だいぞう
B2B市場での購買は、
- 新規購買:新規の製品やサービスを評価して意思決定する購買行動
- 単純再購買:日常的な繰り返し注文を効率的に行う購買行動
- 修正再購買:製品やサービスを再評価して条件を修正する購買行動
という3つのタイプに分けることができます。
ここではB2B市場に見られる3つの購買タイプについて、わかりやすく説明します。
B2B市場の購買タイプとは?
B2B市場(または、ビジネス市場)とは、
- 製品やサービスを生産するために事業者の間で行われる売買取引の市場
のことで、
- 少数の大規模な購買者
- 供給業者と顧客の密接な関係
- 専門的購買
- 複数の購買影響者
- 複数回に及ぶ営業訪問
- 派生需要
- 非弾力的需要
- 変動需要
- 購買者の地理的な集中
- 直接購買
という10の特徴があると言われています。
買い手となる企業が、供給業者から製品やサービスを購入するために日々取引を行っていますが、その購買行動のタイプは、
- 新規購買:新規の製品やサービスを評価して意思決定する購買行動
- 単純再購買:日常的な繰り返し注文を効率的に行う購買行動
- 修正再購買:製品やサービスを再評価して条件を修正する購買行動
の3つに分類できるとされています。(1967年、パトリック・ロビンソン他 著「Industrial Buying and Creative Marketing」、「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p264 より)
これらの3つの購買行動は、一般消費者が行う購買行動とは異なり、複数の関係者が意思決定に関わることがほとんどです。
B2B市場の購買タイプ:新規購買
新規購買は、企業が今までに利用したことがない製品やサービスを採用する場合に行う購買行動です。
新しく採用する製品やサービスには、未知のリスクが含まれているため、複数の関係者によって慎重に評価され意思決定を行います。
新規購買では、
- 認知:新規の製品やサービスの存在に気づく
- 関心:認知した製品やサービスに関心を持つ
- 評価:関心を持った製品やサービスを評価する
- 試用:実際の使用環境に近い状態で評価する
- 採用:評価の結果をもとに意思決定を行う
の採用プロセスを経ると言われています。(1971年、アーバン・オザンヌ他 著「Five Dimensions of the Industrial Adopting Processes」、「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p264 より)
この新規購買の採用プロセスは、3つの購買タイプの中でも最も時間がかかり、意思決定に関わる人数も一番多くなります。
例えば、新しい営業支援システムを会社に導入する場合には、
- 認知:新しい営業支援システムの広告を見かける
- 関心:システムで業務が効率化される可能性があり資料請求を行う
- 評価:システム会社にプレゼンをしてもらい社内で協議を行う
- 試用:一部の従業員にシステムを試験導入し評価を行う
- 採用:効率化によるコスト削減が期待できるため採用を決定する
といった流れが考えられるかと思います。
この流れでは、それぞれのステップで必ずしも同じ人物が行動しているとは限りません。
営業支援システムの広告を見かけたのは複数の営業担当者かもしれませんし、経営者だけが見るかもしれません。採用を決める段階では、その営業支援システムに一度も触れたことのない役員が意思決定をするかもしれません。
そしてこれらの複数の関係者が、段階を踏みながら小さな意思決定を積み重ねていくため、認知から採用に至るまでに数ヶ月単位の時間がかかる場合もあります。
購入する製品の仕様の確認、導入コスト、ランニングコスト、納品条件、サポート体制、保証内容、支払い条件など、細かい事柄まで決める必要があるからです。
このように複雑で長期にわたる購買意思決定プロセスは、一般消費者がB2C市場で行う購買意思決定とは違う部分も多いですが、共通する部分もあります。
その共通する部分を表したのが、下図の緑色のプロセスです。
上記の図は、消費者行動における「購買意思決定プロセス」とAIDMA(アイドマ)の法則やAISAS(アイサス)に代表される「広告反応プロセス」を一つの表にまとめたものです。
そしてこの表で緑色に塗っている部分が、今回のB2B市場での購買プロセスに該当します。
- 認知:Attention(注意が向く)@広告反応モデル
- 関心:Interest(興味がわく)@広告反応モデル
- 評価:情報探索・代替品の評価@購買意思決定プロセス
- 試用:情報探索・代替品の評価@購買意思決定プロセス
- 採用:購買決定@購買意思決定プロセス
B2B市場の意思決定も最終的には個人が行うため、B2C市場の購買決定プロセスや広告反応プロセスを知っておくことで理解を深めることができます。
B2B市場の購買タイプ:単純再購買
新規購買を行って問題がなかった製品やサービスについては、日常的に繰り返し注文を行う「単純再購買」という購買タイプに移ります。
買い手側は、できる限り効率的にトラブルなく、いつもの製品がいつものように納品されることが望まれるので、売り手側の供給業者もその期待に答えようとします。
例えば、供給業者は買い手の再購買を効率化するために、在庫管理システムと連動した自動発注システムを提供したります。
買い手にとっては在庫の管理や在庫数の確認、発注作業などは非常に手間がかかります。しかし供給業者がその作業を代替する手段を提供すれば、買い手の負担は大幅に軽減されます。その結果、継続的な長期にわたる取引になる可能性が高まります。
その一方で、購買している製品やサービスから期待している価値が得られなくなったり、業務オペレーションの環境が変化する場合には、次の「修正再購買」が検討されます。
B2B市場の購買タイプ:修正再購買
修正再購買は、単純再購買ができなくなった製品やサービスに対して再評価を行い、新たな条件で再購買を行うことです。
修正再購買は、新規購買の3つ目のプロセスである「評価」以降のプロセスをもう一度行うことになります。
そのため再購買の意思決定に関わる人物の数が増え、売り手と買い手の双方にとって時間やお金などのコストがかかることになります。
また新規購買とは異なる条件で「再評価」が行われるので、売り手側である供給業者にとって不利な条件になることも少なくありません。
さらに他の供給業者も乗り換えのチャンスを伺っているため、競合他社がより良い条件を買い手側に提示すれば、一度採用された供給業者も契約を失ってしまう可能性があります。
そのためにも、既存の取引がある供給業者は油断することなく、買い手側との関係性を強化すると共に、製品やサービスの価値を高める必要があります。また買い手にとっての「スイッチングコスト」を高めることも対策として有効です。