ファイブフォース分析のやり方:手順と分析のコツ

1979年にマイケル・ポーター教授によって発表されたフレームワーク、ファイブフォース分析。新規参入業者・代替品・消費者・供給業者・競合他社から生まれる競争圧力を分析することで、その業界がどれくらい魅力的なのか(または、儲けにくいか)を知ることができます。

どんなフレームワーク?

ファイブフォース分析とは、産業や業界で生まれる5つの競争圧力を使って分析する手法のことです。五力分析とか、5つの力分析とも呼ばれたりします。

発案者のポーター教授は、2002年の学術誌でのインタビュー記事の中で「ハーバード・ビジネススクールでSWOT分析を教える時に苦労した」ことが、ファイブフォース分析を考え出した理由の一つだと語っています。

参考 An Interview with Michael PorterThe Academy of Management Executive Vol. 16, No. 2, Theme: Achieving Competitive Advantage (May, 2002), pp. 43-52

ということで、SWOT分析と一緒に使えば、より効果を発揮するフレームワークと言えますね! 外部環境の機会(Opportunities)と脅威(Threats)の分析のサポートに使いましょう。

SWOT分析のやり方:効果的な場面とその手順

話を戻してファイブフォース分析ですが、産業や業界には様々な力が働いています。それは自分の会社が儲かりにくくなるような力です。その圧力を「競争圧力」と呼びます。

下記の図の赤い矢印が、新規参入者・代替品・消費者・供給業者・競合他社から生まれる競争圧力です。

これらの競争圧力(赤い矢印)は、

  • 新規参入業者の脅威
  • 代替品の脅威
  • 消費者の交渉力
  • 供給業者の交渉力
  • 競合他社との対立

です。

新規参入業者が入って来やすい業界だと、競争が激しくなりお客さんも奪われやすいので、自社は儲かりにくくなります。

代替品(代わりになる商品やサービス)が存在している業界だと、何かのきっかけで自分たちの商品やサービスが買ってもらえなくなってしまうかもしれません。

消費者が強い業界であれば、「安くしてくれなきゃ買わないよ。」とか「ちょっと気に入らないから、明日から別の商品を買ってみよう。」という声が上がりやすく、儲けにくくなってしまいます。

供給業者が強い業界であれば、「値段に文句があるなら、原料は売りません。」とか「新参者には部品を供給しないよ。」なんてことになって、コストが高くなってしまうかもしれません。

競合他社との対立が強い業界であれば、お互いに人材を引き抜きあったり、新製品を出してもすぐに値下げ合戦になったり、広告費にばかりお金がかかったりと、儲けが出にくくなってしまいます。

その他の具体例は、こちらの記事も参考にしてください。

ファイブフォース分析(ふぁいぶ-ふぉーす-ぶんせき)

これらの競争圧力を分析することで、その産業や業界がどれくらい儲けやすいのか、または儲けにくいのかを知ることができます。ちなみにSWOT分析では、どれも「脅威」に分類される内容ですね。逆にその競争圧力が存在しなければ「機会」と考えることもできます。

分析した結果から

  • 儲けやすい業界に参入する
  • 儲けにくい業界から撤退する
  • 競争圧力を弱める方法を考える

…など、様々な事業戦略を考えることができます。クロスSWOT分析も一緒にやると、事業戦略を考えやすくなります。

クロスSWOT分析のやり方:4タイプの戦略立案とその手順

出来ること出来ないこと

出来ること
  • 業界の特定の瞬間をとらえて分析する
  • 5者の競争圧力をバラバラに考える
  • 全ての企業が合理的に判断することを前提にする
出来ないこと
  • 時間による業界環境の変化をとらえて分析する
  • 5者の関係性を考慮して競争圧力を考える
  • 不合理な判断をする競合の存在を想定する

ファイブフォース分析は、その分析した時点の様子しかとらえることができません。分析をして戦略を考えて、さてこれから実行…という時には状況が変わっているかもしれません。

また5者による圧力はバラバラに表現されているので、基本的にそれぞれを個別に考えることになります。複数の圧力が組み合わさった場合の影響は、分析しにくいと言えます。

もうひとつ重要なのは、このフレームワークは経済学がベースにあるため「みんな合理的な判断をする」のが前提にあるということです。例えば「仕入れが難しいから儲かりにくい。だから新規参入は今後も少ないだろう。」という分析結果が出たとします。しかし実際には、それでも参入して業界にイノベーションを起こし、圧倒的シェアを奪う企業もいます。

ファイブフォース分析の手順

  • ステップ1
    分析対象の産業や業界の範囲をハッキリさせる

    まずは分析の対象になる産業や業界を明確にしましょう。ひとえに「〇〇業界」と言っても、分析をするメンバー全員の認識が同じとは限りません。また一人で分析を進める場合にも、いろいろと調べていくうちに分析対象がブレてしまうことがあります。そうならないように、最初に分析する対象をハッキリと文字にして書いておきましょう。

  • ステップ2
    競争圧力を洗い出す

    ステップ1の対象範囲を意識しながら、5者それぞれが生み出す競争圧力を洗い出してみましょう。ホワイトボードや模造紙に付箋を貼る時には、「事実(裏付けあり)」と「意見や発想(裏付けなし)」で色を変えておくと分析がしやすくなります。

  • ステップ3
    影響力が大きい情報を整理する

    5つの競争圧力の洗い出しができたら、自社にとって影響力が強いものを残して整理しましょう。アイデアをグループ化したり、不要な情報を取り除いたりしてください。

    また、なぜそのようなことが起こっているのかを考えることも重要です。何かの大きな変化が原因で、競争圧力が生まれているのかもしれません。例えば、貿易摩擦が原因で原料の輸入が難しくなり、供給業者の交渉力が高まっている場合などです。そんな時には、PEST分析も活用してみましょう。

    PEST分析のやり方:より深く分析する手順とそのコツ
  • ステップ4
    儲けやすいか儲けにくいか判断する

    ファイブフォース分析を行う目的は、その産業や業界が儲かりやすいのか儲かりにくいのかを見極めるためのものです。そのため最終的には自社にとって、儲けやすいのか儲けにくいのか判断することが重要です。

    • 結論「〇〇業界は自社にとって儲けやすい!(or 儲けにくい)。理由は〜〜」
  • オプション
    SWOT分析の情報源に使う

    産業や業界が儲かりやすいか儲かりにくいかだけだと、戦略的な判断をするには少し難しいかもしれません。そんな時はSWOT分析の情報源として、ファイブフォース分析の結果を使ってみましょう。

    SWOT分析のやり方:効果的な場面とその手順

短所とうまく分析するコツ

ファイブフォース分析にも、下記のような短所が存在します。

  • 5者の連携や関係性が見えにくい
  • 産業や業界の範囲設定で分析結果が大きく変わってしまう
  • 離れた別業界からのイノベーションの影響を把握しにくい
  • 時間の経過による変化を考慮しにくい

まずフレームワークで5つの力に分解しているため、5者の競争圧力はバラバラに考えなければなりません。しかし現実は5者がお互いに影響しあって、生まれる競争圧力もあります。例えば原料の供給業者が、別業界からの新規参入を促すことも起きます。そういった動きには、ファイブフォース分析のフレームワークで対応しにくいので、分析結果で補足をしておきましょう。

分析対象をどこまでの範囲とするかは、非常に重要で分析結果を左右します。複数人で分析をする時は、特に気をつけましょう。まれに別業界の会社が突然参入してきて、自分たちの業界をひっくり返すようなイノベーションも起こりますが、この分析ではとらえきれません。そのためPEST分析も併せて行い、より広い視野でも考えておきましょう。また特定の瞬間を切り取る分析方法なので、時間の経過の変化を分析するのには適していません。中長期的な分析に活かすなら、過去・現在・将来などの複数のファイブフォース分析を行う必要もあります。

ということで以上のコツをまとめると、

  • 5者の関係性が高い場合は分析結果に補足する
  • 分析対象の範囲を明確にして分析結果と併せて他人に伝える
  • PEST分析から業界の外の変化もつかむ
  • 過去、現在、将来予測の3つのファイブフォース分析をする

となります。