フリークエンシープログラム(Frequency Programs)とは、
- 商品やサービスの利用頻度(フリークエンシー)に応じて顧客に特典を与える仕組み
のことで、代表的な種類としては、
- フリークエント・フライヤーズ・プログラム(FFP)
- フリークエント・ゲスト・プログラム(FGP)
- フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)
などが存在しています。
フリークエンシープログラムは顧客ロイヤリティプログラムの一種であり、ワントゥワンマーケティングなどのCRM(顧客関係管理)で利用されます。
フリークエンシープログラムの実施データを使ってRFM分析を行うことで、競合他社への乗り換え(スイッチング)を防ぐだけでなく、LTV(ライフタイムバリュー)の向上も期待することができます。
具体的には、
- 航空会社のマイレージサービス
- 宿泊施設の宿泊ポイントサービス
- クレジットカードのポイント還元サービス
- 飲食店のスタンプカード
など、様々な業態で採用されています。
ここではフリークエンシープログラムについて、わかりやすく解説します。
フリークエンシープログラムとは?
フリークエンシープログラムとは、個別の顧客の購入回数や金額に合わせて特典を与える施策の総称のことで、
- フリークエント・フライヤーズ・プログラム(FFP):航空会社の移動距離
- フリークエント・ゲスト・プログラム(FGP):宿泊回数
- フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP):来店回数と金額
などの代表的なものが一般的に普及しています。
これらのフリークエンシープログラムを実施する理由としては、
- お得意様とそうでない顧客を見分ける
- 顧客のリピート利用を促す
- 競合他社への乗り換えを防ぐ
などが考えられます。
またフリークエンシープログラムによって集められたデータは、RFM分析の情報源となります。
RFM分析とは、
- Recency(リーセンシー):新近性
- Frequency(フリークエンシー):頻度
- Monetary amount(マネタリー・アマウント):金額
の3つの要素で顧客の分析を行い、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を向上させるためのマーケティング手法です。
このRFM分析の結果に基づいて施策を行うことで、
- 顧客との関係性強化
- 顧客に対するワントゥワンマーケティングの実現
- 顧客のLTV(ライフタイムバリュー)の向上
などを期待することができます。
フリークエント・フライヤーズ・プログラム(FFP)
フリークエンシープログラムの歴史は、1980年代初頭までさかのぼります。そしてフリークエンシープログラムを初めて大規模に採用したのが「アメリカン航空」と言われています。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p199 参照)
アメリカン航空は、頻繁に航空機を利用する顧客を「マイレージ」という形で、移動距離(マイル単位)に応じて顧客を区別しました。
長距離を移動したり短距離を高い頻度で移動する顧客は、移動距離である「マイレージ」が蓄積され、マイレージの量に応じて様々なサービスが無料で受けられることが特徴です。
このような航空機の移動距離を使ったフリークエンシープログラムのことを、
- フリークエント・フライヤーズ・プログラム(Frequent Flyers Programs)
と呼びます。ちなみに「フライヤーズ(Flyers)」とは「航空旅客機の乗客」という意味です。一般的には「マイレージプログラム」と呼ばれているものになります。
以下は現在のアメリカン航空のFFPである「AAdvantageプログラム」のページです。

アメリカン航空ホームページのフリークエント・フライヤーズ・プログラム(参照 2019年7月29日)
参考
AAdvantageプログラムAmerican Airlines
このようなマイレージプログラムは、近年ではほぼ全ての航空会社が採用しており、特別なものではなくなりました。そのため、顧客が無料で得られるサービスの競争は、航空会社単位だけでなく航空会社の提携グループである「アライアンス」単位でも激化しています。
航空会社は「マイレージ」が貯まるのが普通ですが、同じように公共性の高い移動手段である「鉄道」や「バス」などにはフリークエンシープログラムがほとんどありません。
その理由としては、航空機は「1つの路線」を複数社が飛ぶのに対し、鉄道やバスなどは「1つの路線」を1社が独占している場合がほとんどだからです。
そのため同じ路線で顧客を奪い合うことが少なく、マイレージプログラムのようなマーケティング施策の必要性が低いと考えられます。
フリークエント・ゲスト・プログラム(FGP)
フリークエンシープログラムは航空会社であるアメリカン航空で広まった後、今度はホテル業界で「マリオットホテル」が採用しました。
ホテルで採用されたフリークエンシープログラムは、
- 宿泊回数
による顧客の区別であり、
- フリークエント・ゲスト・プログラム(Frequent Guests Programs)
と呼ばれます。(「ゲスト」とは「宿泊客」のことです。)
以下は現在のマリオットインターナショナルの「Marriot Bonvoy」と呼ばれるフリークエントプログラムです。

マリオットインターナショナルホームページのロイヤルティプログラム(参照 2019年7月29日)
参考
Marriott Bonvoy プログラムの概要マリオット・インターナショナル
こちらもアメリカン航空と時と同じように、ホテル業界で広まることで一般的なものになりました。
フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)
フリークエンシープログラムは、その後も様々な業界に広まりました。
その中でも小売店や実店舗を持つサービス業などで普及した、
- フリークエント・ショッパーズ・プログラム(Frequent Shoppers Programs)
は最も身近なものかもしれません。
FSPは支払時などに、金額などに応じてスタンプを押す形式のものや、独自のポイントが蓄積されていく形式のものが一般的です。
そしてスタンプやポイントが一定数貯まったら、割引券や商品などの引き換えが行われます。
特にスタンプを押すタイプの「スタンプカード」は、どんな店舗でも非常に安価に導入することができるため、小規模な店舗で採用されています。
下記のページは、スタンプカードを作成する印刷会社のホームページです。

キングプリンターズのスタンプカードデザインテンプレートのページ(参照 2019年7月29日)
FSP事例:MUJIマイルサービス
家具や日用雑貨の小売業を行う良品計画の「無印良品」では、フリークエントショッパーズプログラム(FSP)として「MUJIマイルサービス」を提供しています。

無印良品ホームページのMUJIマイルサービスの説明(参照 2019年7月29日)
MUJIマイルサービスは、
- 店頭やネットショップの支払額
- 来店時のチェックイン操作
- アンケートなどのへの回答
によって「MUJIマイル」と呼ばれるポイントが蓄積される形式になっています。
ポイントが蓄積されると顧客に割引券が付与され、次回の買い物で使えるようになっています。近年ではポイントカードではなく、ポイントを管理するためのスマートフォン用アプリを採用しています。
FSP事例:楽天PointClub
インターネットショッピングモールを中心として様々なサービスを提供する楽天は、「楽天PointClub(ポイントクラブ)」というフリークエントショッパープログラム(FSP)を提供しています。

楽天PointClubのランク特典説明ページ(参照 2019年7月29日)
顧客は楽天グループの提供する様々なサービスを利用することで「楽天ポイント」が蓄積され、そのポイントを直接支払いに使うこともできます。
またポイントの獲得数と獲得回数(つまり支払い金額と利用頻度)に応じて、顧客を4つの会員ランクに区別し、ロイヤルティの高い顧客に対して、より多くの顧客特典を提供するように設定されています。