条件ウォンツ
条件ウォンツとは、消費者が解決する方向性を選別するための条件のことです。
例えば「枕が欲しい」という基本ウォンツを持っている消費者がいても、枕ならなんでもいい、というわけではありません。
「ふかふかの枕が欲しい」消費者もいれば「硬い枕が欲しい」と思っている消費者もいます。また「安いウレタンの枕が欲しい」という消費者もいれば「高級な羽根枕が欲しい」という消費者だっています。
これらの基本ウォンツに対する条件付けのことを「条件ウォンツ」と言います。
条件ウォンツの内容は多岐にわたり、対象とするターゲット層によっても条件の幅は大きく変わってきます。
条件ウォンツの幅と数
そして消費者がその商品やサービスに対して、
- こだわりが弱く知識が少ないほど条件ウォンツが少なくなる
- こだわりが強く知識が多いほど条件ウォンツが多くなる
という傾向があります。
これはマーケティングの用語としては「高関与(関与が高い)」と表現されます。
例えば、
- どんな枕でも寝ることができる消費者
- 自分で枕を買ったことがない消費者
などは枕に対する関与が低く、条件ウォンツそのものも多くありません。
なぜなら「どんな枕でも寝ることができる消費者」は、枕を選ぶ必要がないので「こだわり」がほとんど無いからです。
また「自分で枕を買ったことがない消費者」も、同様に関与が低い状態です。自分で選んだことがない消費者は、そもそもこの世の中にどんな枕が存在しているかも知らないですし、枕に対する知識そのものが不足しています。
これらの「低関与(関与が低い)」は、条件そのものがあまり思いつかないため、条件ウォンツは少なくなります。
一方で、
- 特定のタイプの枕でしか寝られない消費者
- 何度も自分で枕を購入したことのある消費者
などは枕に対する関与が高く、条件ウォンツの幅が広く数も多くなります。
「特定のタイプの枕でしか寝られない消費者」は、自分の体に合う枕を知っているため、素材・形・大きさなどの条件が付きます。
また「何度も自分で枕を購入したことのある消費者」は、寝具売り場で様々な種類の枕や価格帯の枕を見ているはずなので、条件ウォンツの引き出しも多くなります。
このような「高関与(関与の高い)」消費者に対しては、マーケティングにおいて狙いを外さないように、条件ウォンツを十分に調査しておく必要があります。
消費者教育による条件ウォンツの形成
先ほど説明したような条件ウォンツが多い消費者に対しては、その条件を理解して、条件に合う商品やサービスを提案することで、購買につなげることが可能です。
しかし逆に、条件ウォンツが少ない、または条件ウォンツが無い消費者をマーケティングのターゲットとする場合には、
- 基本ウォンツを価格で攻める
- 自社に有利な条件ウォンツを形成させる
という2つのアプローチ方法があります。
まず「基本ウォンツを価格で攻める」というアプローチは、価格競争に陥って体力勝負になる可能性があります。
顧客は商品やサービスに対して「こだわり」が無く条件ウォンツが少ないため、「安ければ何でもいい」という状態になりやすいと言えます。
例えば、衛生用品(トイレットペーパーなど)や洗剤(洗濯用洗剤、台所用洗剤など)の日用品は、消費者の条件ウォンツが少ないため、価格競争に陥りやすくなります。
もし消費者が「汚れが落ちれば何でもいい」と考えてしまうのであれば、価格以外の部分で差別化することが難しくなります。
しかし消費者を教育することによって「自社に有利な条件ウォンツを形成させる」というアプローチもあります。
例えば先ほどの洗濯用洗剤では、各社がCMで様々な特徴を消費者に伝えています。汚れがよく落ちる、悪臭を防ぐ、色が鮮やかになる、香りが良いなど、商品から得られるメリットを伝えることで消費者に知識を与えています。
このようにCMなどで消費者を教育することで、消費者に条件ウォンツを形成させ、自社が有利になる土俵へ誘導することも可能です。
作り手の思い込みによる誤解
ここで注意しなければならないのが、消費者の条件ウォンツの変化です。
作り手・売り手が持っている、
- 消費者は選ぶときに〇〇を気にしている
というような情報は、時代の変化とともに陳腐化していきます。
しかし過去の成功体験によって、想定する条件ウォンツのが固定されたまま失敗してしまう企業も存在しています。
そのため製品開発をする側は、常に時代の変化を意識し、マーケティング調査によって消費者の持つ条件ウォンツの変化に敏感にならなければなりません。