アンゾフのマトリクスで多角化戦略を検討する目安
アンゾフの成長マトリクスでは6つも戦略があるんですが、会社の規模や立場によって全部使えないかもしれません。
あくまで目安ですが、
- あなたが社長や個人事業主 → 6つ全て検討可能
- 部長だけど社長の肝いり企画 → 6つ全て検討可能
- 上司から急に言われただけ → 3つの事業戦略を本気で考えて、多角化戦略は1つだけネタとして考える
あたりが現実的なのではないでしょうか。
アンゾフのマトリクスの出来ること出来ないこと
- 6種類の事業展開の方向性を考えること
- すでに発見している顧客のニーズに対応すること
- 6種類の事業展開のどれが優れているか判断すること
- 新たな顧客のニーズを発見すること
このフレームワークで出てくるのは、あくまで戦略のたたき台のようなものです。そこで出てきたアイデアを現実的に、実行できる形に落とし込むのは別の話。その戦略が良いのか悪いのか、実行可能なのかどうなのか、そのような判断まではできません。
またこのフレームワークだけでは、事前にわかっている顧客のニーズを検討することしかできません。新たな顧客のニーズを発見するのには向いていません。
アンゾフのマトリクスの短所と使い方のコツ
製品市場戦略マトリクス(アンゾフのマトリクス)の短所は、
- 2軸を大雑把に設定するとアイデアがまとまらない
- 商品点数が数千〜数万などの多い事業では作業が膨大になる
- 経営資源の評価ができない
「商品・サービス」と「市場ニーズ」の2つの軸については、大雑把に設定してしまうと、その後のアイデア出しでもアイデアの品質が大きくばらつきます。それを避けるためには、戦略立案のメンバーが事前に自社の取り扱う商品やサービスを理解し、マーケティング調査から未対応の市場ニーズを洗い出すことが大切です。
また「商品・サービス」は会社によって取り扱う点数が違いますが、あまりにもたくさんの商品を扱っている場合は、ある程度まとめるか絞り込むことをお勧めします。
このフレームワークでは経営資源の知識が必要なものの、それを把握・評価するプロセスはありません。そのため事前にVRIO分析など、経営資源を評価する別の分析を行うと良いでしょう。
以上、使い方のコツとしては、
- 事前に自社の取り扱う商品やサービスの理解を深める
- 事前にマーケティング調査を行い市場ニーズを拾っておく
- 「商品・サービス」軸の細かさは処理が可能な程度にとどめる
- VRIO分析などで事前に戦略に使える経営資源を知っておく
ことです。
アンゾフのマトリクスまとめ
以下は、ここまで説明した内容を簡単にまとめたものです。
アンゾフのマトリクスの4つの戦略ってなに?
アンゾフのマトリクスというフレームワークを使うと、
- 市場浸透戦略:既存市場で既存製品を浸透させて売上向上や新規開拓を狙う戦略
- 市場開拓戦略:新しい市場で既存製品を広めて新たな市場ニーズに対応する戦略
- 製品開発戦略:新しい製品で既存市場のシェアを高めようとする戦略
- 多角化戦略(垂直・水平・外側):新しい市場に新しい製品で挑戦する戦略
の4つの戦略を考えることができます。
多角化戦略にはどんな種類があるの?
アンゾフのマトリクスの多角化戦略は、
- 垂直多角化戦略:サプライチェーンの上流や下流に向かって多角化する戦略
- 水平多角化戦略:現状の経営資源を活かして新市場に新製品を投入する戦略
- 外側多角化戦略:現場の経営資源を活かさずに畑違いの市場に参入する戦略
の3つの戦略に分類することができます。
アンゾフのマトリクスの2つの軸は何と何?
アンゾフのマトリクスは、
- 縦軸:製品ライン
- 横軸:市場(製品使命)
の2つの軸で構成されています。
製品ラインの軸は、製品を機能や性能によって分けたものです。そして市場(製品使命)の軸は、顧客のどんな問題(ニーズや使命)を解決するかによって分けたものになります。
おすすめの書籍
1957年の論文「Strategies for Diversification(多角化のための戦略)」の日本語訳が、この本の第1章「多角化戦略の本質」として収録されています。
H.イゴール・アンゾフ