B2B市場の10の特徴
ここからの内容は「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」の内容をベースに、具体例を挙げながらわかりやすく解説したいと思います。
B2B市場は、一般消費者を対象とした「B2C市場」とは違った10の特徴があります。
- 少数の大規模な購買者
- 供給業者と顧客の密接な関係
- 専門的購買
- 複数の購買影響者
- 複数回に及ぶ営業訪問
- 派生需要
- 非弾力的需要
- 変動需要
- 購買者の地理的な集中
- 直接購買
1. 少数の大規模な購買者
ほとんどの業界には少数の「大企業」が存在していて、多くの供給業者はその企業と取引します。
コトラーの競争地位4類型で言えば、
- マーケット・リーダー
- マーケット・チャレンジャー
などが該当します。
マーケットリーダーやマーケットチャレンジャーは「経営資源の量」が多く、たくさんの顧客に製品やサービスを提供するために、B2B市場からも大量の資源を調達しようとします。
そのため市場シェアも高く、ほとんどの供給業者が少数の大企業と取引するようになります。
例えば、自動車業界などは最終製品としての自動車を作ることができる企業の数は世界的に限られています。自動車の部品やパーツを作るメーカーは数多く存在していますが、その取引先は直接的にも間接的にも少数の大手自動車メーカーになります。
その少数の取引先に対して、数多くの供給業者が大量の製品やサービスを供給しているという構図になります。つまり最終製品を作る大企業を頂点として、たくさんの供給業者がぶら下がるピラミッド構想を形成します。
これに対して、一般消費者の市場である「B2C市場」は数少ない売り手(事業者)に対して多くの買い手(消費者)がつきます。
例えば自動車のB2C市場は、数社の大手自動車メーカーが数千〜数万の自動車ディーラーに自動車を卸し、1つの自動車ディーラーが数百〜数千という消費者に対して販売するという構造になります。
このようにB2B市場とB2C市場では、買い手である購買者の「数」と「規模」に大きな違いがあります。
2. 供給業者と顧客の密接な関係
先ほど説明したように、B2B市場での買い手は「少数」で「大規模」になることがほとんどです。(ただし小規模事業者などを主要な顧客とする事業については、顧客が「多数」で「小規模」になり特性がB2C市場に近づきます。)
そのため少数の買い手が一度にたくさん調達する場合、
- 売り手は1社でも顧客を失うとダメージが大きい
- 買い手は調達に失敗するとダメージが大きい
ということになるため、売り手は営業コストをかけて買い手と密接な関係を築こうとし、買い手は自社のニーズを満たすことのできる供給業者を探すためにコストをかけます。
これはお互いに「スイッチングコスト」を高めるという結果にもつながります。
スイッチングコストとは、
- ある製品やサービスから別の製品やサービスに切り替える場合に必要なコスト
のことで、
- 金銭的コスト:他の製品やサービスに切り替えるために必要な金銭的な負担
- 手続き(物理的)コスト:他の製品やサービスに切り替えるための手間暇
- 探索コスト:新たに切り替える製品やサービスを探すための負担
- 移動コスト:切り替えることによる物理的な移動距離の変化
- 作業コスト:切り替えに必要な書類手続きなどの作業
- 学習コスト:切り替え後に新たに覚えなければならないことへの負担
- 関係性(心理的)コスト:他の製品やサービスとの関係性を再構築する負担
などが存在しています。
B2B市場では、売り手も買い手もお互いにスイッチングコストが高くなる傾向にあるので、リスクを低減させるために密接な関係を築きながらも、スイッチングコストが発生する場合の対応策も考えておく必要があります。
供給業者は、売り上げを少数の顧客に依存してしまうと、その顧客の業績が悪化したり顧客の業界の成長が鈍化することで、一気に売り上げが落ちてしまいます。
そのため、顧客の売上構成比率を分散させたり、顧客が参入している業界を分散させたりすることでリスクを低減させることが課題になります。
3. 専門的購買
B2B市場では、売り手も買い手もお互いにその道の「プロ」です。
そのためB2Bで求めれらる製品やサービスは、「専門的な売買」が行われることが特徴です。
例えば、一般消費者が日曜大工のためにホームセンターでネジを一本買おうとした場合には、「素材」「サイズ・形」「値段」くらいしか気にしないかもしれません。買う場合も、そのネジをレジに持っていってお金を支払えば購入できます。
しかしこれがB2B市場になれば、大量に調達するネジの「素材」「サイズ・形」「値段」だけでなく「納期」「供給量」「品質のバラツキ」「強度」「耐久性」「アフターサービス」などの様々な側面から評価されることになります。
さらにお金を払ったらすぐに買えるわけではなく、見積書・仕様書・契約書などの書類や業務上の手続きを経て、法人同士の売買契約が取り交わされます。