マーケティングマイオピアとは?近視眼を避ける方法と具体例

マーケティングマイオピア(Marketing myopia)

マーケティングマイオピアに陥る4つの理由

レビット教授は、論文の中でマーケティングマイオピアに陥った企業を挙げるだけでなく、そのような状態に陥った理由も分析しています。

その4つの理由とは、

  • 市場の拡大が確実なものと信じ切ってしまう
  • 主要製品に対する代替品が存在しないと考えてしまう
  • 大量生産によるコスト優位性に頼り切ってしまう
  • 研究開発・製品改善・製造コスト削減に夢中になってしまう

です。

近視眼的マーケティングを避けるためには、上記の4つの理由に当てはまらないか気をつけることが重要です。

人口増加で市場が拡大し続けるという幻想

1つ目の理由は、人口増加によって市場の拡大が確実なものと錯覚してしまうことです。

世界人口は当時も今も増え続けています。そのため安定した成長市場に身を置いている企業は、増え続ける需要の中で、その増加が続くことが前提で事業運営をしがちです。

しかし実際は、人口が増えていたとしても市場の衰退は起こります。なぜなら「人口の増加 = 市場の拡大」ではないからです。もし新しい代替市場が生まれれば、人々はそちらの市場に移り、旧来の市場は衰退の道を辿りはじめます。

その原因となるのが、2つ目の理由でもある代替品の存在です。

代替品が存在しないという幻想

成長し続ける市場には、新しい企業が次々と参入してきます。しかしマーケティング近視眼に陥る企業は、すでに業界内で圧倒的な地位を築いていることが少なくありません。

拡大し続ける市場に、売れ続ける主要製品。そういった状況が続けば、自信を持って世に出している自分たちの製品に取って代わるものは存在しない、と錯覚しはじめます。

また新しく参入してくる企業も最初は小さな存在であるため、取るに足らない存在だと気に留めないことがほとんどです。

しかし技術革新やライフスタイルの変化によって、代替品は急速に頭角を現します。

なぜこんなことが起きてしまうかというと、次の2つのことが原因になります。

大量生産によるコスト優位性にあぐらをかいてしまう

代替品を軽んじてしまう1つ目の理由が、コスト優位性への強い自信です。

企業は成長するにつれて、

  • 規模の経済性
  • 範囲の経済性
  • 経験曲線効果

などから、コストの優位性を手に入れます。

またコストの優勢を獲得すれば、コストリーダーシップ戦略で業界の主導権を握るようになります。

一方で、新しい技術や代替品は、登場して間もないときはコスト優位性がありません。そのため、既存の企業は代替品にあまり脅威を感じません。

既存製品の改善に夢中になってしまう

もう一つの理由が、

  • 既存製品の更なる研究開発
  • 既存製品の改善・改良
  • 生産コストの削減施策

などが、事業活動の中心になってしまうことです。

もちろん、上記に挙げた事柄は悪いことではありません。既存の製品を改善することが、既存の顧客に対する価値向上につながります。

しかし、既存製品にのめり込みすぎると、既存製品への強い自信によって代替製品や新技術を軽んじたり、コスト優位性への過剰な依存に繋がることもあります。

これは和製英語の「プロダクトアウト」という考え方にも繋がります。

そのため、既存製品をよくすることに夢中になってしまうと、ビジネスを取り巻く環境の変化に鈍くなってしまい、結果的にマーケティングマイオピアにつながることになります。

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