顕在ニーズ
顕在ニーズとは、課題や目的を解決するための必要性を消費者が自覚している状態です。
この顕在ニーズの状態では、消費者の意識は抽象的であるため、マーケティング活動によってより具体的な「ウォンツ」へと変化させる必要があります。
顕在ニーズに関わるマーケティング活動としては、
- 顕在ニーズのウォンツ化
- 製品(サービス)コンセプトの変更
などがあります。
顕在ニーズのウォンツ化
最も王道のマーケティング活動は、顕在ニーズを「ウォンツ」に変化させることです。
先ほど挙げた寝具メーカーの例で考えると、
- 顕在ニーズ:消費者「自分は睡眠環境を改善する必要性がある!」
という形で顕在化したニーズを、取り扱っている「寝具」のウォンツにつなげなければなりません。
そこでマーケティング活動は、
- 顕在ニーズ:消費者「自分は睡眠環境を改善する必要性がある!」
- マーケティング活動:企業「睡眠環境は自分に合った枕で改善できます」
- ウォンツ:消費者「自分にピッタリ合った枕が欲しい!」
という形にすれば、うまくウォンツに誘導することができます。
ここで注意しなければならないのは、もし潜在ニーズが同じだったとしても顕在ニーズが違えば、ウォンツに変えることが難しくなるということです。
例えば、製薬メーカーが、
- 潜在ニーズ:消費者「朝起きて体がだるいのは当たり前」
という寝具メーカーと同じ潜在ニーズを発見したとします。
しかしニーズの顕在化をせずに、
- 顕在ニーズ:消費者「自分は睡眠環境を改善する必要性がある!」
という潜在ニーズにビタミン剤でアプローチしようとすればどうなるでしょうか?
- 潜在ニーズ:消費者「朝起きて体がだるいのは当たり前」
- 顕在ニーズ:消費者「自分は睡眠環境を改善する必要性がある!」
- マーケティング活動:企業「ビタミンを取れば朝すっきり起きられます」
- ウォンツ:消費者「…?」
となって、ウォンツに至らないかもしれません。
ここで注目が必要なのは、製薬メーカーもちゃんと潜在ニーズを解決する方法を提案しているということです。
それにも関わらず、ウォンツ化しないのは、顕在ニーズとマーケティング活動の内容が離れているからです。
「こんな下手なことするマーケターはいないでしょ (笑) 」と思う方もいるかもしれませんが、普通に起こってしまうのが現実です。
潜在ニーズと顕在ニーズを区別していなければ、
- 消費者の潜在ニーズを解決する = 宣伝すれば売れる
と考えてしまうこともあります。
その結果、消費者の潜在ニーズを満たしているのにもかかわらず、消費者が持っている顕在ニーズと一致しないマーケティング活動をしてしまうことで成果につながらないことが起こります。
このことは知覚プロセスの「選択的注意」の側面からも説明できます。
選択的注意とは、
- 人は特定の刺激にだけ選択的に注意を向ける現象
のことです。
消費者はいくら情報を与えても、
- 自分には関係ないことだ
と思えば、注意を向けることはありません。
そのため、顕在ニーズとマーケティング活動のメッセージが一致していなければ、消費者は注意を向けず、興味も持たず、ウォンツに変化する可能性がとても低くなります。
この場合の対応策は「ニーズの再顕在化」です。
これを先ほどの製薬メーカーで例えると、
- 潜在ニーズ:消費者「朝起きて体がだるいのは当たり前」
- マーケティング活動:企業「朝、体がだるいのはビタミン不足のせいかも」
- 顕在ニーズ:消費者「自分は不足するビタミンを摂る必要性がある!」
- マーケティング活動:企業「ビタミンを取れば朝すっきり起きられます」
- ウォンツ:消費者「朝すっきり起きれるビタミン剤が欲しい。」
というようにニーズ顕在化のマーケティング活動の内容を変えることで、「潜在ニーズ → 顕在ニーズ → ウォンツ」の流れがよりスムーズになります。
製品(サービス)コンセプトの変更
顕在ニーズをウォンツに変えるもう一つの方法は、
- 製品やサービスのコンセプトを顕在ニーズに合ったものに変更する
ことです。
先ほどの例では、
- 顕在ニーズ:消費者「自分は睡眠環境を改善する必要性がある!」
という顕在化したニーズに対しては、
- マーケティング活動:企業「ビタミンを取れば朝すっきり起きられます」
という訴求では一致度が低い状態でした。
しかし、
- マーケティング活動:企業「ビタミンを取れば睡眠の質が良くなります」
という訴求を行えば、顕在ニーズと製品のコンセプトが近づくので、消費者に興味を持ってもらえる可能性が高まります。
このように、顕在ニーズと自分たちの扱っている製品やサービスがかけ離れているように思えても、切り口を変えることで「ウォンツ」に導けることがあります。