、自動車や航空機に取って代わられてしまいました。

この論文が書かれた頃には、経営の厳しさから多くの鉄道会社が旅客サービスから撤退しており、鉄道旅客事業を維持するために「全米鉄道旅客公社(通称:Amtrak、アムトラック)」が生まれました。

参考 アムトラックウィキペディア

こういった時代背景の中、レビット教授が鉄道業界の衰退理由として「マーケティングマイオピア」に陥った可能性を挙げています。

レビット教授は、アメリカの鉄道業界は「鉄道事業」への製品志向が強すぎたため、航空輸送や自動車輸送の発展や、電話の普及(移動が不要になる)などの変化に対応できなかったと指摘します。

もし鉄道業界が顧客志向の考え方で「移動」という問題を解決する「輸送事業」と考えていれば、現在のような鉄道業界の衰退はなかったのかもしれません。

この点、日本の鉄道業界はアメリカとは大きく異なり、不動産などの都市開発や、バスやタクシーなどの電車以外の公共交通も手がけることで発展しています。「輸送事業」どころか生活インフラそのものを提供することで、日本の鉄道会社は大きく成長しました。

アメリカ映画業界が苦境に立たされた例

もう一つの事例は、アメリカの映画業界です。

論文が書かれる前の1950年頃は、アメリカの一般家庭にテレビが普及したことで、それまで活況だった映画館の動員数がどんどん減ってました。

参考 映画史#1950年代ウィキペディア

テレビ番組自体も発展が著しく、多くの映画館が廃業に追い込まれたようです。

この時ハリウッドの映画業界は、テレビ業界を同じ「エンターテイメント事業」と考えることができずに、「映画業界」と「テレビ業界」のように線引きをして、顧客を奪う新しい勢力として対抗していたようです。

しかし顧客から見れば、どちらも数ある娯楽の一つであり、お互いに潰し合うことは望ましくありません。映画業界の企業が、「映画」という製品に対する「製品志向」が強かったために、マーケティングマイオピアのような状態に陥ったと言えます。

これは2010年代後半に動画サイト「YouTube」や動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」や「Amazon Prime Video(プライムビデオ)」などが影響力を拡大した際に、テレビ業界が敵意を持って対抗しようとしたことにも似ています。

その他の例

レビット教授の論文には、鉄道業界や映画業界の例の他に、

  • エネルギー業界と考えることができなかった石油業界の例
  • 化学繊維の登場でブームが過ぎ去ったウールのドライクリーニング事業の例
  • 白熱電球の登場で衰退したケロシン電灯の例
  • スーパーマーケットの登場で衰退した街の食品雑貨店の例

などなど、様々なものが登場します。

これらの考えは、事業領域の「物理的定義」「機能的定義」にも共通する部分なので、こちらの記事もご覧ください。

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