顧客満足度(CS)を上げる5つの要素と調査・評価方法を具体例で解説

顧客満足度

顧客満足度を向上させる5つの決定要素

顧客の期待を上回るためには、製品やサービスの品質を高めることが必要不可欠です。

1980年代後半、マイアミ大学のパラスラマン教授らは研究によって「サービス品質モデル」をまとめ、そのモデルに基づいて「サービス品質の5つの決定要素」を定めました。それが下記の5つの項目です(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p513 参照、編集)。

  1. 信頼性:約束したサービスや機能を確実かつ正確に提供する能力
  2. 対応性:迅速に応対して顧客の役に立とうとする姿勢
  3. 安心感:知識や礼儀で顧客に信頼と安心を与える能力
  4. 感情移入:顧客一人一人に対する配慮と気遣い
  5. 有形物:設備や従業員の身なりなどの視覚的な印象

上から順に「重要度」が高く、改善の優先度は高くなります。そしてこの5つの決定要素をベースとして、合計22項目におよぶ「SERVQUAL基準」も存在します。(「SERVQUAL(サーブクオル)」は「 Service Quality(サービス・クオリティ)」を略したものです。)

これらの決定要素は、サービスに対する品質に対する考え方ですが、製品そのものに対しても当てはまる部分があるので同様に考えてみてください。

またサービスや製品の品質は顧客の「ウォンツ」とも深く関わっています。

ウォンツとは、

  • 課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求

のことで、

  • 基本ウォンツ:具体的な解決の方向性に対する欲求
  • 条件ウォンツ:解決の方向性を選別するための条件
  • 期待ウォンツ:当然満たされるべきと思っている暗黙の事柄

などに分解できます。

この顧客のウォンツを理解することで、5つの決定要素も考えやすくなります。ウォンツについてはこちらの記事もご覧ください。

信頼性(Reliability、リライアビリティ)

サービスの信頼性とは、顧客に約束したサービスを確実に、そして正確に行う能力のことです。製品でも同様に、その製品の機能が確実に実行されることが信頼性へとつながります。

SERVQUAL(サーブクオル)基準では、

  • 約束したとおりのサービスの提供
  • 顧客サービスの問題処理における信頼
  • 一度で完全なサービスの実施
  • 約束した時間にサービスを提供
  • 失敗のないサービス提供を維持

の5つが信頼性の項目に挙がっています。

当然ながら信頼性」が最も重要な決定要素になります。なぜなら、顧客はサービスそのものや製品の主要な機能に対して価値を感じて対価を支払うからです。

もしその中心となる「価値」が十分に提供されなければ、「価値がない」ということになります。

対象となるサービスや製品の価値を、正確かつ確実に完全な形で顧客に届けることは、ビジネスにおいて「当たり前のこと」であり「最も重要なこと」です。

しかし実際にはその「当たり前のこと」も十分に提供されていないことが多くあります。もしかしたら「当たり前のこと」を当たり前のように実行することが、最も難しいことなのかもしれません。

対応性(Responsiveness、レスポンシブネス)

サービスの対応性とは、顧客の要望に迅速に対応し、顧客の役に立とうとする姿勢のことです。

SERVQUAL(サーブクオル)基準では、

  • サービスが行われる時期に関して常に顧客に情報提供
  • 顧客に対する迅速なサービス
  • 率先して顧客の役に立とうとする気持ち
  • 顧客の要求にいつでも応じられる姿勢

の4つが対応性の項目に挙がっています。

サービスは、顧客と従業員がコミュニケーションすることで提供されます。そのため、顧客の行動に対する売り手側のレスポンス(反応、応答)の良し悪しがサービス品質に影響します。

もし顧客が受けようとするサービス(または製品)が、いつ提供されるのか(いつまで待たされるのか)が分からなければ不安を与えるので、こまめな情報提供が必要です。

また顧客は売り手側の姿勢にも敏感です。売り手側が顧客の役に立とうとする姿勢が伝われば、顧客はサービス品質を高く評価します。

安心感(Assurance、アシュアランス)

サービスの安心感とは、従業員の気配りや礼儀、知識によって顧客に与える印象のことです。

SERVQUAL(サーブクオル)基準では、

  • 顧客に安心感を与える従業員
  • 取引に際して顧客に安心感を提供
  • 常に礼儀正しい従業員
  • 顧客の質問に受け答えできる知識を持つ従業員

の4つが安心感の項目に挙がっています。

例えば、高級なホテルの従業員が無礼で横柄な態度だったらどうでしょうか? あるいは、家電量販店の店員が家電のことをあまり知らなかったらどう感じるでしょうか? おそらく顧客は、どちらからも安心感を得ることができないでしょう。

このように従業員の振る舞いや知識によって、顧客の安心感は変化します。そして従業員の対応に安心感があれば、顧客はサービス品質を高く評価します。

感情移入(Empathy、エンパシー、共感性)

感情移入(共感性)とは、従業員が顧客に共感して、思いやりを持って接する態度のことです。

SERVQUAL(サーブクオル)基準では、

  • 顧客一人ひとりへの配慮
  • 思いやりのある態度で顧客と接する従業員
  • 顧客第一に考える心
  • 顧客のニーズがわかる従業員
  • 便利な営業時間

の5つが感情移入(共感性)の項目に挙がっています。

先ほどの「安心感」と似ていますが、「感情移入」では従業員の共感によって顧客が「この企業は自分のことをちゃんと考えてくれているんだ」と感じることが重要になります。

顧客は同じサービスや製品を求めてきますが、その前提となるニーズは顧客ごとに異なります。顧客はそれぞれの悩みや困りごとを持っているので、売り手側がその悩みや困りごとに共感し、顧客一人ひとりに思いやりを持って接することでサービスの品質は高まりmす。

有形物(Tangibles、タンジブルス)

有形性は、顧客が視覚的な情報から得るサービス品質のことです。

SERVQUAL(サーブクオル)基準では、

  • 近代的な設備
  • 視覚的に魅力のある施設
  • 職業にふさわしいきちんとした身なりの従業員
  • 視覚に訴えるサービス関連資料

の4つが有形物の項目に挙がっています。

顧客が目から得る情報は膨大なものです。そしてその膨大な視覚情報によって、顧客は様々な評価をします。そのため、顧客の眼に映るものもサービス品質の一部として考える必要があります。

例えば味が良いのに客の来ない飲食店は、お店の内外装をターゲットとする顧客に合わせた物にリニューアルすることで繁盛店に変わることがあります。また、全く売れない製品でもパッケージを洗練されたものに変えるだけで、大きく売り上げを伸ばすことがあります。

なぜなら、顧客がサービスや製品の品質を視覚的に評価しているからです。

もちろん過剰な演出や偽りの表現は、遅かれ早かれ顧客に見抜かれてしまうため控えなければなりません。しかしそのサービスや製品の持っている価値を下げてしまうような視覚的な情報は、早急に改善する必要があります。

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