だいぞう
スイッチングコストとは、
- ある製品やサービスから別のものに切り替えるために必要な顧客の負担
のことです。
「スイッチコスト」「切り替えコスト」「切り替え費用」「スイッチ障壁」「切り替え障壁」などとも呼ばれ、英語では「Switching barriers(スイッチング・バリア、切り替え障壁)」や「Switching costs(スイッチング・コスト、切り替え費用)」と表現します。
経営戦略の視点では、
- スイッチングコストが低い製品:顧客の奪い合いになりやすい
- スイッチングコストが高い製品:顧客から長期的に利益が得られる
という特徴があります。
そのため、企業は自社の製品やサービスのスイッチングコストを顧客の負担にならない程度まで高める施策を考えることが必要です。
ここではスイッチングコストについて、わかりやすく解説します。
スイッチングコストとは
スイッチングコストとは、顧客が使用している製品やサービスから、別の製品やサービスに切り替える場合に発生する負担のことです。
このスイッチングコストは、
- 金銭的コスト:他の製品やサービスに切り替えるために必要な金銭的な負担
- 手続き(物理的)コスト:他の製品やサービスに切り替えるための手間暇
- 関係性(心理的)コスト:他の製品やサービスとの関係性を再構築する負担
の3つのタイプに分けることができます。
例えば、ある人がいつも通っているスポーツジムに不満があって、別のスポーツジムに変更しようと考えようとしていたとします。
しかし、別のスポーツジムに切り替えるためには、
- 手続きコスト:新しく通うスポーツジムの設備や料金の情報収集
- 手続きコスト:新しく通うスポーツジムの比較検討
- 手続きコスト:いま通っているスポーツジムの解約手続き
- 関係性コスト:いま通っているスポーツジムの仲の良いスタッフへの挨拶
- 関係性コスト:いま通っているスポーツジムのジム仲間への挨拶
- 手続きコスト:新しく通うスポーツジムの入会手続き
- 金銭的コスト:新しく通うスポーツジムの入会金の支払い
- 手続きコスト:新しく通うスポーツジムの設備の使い方を覚える
- 手続きコスト:新しく通うスポーツジムのルールに慣れる
などなど、様々な負担が「スイッチングコスト」として存在します。
そのため、その人が実際に行動を起こすには、新しい別のジムに通うことで解消される不満や、新たに得られる価値の合計が「スイッチングコスト」を上回っている必要があります。
つまり、
- 切り替えで新たに得られる価値の合計 > スイッチングコスト
でなければ、切り替えることは難しいかもしれません。
売り手にとってのメリット
売り手(企業側)にとっては、
- 囲い込みによる顧客生涯価値(LTV)の向上
というメリットがあります。
顧客生涯価値(Life Time Value)とは、その顧客が生涯にわたってもたらす、長期的な利益の合計のことです。
顧客をうまく囲い込むことができれば、より長い期間、製品やサービスを使い続けてもらうことができるので、一人の顧客から得ることができる利益はより大きくなります。
ちなみに、この囲い込みのことを「ロックイン」と呼び、長期にわたって顧客との関係性を保つことを「ロックイン効果」と呼びます。
例えば先ほどのスポーツジムで考えると、
- 会員の継続期間が平均1年のスポーツジム(顧客が平均1年で退会する)
と、
- 会員の継続期間が平均3年のスポーツジム(顧客が平均3年で退会する)
であれば、会員の継続期間が長い平均3年のスポーツジムの方が、より大きな利益を上げることができます。
なぜなら、3年分の売上を作るためには、
- 継続期間平均1年のスポーツジム:広告費3回分、事務処理コスト3回分
- 継続期間平均3年のスポーツジム:広告費1回分、事務処理コスト1回分
が必要であるため、スポーツジム側のコストが3分の1で済むからです。
つまりスイッチングコストを高めることによって、顧客の離脱を防ぎ、製品やサービスを長く使ってもらうことによって、より大きな利益を見込むことができるのです。
売り手にとってのデメリット
しかしスイッチングコストの高さは、売り手にとってのデメリットにもなります。
例えばあるスポーツジムが、
- 退会費用:100万円
だったらどうでしょう?
どんなにサービスが素晴らしかったとしても、退会しようと思った時に100万円かかると考えると、
- 「入会するのは辞めておこう…。」
と顧客は考えてしまうはずです。
このような例は極端ですが、高いスイッチングコストを設けることは、長期間にわたる顧客の囲い込みにつながる一方で、スイッチングコストの高さを認識されると、顧客にとっての大きな壁になってしまうことも理解しておく必要があります。