簡単でわかりやすいLTVの計算方法
一番シンプルで計算しやすいLTVは、
- LTV = 利益 ÷ 離反率
という計算式になります。
なお、この計算式では「現在価値」を計算しないので、精度が最も低い簡易的な計算方法と言えます。
このLTVの計算に必要なのは、
- 利益:顧客から得られる平均的な利益
- 離反率:再購入する顧客が脱落していく割合
の二つの数値だけです。
例えば、あるラーメン店で、
- 平均客単価:1000円
- 平均の粗利(原価と人件費を差し引いた利益):400円
- 離反率:70%(来店客の7割は戻ってこない)
という数値がわかっていた場合、
- LTV = 400 ÷ 0.7 = 571.4286…
ということで、ライフタイムバリューは約571円となります。
つまりこのラーメン店は顧客を呼び込むために、顧客一人あたり571円までなら広告費をかけても赤字にならないということです。
もしそのラーメン店が地元のフリーペーパーに月額50,000円の広告掲載費用を払っているなら、
- 50000 ÷ 571 = 87.5657…
ということで、新規顧客88人の獲得が意思決定の基準になります。
このようにLTV(ライフタイムバリュー)を使って広告効率を計算すれば、
- フリーペーパー経由の来客が月88人以上 → 広告を継続
- フリーペーパー経由の来客が月87人以下 → 広告掲載を停止
という経営判断ができるようになります。
このLTVの計算式は、計算精度があまり高くはありませんが、ちょっとした経営判断には十分使うことができます。
もしなぜ2つの数字だけでLTVが計算できるのか疑問に思った方は、下記の記事も参考にしてみてください。
LTVは「次回来店時に使える煮卵トッピング無料券」などの費用対効果も「大まかに」計算できます。
例えば先ほどのラーメン店で、
- トッピング無料券の原価:20円
- トッピング無料券の利用率:35%
だった場合、30%の来店客は何もしなくても戻ってくるので、トッピング無料券のリピート効果は5%(離反率は70%→65%に変化)だと考えます。その一方で、原価が20円増えるので粗利は400円から380円に減ります。
これでもう一度LTVを計算してみると、
- LTV = 380 ÷ 0.65 = 584.6154…
ということで、トッピング無料券を配る前よりもLTVが増加したということがわかりました。もちろん厳密な計算ではないので過信できませんが、「トッピング無料券は効果がある可能性は高い」という判断はできそうです。
割引率を考慮したLTVの計算方法
次はもう少し計算精度の高い、「割引率」を使って「現在価値」を計算するLTVの計算式になります。
LTVの計算式は、
- LTV =(利益 × 継続率)÷(1 + 割引率 − 継続率)
ということで、こちらは「割引率」を使って「現在価値」に割り引いた本来の意味でのライフタイムバリューになります。
このLTVの計算に必要なのは、
- 利益:顧客から得られる平均的な利益
- 継続率:再購入する顧客の割合(先ほどの離反率の逆数)
- 割引率:将来得られるお金を現時点の価値に差し引くための割合
の3つの数値です。
「割引率」と「現在価値」についての詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。
ちなみに、ビジネススクールのマーケティング教材の定番である「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 」では、ライフタイムバリューの「割引率」について、
その際には適切な割引率を適用する(例えば、資本コストとリスク態度というコストに応じて10〜20%)。
コトラー他 著「コトラー&ケラーのマーケテイングマネジメント第12版」p186より引用
と書かれています。つまり経営者やオーナーがその事業から大きなリターンを期待している場合などは、高めの割引率で計算するようなイメージです。
例えばある美容院が、
- 顧客一人当たりの年間売上高:50,000円
- 顧客一人当たりの年間営業利益:10,000円
- 顧客の継続率:50%(顧客の半数は翌年も来客する)
- 美容院オーナーの期待収益率(=割引率):10%
という数値がある場合にLTVの計算は、
- LTV =(10000 × 0.5)÷(1 + 0.1 − 0.5)= 8333.3333….
となります。
つまりこの美容院では、顧客1人を獲得するためのプロモーション費用として、8,333円がひとつの目安になります。