デマンド(Demands)
デマンドとは、
- 消費者の支払い能力が伴う特定の商品やサービスへの需要
のことです。
「ニーズ」も「ウォンツ」も、消費者が商品やサービスに対価を払うことによって「需要(デマンド)」に変化します。
需要(デマンド)の状態は、「バランス需要」「過剰需要」「変動需要」「減少需要」「逆需要」「ゼロ需要」「潜在需要」「不健全需要」の8つに分類することができます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ここで重要なのが「特定の商品やサービス」に対する需要であるということです。
「ウォンツ」では、消費者が求めるものがある程度具体的になっているものの、商品やサービスを特定するまでには至りません。
そのため、マーケティング活動によって、自分たちが提供したい商品やサービスまで消費者を誘導することが必要になります。
またマーケティングでは、
- 消費者のニーズを満たすもの
- 消費者のウォンツに応えるもの
を提供できれば「売れる」と思い込んでいる人たちが少なからず存在しています。
しかしそれは大きな間違いです。なぜなら、
- いくら優れた商品やサービスも消費者に支払能力がなければ売れない
からです。
そこで立ちはだかるのが「支払能力の壁」です。
支払能力の壁
支払能力の壁とは、
- 消費者が商品やサービスに支払わなければいけない対価
のことです。
消費者がこの「支払能力の壁」を超えてくれない限り、企業にとっての売り上げになりません。
企業が消費者に支払能力の壁を超えさせられない原因としては、
- ターゲット層に支払能力が無い
- 支払方法の選択肢が狭い
- 消費者の支払意思額(WTP)が価格を下回っている
などがあります。
ターゲット層に支払能力が無い
これは、
- 商品やサービスを利用する人
- 対価を支払う人
が一致していない場合に起こります。
この一致しない状況は、
- 子とその親
- 従業員と企業
などの関係でよく見られます。
例えば、子ども向けのおもちゃやゲーム、学習塾などの習い事などは、それらを利用する本人(子ども達)に支払能力はほとんどありません。そのため、子どもに訴求すると同時に、支払能力のある親のニーズやウォンツを満たさなければ売り上げにつながりません。
同様に、一般企業の従業員の業務が楽になる商品やサービスがあったとしても、従業員個人は会社のために自腹を切ることは難しいはずです。そのため、従業員のニーズやウォンツを満たしながらも、実際に支払を行う企業(の経営者や経理担当者)のニーズやウォンツを満たさなければ「支払能力の壁」を越えることができません。
このように、メインのターゲット層に支払能力が無い場合は、「誰が支払をするのか」を考えてマーケティング活動を設計する必要があります。
支払方法の選択肢が狭い
支払方法の選択肢の幅も、支払能力の壁を高くする原因になることがあります。
例えば手元にクレジットカードしか無い消費者に、現金を支払わせることは無理です。しかしクレジットカードで支払うという選択肢があれば、消費者は無事に「支払能力の壁」を超えて「デマンド」が生まれます。
同様に、銀行口座にまとまったお金がない消費者に、高額な商品を一括で支払わせるのは困難です。しかし分割支払いが可能であったり、支払までの期間に猶予があれば、消費者は「支払能力の壁」を越えることができます。
通信販売会社「ジャパネットたかた」の決まり文句の、「金利・手数料はジャパネットたかたが負担します!」は、まさに「支払能力の壁」を超えさせるための施策です。
他にも衣料通信販売「ZOZOTOWN」の「ツケ払い」なども同様の施策になります。
消費者の支払意思額(WTP)が価格を下回っている
3つめの理由は、消費者が考える適正な価格よりも、売り手の考える価格が高い場合です。
消費者が、
- 「これくらいまでなら払ってもいいかな」と思える金額
のことをマーケティング用語では、
- 支払意思額(WTP:Willingness To Pay、ウィリングネス・トゥ・ペイ)
と呼びます。
消費者は大抵の商品やサービスに対して、価格の基準を持っています。この基準は個人個人でバラバラですが、
- WTPを上回る価格:高いと感じる
- WTPに近い価格:何も感じない
- WTPを下回る価格:安いと感じる
ようなことが起こります。
そのため、売り手がターゲットとなる消費者のWTPを上回る価格設定をしてしまうと、消費者は「支払能力の壁」を越えることができなくなってしまいます。
そうならないためには、
- 価格をWTPを下回るところまで下げる
- 消費者のWTPを引き上げる
などの対応策が考えられます。
価格をWTPを下回るところまで下げる
単純に商品やサービスの価格を引き下げることもできますが、後になって価格を引き上げることが難しくなるため、利益を圧迫し続けることになります。
そうならないためには、
- 廉価版の商品やサービスを開発する
- 数量を減らしたりサービス時間を短くしたりする
などで、コストを引き下げながらWTPに近づけるような施策が有効になります。
消費者のWTPを引き上げる
逆に消費者のWTPを引き上げる方法も考えることができます。
そのためには、商品やサービスの価値を消費者に伝えることが重要です。
例えば、同じナイロン製のバッグでも「有名デザイナーがデザインしました」と言えば、そのデザイナーが好きな消費者のWTPを引き上げることができます。
また、同じ商品でも「価格が少し高いけど環境に優しい素材を使用しています」とか、「価格が少し高いけど売り上げの一部を恵まれない子供に寄付します」というような理由づけをすれば、消費者のWTPが引き上がることがあります。
このように、ちょっとした違いで差別化することができれば、消費者のWTPを引き上げることにつながり、「支払能力の壁」を越える助けになります。
支払意思額(WTP)についてのより詳しい情報は、こちらの記事をご覧ください。