ニーズとウォンツの違いを比較すると、
ニーズ | ウォンツ |
必要性 | 欲求 |
消費者が持っている | マーケターが作り出す |
無自覚または抽象的 | ある程度具体的 |
消費者が持つ課題や目的 | 解決するための手段 |
ウォンツに変化する | デマンドに変化する |
という違いがあります。
だいぞう
ニーズ(必要性)はマーケティング活動でウォンツ(欲求)に変化させることができ、ウォンツ(欲求)はマーケティング活動によってデマンド(需要)に変化します。
ここでは「ニーズ(Needs)」と「ウォンツ(Wants)」に加えて、「デマンド(Demands)」や商品やサービスの基になる「シーズ(Seeds)」、その他「ベネフィット(Benefits)」についてもわかりやすく解説します。
ここでの「ニーズ」「ウォンツ」「デマンド」の定義については、世界中のビジネススクールでマーケティングの教材として採用されている「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 」に記載されている内容をベースにしています。そのため、マーケターの共通言語としてお使いいただける内容になっています。
ニーズとウォンツの違い
ニーズとウォンツはそれぞれ、
- ニーズ:消費者が持つ課題の解決や目的を達成する必要性
- ウォンツ:課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求
のことです。
「ニーズ」は、消費者が解決する「必要性」がある「課題」や「目的」そのもののことを指しています。この必要性は消費者本人が「無自覚」の場合もあるため、マーケティング活動によって気づかせることもできます。
そしてニーズを持っている消費者に対して、マーケティングによる働きかけをすることで「ウォンツ」に変化させることができます。
「ウォンツ」はマーケターが作り出すことのできる「欲求」であり、消費者が「〇〇が欲しい」と「具体的」に考えている状態です。
これは消費者が持っている「課題」や「目的」を解決する直接的な「手段」であり、マーケティングでその手段を提示できれば、次の「デマンド」に変化する可能性があります。
ニーズ → ウォンツ → デマンドの流れとシーズ
それぞれの用語については、先ほどのニーズとウォンツに加えて、
- デマンド(Demands):消費者の支払い能力が伴う特定の商品やサービスに対する需要
- シーズ(Seeds):デマンドの受け皿となる商品・サービスのベース技術
という意味があります。
ここでは、
- マーケティング活動で「ニーズ → ウォンツ → デマンド」に変化する
というイメージで考えていきます。
この流れを図で表したのが、下記のものです。
ニーズは、さらに細かく、
- 潜在(せんざい)ニーズ
- 顕在(けんざい)ニーズ
に分けることができ、ウォンツは、
- 基本ウォンツ
- 条件ウォンツ
- 期待ウォンツ
に分けることができます。(それぞれの詳細は後述します。)
例えば「通勤」について一連の流れを詳しく書き出すと、
- 顕在ニーズ:消費者「引っ越ししたけど会社までの通勤をどうにかしなきゃ。」
- マーケティング活動:鉄道会社「〇〇線なら乗り換えなしで〇〇駅まで直通!」
- 基本ウォンツ:消費者「バスもあるけど、電車で通勤しよう。」
- 条件ウォンツ:消費者「ただし時間がかかっても乗り換え少なめがいい。」
- 期待ウォンツ:消費者「少し早く家を出たら座って通勤できるかも。」
- マーケティング活動:鉄道会社「6ヶ月定期券なら〇〇円」
- 支払い能力の壁:消費者「金額に問題なさそうだ。」
- デマンド:消費者「〇〇駅〜〇〇駅の6ヶ月定期券ください。」
という感じになります。
念のため、今度は具体例として「昼食」で一連の流れを書き出すと、
- 顕在ニーズ:消費者「お腹が空いたな。今日のお昼はどうしよう。」
- マーケティング活動:牛丼チェーンののぼり「〇〇牛丼、新登場!」
- 基本ウォンツ:消費者「新メニューが出てるし、今日は牛丼にしよう。」
- 条件ウォンツ:消費者「ただし会社からあまり遠くないお店がいいな。」
- 期待ウォンツ:消費者「注文したらすぐに出てくるはず。サっと済ませたい。」
- マーケティング活動:牛丼チェーン「今ならお得なクーポン、牛丼30円引き!」
- 支払い能力の壁:消費者「サイドメニューをつけてもワンコインで済みそうだ。」
- デマンド:消費者「〇〇牛丼の味噌汁セットください。」
という感じになります。
上記の事例でニーズ、ウォンツ、デマンドの違いと、マーケティング活動の影響がイメージできるようになったのではないでしょうか?
マーケティング活動の影響
先ほどの具体例で、ニーズがデマンドに変化する一連の流れをご覧いただいた通り、「マーケティング活動」が、消費者の心境の変化を起こしています。
最初は「問題を解決しなきゃ」という非常に抽象的な「必要性(ニーズ)」にかられているだけだった消費者は、マーケティング活動によって、「電車にしよう」とか「牛丼にしよう」というようにより具体的な「欲求(ウォンツ)」を持つようになります。
そしてさらに、消費者が支払うことのできる商品やサービスを設計することで「支払能力の壁」を超えさせ、特定の商品やサービスに対する「需要(デマンド)」という形で取引が成立することになります。
このように、
- 抽象的:通勤どうにかしなきゃ
- 具体的:電車で通勤しよう
- 特定:〇〇鉄道の〇〇線で通勤しよう
という段階の変化を促すために、マーケティング活動を行うことが重要になります。