コア・コンピタンスの3つの条件と5つの要因
コア・コンピタンスと呼ばれるためには3つの条件があります。(戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS) の第8章より引用)
- 広範かつ多様な市場に参入する可能性をもたらすものでなければならない
- 最終商品が顧客にもたらす価値に貢献するものでなければならない
- ライバルには模倣するのが難しいものでなければならない
例えば「超高性能小型モーター」という「コア製品」を生産できる電気メーカーは、
- そのモーターを使って家電市場や工業用ロボット市場に参入できる可能性がある
- そのモーターを使うと製品は小型で高性能なものになり顧客は喜ぶ
- 独自開発したモーターなので競合他社がすぐに同じものを作ることはできない
という競争の優位性を得ることができます。
三条件の「広範かつ多様な市場に参入」という部分については、範囲の経済を生み出したり、多角化戦略を検討する上でも重要です。
また「模倣するのが難しい」という点においては、バーニー教授のVRIO分析の「模倣困難性」についての記事が参考になるかもしれません。
またこれらの条件については、
- 模倣可能性(Imitability):競合他社にとって模倣することが難しい
- 移動可能性(Transferability):広範囲で多様な市場に応用できる
- 代替可能性(Substitutability):他の技術で代替することが難しい
- 希少性(Scarcity):その技術が市場で不足(scarce)している
- 耐久性(Durability):その技術は長期的に市場の要求に耐えられるか
というコンピタンスを見極めるための5つの特徴として説明されることもあります。
内容としては、先ほどの3条件の1つ目と3つ目に該当します。
「移動可能性」や「耐久性」という特徴は「広範かつ多様な市場に参入する可能性」という1つ目の条件に該当すると思います。
また「模倣可能性」「代替可能性」「希少性」については、「ライバルには模倣するのが難しい」という3つ目の条件に違い内容です。
要するに「コアコンピタンス」とは、色々な事業に長期的に活用することのできる使い勝手の良い技術であり、競合他社も簡単に手に入れることができないような技術のことを指します。
コア・コンピタンス経営
この「コア・コンピタンス」という考え方を活かした経営手法に、「コア・コンピタンス経営」というものがあります。これはコアコンピタンスの概念を提唱した、プラハラッド教授とハメル教授の論文のタイトルに由来しています。
コアコンピタンス経営とは、
- 自社のコアコンピタンスを理解する
- コアコンピタンスを強化する
- 新しいコアコンピタンスを生み出す
ことを重視します。
またコアコンピタンスを生み出し、維持する役割を担う「コア人材」についても投資や育成が必要になります。
プラハラッド教授とハメル教授は、コアコンピタンスと対比して「SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)」という考え方にも警鐘を鳴らしています。
コアコンピタンス分析のやり方
コアコンピタンス分析のやり方は、
- 事業と最終製品を整理する
- コア製品の候補を考える
- コア製品を選別する
- コンピタンスの候補を考える
- コンピタンスを発見する
- コンピタンスの書き写し
- コアコンピタンス3つの条件の評価
- コアコンピタンスを特定する
です。
下記の記事には、この手順をわかりやすく解説しています。またコアコンピタンス分析用テンプレート(パワーポイント形式、登録不要)も無料でダウンロード可能です。
コアコンピタンス分析のやり方:事業を生み出す技術力を見つける方法
コアコンピタンスとケイパビリティの違い
コアコンピタンスと同様に、企業の能力を表す用語として「ケイパビリティ」というものがあります。
このコアコンピタンスとケイパビリティの違いについては、別の記事にまとめているのでご覧ください。
おすすめの書籍
「戦略論 1957-1993 (HARVARD BUSINESS PRESS)」の第8章には、1990年に発表されたプラハラード教授とゲイリー・ハメル教授による記事「The Core Competence of the Corporation 」の日本語訳が掲載されています。
ソニーや本田技研の例を交えて「コアコンピタンス」について詳しく書かれているのでおすすめです。