マーケティングマイオピアの原因は自己欺瞞(ぎまん)
レビット教授は論文の中で、マーケティングマイオピアが起こる根本的な原因として、
- 自己欺瞞のサイクル(Self-deceiving Cycle)
を指摘しています。
自己欺瞞とは「自分で自分の心を欺く(あざむく)こと」です。
既存の企業は、新しい技術や代替品が登場した時に、
- 自分たちは良い製品を作っているから大丈夫
- 製品の改善で顧客が喜んでいるから大丈夫
- 代替品よりもコスト優位性があるから大丈夫
などと、自分たちの不安をかき消すように物事をとらえがちです。
「もしかしたら」と望ましくない将来を想像しても、目の前の顧客の出来事を優先したい気持ちになります。
このように、業界内で自分たちの不安を自分たちで欺いて安心させる行為が、マーケティングマイオピアを引き起こして、業界の衰退を招くかもしれません。
後から歴史を見れば、
- なんであの企業は新市場に参入せずに廃業したのだろう
- なんであの企業は古い技術にすがって遅れをとったのだろう
などと考えてしまいます。
しかし「わかっていてもできない」ということはいつの時代も起こります。
レビット教授は1975年の回顧録で論文「Marketing Myopia」に対して、
A Manifesto, Not a Prescription
これはマニフェストであり、処方箋ではない。
セオドア・レビット「Marketing Myopia」1975年の回顧録より翻訳
と語っています。
つまりこのマーケティングマイオピアに関する考察は、企業に対する「処方箋」ではなく、企業が顧客に対する「声明文(マニフェスト)」なのです。
わかっていても陥ってしまうマーケティング近視眼を乗り越えて、企業が「顧客志向」を貫くためのマニフェストとして、この論文の教訓を活かすことが重要であるように思います。
マーケティングマイオピアまとめ
以下は、ここまで説明した内容を簡単にまとめたものです。
マーケティングマイオピアってどんな意味?
マーケティングマイオピア(マーケティング近視眼)は、
- 既存製品を中心に考える「製品志向」に極端に傾倒してしまい、「顧客志向」的な視点がおろそかになってしまう状態
のことで、マーケティングに対する視野が狭くなっている状況を指します。
マーケティングマイオピアに陥る原因は?
マーケティングマイオピアに陥りつつある企業は、
- 市場の拡大が確実なものと信じ切ってしまう
- 主要製品に対する代替品が存在しないと考えてしまう
- 大量生産によるコスト優位性に頼り切ってしまう
- 研究開発・製品改善・製造コスト削減に夢中になってしまう
という傾向にあります。
上記に挙げたような行動や考え方が社内で優先され、
- 自分たちは良い製品を作っているから大丈夫
- 製品の改善で顧客が喜んでいるから大丈夫
- 代替品よりもコスト優位性があるから大丈夫
という自己欺瞞(ぎまん)を持つ人が組織内に増えてくると「マーケティングマイオピア」に陥っていると言えます。