知覚プロセスとは?選択的注意・選択的歪曲・選択的記憶

知覚プロセスとは、

  • 与えられた情報を選別して意味のあるものとして覚えること

であり、

  • 選択的注意:人は特定の刺激にだけ選択的に注意を向ける
  • 選択的歪曲:人は先入観に合うように情報を解釈する
  • 選択的記憶:人は自分の態度や信念を裏付ける情報を記憶する傾向がある

という3つの知覚プロセスが存在しています。

マーケティングでは、消費者が知覚したことが行動に影響を与えます。逆に言えば、いくら消費者に情報を伝えようとしても、消費者がその情報を知覚しなければ、何も伝わっていないことと同じです。

ここでは3つの知覚プロセスについて、わかりやすく説明します。

知覚プロセスとは?

知覚プロセスとは、その人が与えられた情報を選別し、情報をグループ化し、それらを意味のあるものとして解釈し、必要な情報だけを記憶に留めることです。

マーケティングを行う上では、消費者の目の前に情報を示すだけでなく「知覚」させることが重要になります。

なぜなら、

  • 顧客は自分が必要な情報にしか興味を示さず
  • 情報を受け取ったとしても都合の良いようにしか解釈せず
  • 顧客が覚えておきたい情報しか記憶にとどめない

からです。

そして情報を知覚しなければ、消費者は購買などの行動に移すこともありません。

世の中には膨大な情報が溢れていて、誰もが無意識のうちに知覚プロセスによって情報を取捨選択しています。消費者の目には常にたくさんの情報が晒されますが、すべての情報を記憶することはありません。

あなたの会社の商品やサービスが消費者の目の前にあったとしても、「知覚」しているかどうかはわかりません。それは競合他社も同じです。

また、同じ情報を与えたとしても、消費者一人ひとりで受け取り方は様々です。広告の情報を信用できると感じる消費者もいれば、全く信用しようとしない消費者もいます。接客スタッフの細やかな対応に好感を持つ消費者もいれば、鬱陶しく感じる消費者もいます。

このような消費者の反応を理解するためには、

  • 選択的注意:人は特定の刺激にだけ選択的に注意を向ける
  • 選択的歪曲:人は先入観に合うように情報を解釈する
  • 選択的記憶:人は自分の態度や信念を裏付ける情報を記憶する傾向がある

という3つの知覚プロセスを理解する必要があります。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p232より)

選択的注意:カクテルパーティー効果

選択的注意とは、

  • 人はすべての情報を処理できないため特定の刺激にだけ選択的に注意を向ける

という知覚プロセスで、英語では「Selective attention(セレクティブ・アテンション)」と呼ばれます。

この選択的注意で有名なのが「カクテルパーティー効果」で、

  • 騒がしいパーティーの場でも自分の名前や興味のある話題は聞き取れる

というものです。視覚的にも聴覚的にも情報に溢れるパーティーの場でも、人は無意識のうちに自分が必要としている情報に注意を向ける傾向があります。

マーケティング活動においても、マーケターが消費者に情報を提供する場合には、ターゲットとする消費者から注意を向けてもらわなければいけません。そのためには、ターゲットがどのような刺激に対して注意を向けるのかを知っておく必要があります。

そのヒントとなるのが、

  • 人は現在のニーズに関係のある刺激に反応する傾向がある
  • 人は予想していた刺激に反応する傾向がある
  • 人は通常よりも刺激の強いものに反応する傾向がある

という研究結果です。

ニーズに関係のある刺激に反応する傾向

ニーズとは、

  • 消費者が持つ課題の解決や目的を達成する必要性

のことです。

消費者はニーズと全く関係のない情報にはなかなか反応しません。逆に言えば、消費者のニーズを理解した上で、そのニーズに関連する情報を与えれば、情報に反応してくれる確率は大きく高まります。

例えば、街中で「お腹が空いた」「空腹を満たしたい」と思っている消費者には、飲食店の看板やのぼり、美味しそうな食べ物の匂いなどには強く反応します。

街には様々な情報があふれていますが、お腹が空いている時には、空腹を満たすこと以外の情報は目に入りにくくなります。そのため、看板を見かけた飲食店の隣の店が何だったかまでは、記憶に残ることがありません。

予想していた刺激に反応する傾向

先ほど例に挙げた「空腹を満たしたい」というニーズを持っている消費者が、カフェで軽食を取ろうとしたとします。

多くの消費者は、カフェにはコーヒー類とサンドイッチやケーキなどの軽食が置いてあるはずだ、と「予想」することが多いでしょう。

そのため、お店に入ってメニューにコーヒーやサンドイッチがあれば、それらの情報が目に入り、軽食メニューの写真やコーヒーの匂いなどの予想していた刺激に強く反応します。

その一方で、お店の入り口に並べてある雑貨や、レジ横に置いてあるライブハウスのチラシには気づかないかもしれません。なぜなら、コーヒー類や軽食以外のものが置いてあると予想していない消費者もいるからです。

もちろん消費者が「このお店は雑貨も売っているのか」と認識すれば、次からは雑貨からの刺激にも反応する可能性は高まります。

通常よりも刺激の強いものに反応する傾向

ニーズに関係があって、予測していた情報であっても、消費者はより刺激の強い情報に反応します。

先ほどのカフェに立ち寄った消費者の目の前に、「通常のメニュー」と「期間限定メニュー」があったとしたら、おそらく「期間限定メニュー」の方により強く反応するでしょう。

なぜなら、いつでも注文できるメニューより「期間限定」の方が稀少性が高いため、情報としての刺激が強いからです。他にも「試飲」や「試食」なども通常よりも強い刺激となるため、消費者が反応してくれる可能性は高まります。

しかし注意しなければならないのは「強い刺激への慣れ」です。

例えば小売店などで、「売り尽くしセール」や「閉店セール」を行えば多くの消費者が目に止めるかもしれません。しかし毎年「閉店セール」をやっているお店は、誰も見向きしなくなってしまいます。

選択的歪曲

消費者は与えられた情報をそのまま受け取るわけではありません。

消費者は、

  • 与えられた情報を自分の都合のいいように解釈する

ことが知られています。これを「選択的歪曲(Selective distortion、セレクティブ・ディストーション)」と呼びます。

この存在を裏付ける実験の一つが「ブラインドテスト」です。ブラインドテストとは、被験者に一切の情報を与えずに、商品やサービスを選択してもらう実験のことです。

具体例としては、2010年代に日本コカコーラが行った「綾鷹」というペットボトルの緑茶のプロモーションがわかりやすいかもしれません。

「綾鷹」のCMでは、板前や舞妓などを100人ほど集めて、複数のメーカーのペットボトルの緑茶を飲み比べてもらうという内容です。

被験者にはどのお茶がどのブランドなのかは明かされておらず、「選ばれたのは、綾鷹でした。」というフレーズとともに、ブラインドテストで綾鷹が選ばれたことが示されます。

これは「選択的歪曲」を可能な限り避ければ「綾鷹」が選ばれるということです。しかし逆に言えば、当時の綾鷹は消費者に「選択的歪曲」されてしまうと、他のペットボトル緑茶ブランドに勝てなかったということになります。

1990年にアメリカで行われた実験では、被験者に「ダイエット・コーク」と「ダイエット・ペプシ」を目隠しで味見をさせたところ、好みが50%ずつに別れたのに対して、ブランド名を明かした状態で味見をさせると、被験者の65%が「ダイエット・コーク」を選んだという結果もあります。

このように、消費者は自分が好きと思っているものに対しては、「味」などの情報でさえも歪曲して解釈することがあります。

製品やサービスだけではありませんが、人は自分が良いと感じているものに対しては、どんな情報でも好意的に理解する傾向があります。そのため、顧客満足顧客ロイヤリティを高めることは、顧客の選択的歪曲を機能させて、マーケティング活動を有利に進める要因になります。

選択的記憶

消費者は情報の刺激に反応し、情報を解釈したとしても、それが必ず記憶に残るわけではありません。

その一方で、消費者自身の「信念」「態度」「価値観」などに沿った情報は、覚えている傾向にあります。このことを「選択的記憶(Selective memory、セレクティブ・メモリー)」と呼びます。

例えば、ある消費者がいずれも1度だけ訪れたことのある、

  • 料理も接客も良くてまた行きたいと思っているレストラン
  • 料理も接客もひどくて二度と行きたくないレストラン
  • 何も感じなかったレストラン

があったとすれば、「良くてまた行きたい」レストランや「ひどくて二度と行きたくない」レストランの記憶は強く残るはずです。

その一方で、「何も感じなかった」レストランについては、時間が経てばそもそもそんなレストランがあったかどうかすら記憶に無いことが多いでしょう。

このようにどのレストランも1度しか足を運んでいないにもかかわらず、消費者自身の「信念」「態度」「価値観」に引っかかる部分があるレストランは、良くも悪くも記憶に残ります。

炎上マーケティング

おそらくほとんどのマーケターは、消費者の持つブランドに対する印象を悪くしたくないので、顧客満足が高まるような情報や価値の提供を行い、記憶に残るように努めると思います。

しかし選択的記憶を逆手に取って「炎上マーケティング(炎上商法)」を行うマーケターも存在しています。

炎上マーケティングとは、

  • 消費者の否定的な感情を意図的に作り上げて知名度を高めるマーケティング手法

のことです。

参考 炎上マーケティングウィキペディア

この炎上マーケティングは、消費者の「信念」「態度」「価値観」などに反する情報を与えることで、選択的記憶を促進させます。

例えば「毒舌キャラ」を演じているタレントや芸能人などは、SNSや公共の場で否定的な発言や行動を繰り返して知名度を向上させようとします。毒舌な物言いがネットで話題になったり、番組内での発言がメディアで取り上げられたりすれば、消費者の記憶に顔や名前などが残るので、結果的にタレントとしての価値が高まることがあります。

しかしこの手法は、失敗するとブランドを毀損するという危険性も秘めています。

そのため、マイナスの印象でも価値が高まる(例えば、毒舌タレントという立場が番組出演者に多様性をもたらして番組そのものの価値が高まることや、毒舌政治家という立場が一部有権者の支持を得て選挙の当選確率が高まること)などの利点がない限りは、リスクに見合う効果を得ることができません。

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