One to One マーケティングとマスマーケティングの違い
ワントゥワンマーケティングとマスマーケティングの違いは、下記の表の内容が挙げられます。(ペパーズ著 ロジャーズ著「ONE to ONEマーケティング ― 顧客リレーションシップ戦略 」の表より一部抜粋・加筆)
One to One マーケティング | マス・マーケティング |
個別の顧客 | 平均的な顧客像 |
カスタマイズ製品 | 標準的な製品 |
個別のメッセージ | マス広告 |
個別のインセンティブ | マス・プロモーション |
双方向メッセージ | 一方向メッセージ |
範囲の経済性 | 規模の経済性 |
顧客シェアを高める | 市場シェアを高める |
収益性の高い顧客を優先 | 全顧客を同じように扱う |
顧客の維持に取り組む | より多くの顧客を集める |
ワントゥワンマーケティングでは、個別の顧客のニーズを十分に把握し、個々にカスタマイズされたマーケティング活動(製品開発、価格設定、流通管理、プロモーション)を行います。そのため、双方向のやり取りも必要ですし、顧客の状態に合わせて適切なタイミングで適切な提案をすることが重要です。
一方、マスマーケティングでは、顧客ニーズを大局的に捉えて、標準的な顧客像に対してマーケティングを行います。競合他社での戦いでも、顧客個人を奪い合うよりも、顧客層の中のシェアを奪い合うというイメージになります。マスマーケティングでは対象となる顧客の数が増えれば増えるほど、マーケティング効率も高まるため、規模の経済性を意識する必要もあります。
One to One マーケティングの始め方4ステップ
ここからはワントゥワンマーケティングを始める手順をご紹介します。One to One マーケティングは、
- 顧客を特定する
- 顧客を分類する
- 顧客と交流する
- 製品やサービスをカスタマイズする
という4つのステップで構成されてます。この手法は前述したペパーズ氏とロジャーズ教授によって体系化されたものです。
まずはワントゥワンマーケティングの対象となるべき顧客が誰なのか特定します。
顧客には、買う気のない冷やかし客や興味を持っていくれている見込み客、そして既存顧客など様々な顧客が存在しています。
しかしこれらのすべての顧客にワントゥワンマーケティングをすると、いくらコストが下がったとは言っても、無駄なマーケティング活動が増えて利益率が下がってしまいます。
そのため、顧客の中からワントゥワンマーケティングを実施する価値のある、見込み客や既存顧客などが誰なのかを特定する必要があります。
顧客の特定には、一般的に顧客データベースなどを利用します。それぞれの企業で独自に顧客のデータベースを構築し、過去の購買データや顧客情報を蓄積することによって、ワントゥワンマーケティングに適した顧客を見つけることができます。
ワントゥワンマーケティングを実施するべき顧客が特定できたら、今度はそれらの顧客の分類を行います。
対象となる顧客は、顧客ニーズごとでグループ分けするのが一般的です。なぜ顧客ニーズごとにグループ分けするかというと、同じニーズを持っている顧客には同じような提案ができ、顧客グループごとにノウハウが蓄積しやすくなるからです。
そして顧客ニーズごとにグループ分けができたら、今度はそのグループの中で顧客をランク分けします。売上高や利益額によってランク分けすることで、どの顧客を重点的にマーケティングするべきか優先順位づけができるようになります。
なぜ売上順などで優先順位づけが必要かというと、
- たくさん儲けさせてくれる顧客にたくさん経営資源を使っても損をしないから
です。
これは単純に「儲けさせてくれる顧客だけを相手にしろ」という意味ではなく、
- 企業にとって価値の高い顧客には企業もそれ相応の価値を提供する必要がある
- 無駄なく利益を稼ぐことでより多くの顧客にマーケティングする余裕が生まれる
ことが理由です。
もし利益を生まない顧客にマーケティングコストを多くかけてしまうと、その分マーケティング活動の予算が減ってしまい、結果的に少数の顧客にしか対応できなくなってしまいます。
そのため、よりたくさんの顧客に製品やサービスの良さを伝えたいのであれば、営業効率の高い顧客から攻める必要があるのです。
顧客の優先度が決まれば、今度は個別にどこまでのマーケティング予算をかけて良いのかを把握する必要があります。いくらお得意様とはいえ、企業側が損するほどのマーケティング予算をかけることはできません。
このマーケティング予算の上限を把握するためには、顧客ごとのLTV(ライフタイムバリュー)を知る必要があります。
LTVとは、
- 特定の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の合計金額の現在価値
のことで、このLTVを超えない範囲であればマーケティングコストをかけてもマイナスになることはありません。LTVの計算方法については、下記の記事をご覧ください。
アプローチするべき顧客とその予算がわかれば、次は顧客との交流を増やして関係性を深めます。
営業活動もそうですが、イベントに招待したり情報を共有したりと、企業と顧客の結びつきを強めることによって、顧客のニーズを深掘りできるようになります。
先ほどは顧客ニーズによって顧客を大まかに分類しましたが、さらにこれを顧客ごとにニーズを細分化していくようなイメージになります。
顧客ごとの細かいニーズまで把握することができれば、今度はそれに合わせた提案を行います。
顧客の細かいニーズに基づいて、製品やサービスそのものを個別の顧客に合わせたものにカスタマイズすることで、ワントゥワンマーケティングに適した提案ができるようになります。