LTV(ライフタイムバリュー)とは?顧客生涯価値の意味と計算方法

LTV(ライフタイムバリュー)

LTVの長さが違う3つの市場

LTVの長さはターゲットとする市場によっても違います。

ライフタイムバリューの視点から、

  • 永久獲得市場:一度顧客になったら永久に顧客であり続ける市場
  • 単純維持市場:一定期間を過ぎると顧客が永久に離れる可能性のある市場
  • 顧客維持市場:顧客が頻繁にスイッチング(利用の切り替え)を行う市場

という3つの市場に分類することができます。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p195を参照)

永久獲得市場

LTVの永久獲得市場とは、一度顧客にしてしまえば滅多なことがない限り顧客であり続けてもらえる市場のことです。この永久獲得市場にある商品やサービスを取り扱っている場合は、LTVが文字通り「生涯顧客価値」になります。

具体例としては、

  • 老人ホーム
  • 信託銀行
  • 医療機関

などが該当します。

永久獲得市場の商品やサービスは、

  • 契約期間が長期にわたるor生涯にわたる
  • 利用をやめるキッカケになる出来事が滅多に起こらない
  • 売り手と買い手の関係性が密接になる

などが考えられます。

例えば老人ホームなどは、終の住処(ついのすみか)として利用者が生涯を終えるまで利用し続けることのできるサービスがあります。途中で介護事業者を変更することもできますが、生活環境が大きく変化することが利用者の負担になってしまうため、多くの場合に一生涯の顧客になります。

また個人や法人の財産を運用管理する信託業務を行う銀行なども、利用者は滅多なことがない限り契約を解除することはありません。財産の管理は一個人のみならず、財産を相続することで何代にもわたって運用管理されることもあります。

そのため「割引率を考慮したLTV計算式」などの、一定の利益が永遠に生まれると想定するような計算式で、ライフタイムバリューを求めることができます。

単純維持市場

LTVの単純維持市場とは、一定の期間を過ぎると顧客が二度と戻ってこなくなる市場のことです。この単純維持市場にある商品やサービスでは、LTVを平均的な利用期間で計算することがほとんどです。

具体例としては、

  • 通信会社
  • 雑誌の購読
  • 公共交通機関
  • 水道光熱費

などが該当します。

単純維持市場の商品やサービスは、

  • 一定の利用期間が過ぎた後に解約できる
  • ライフスタイルの変化で利用されなくなる

などの特徴があります。

例えば携帯電話回線や雑誌の年間購読契約などは、初回の契約では必ず一定期間の利用を見込むことができます。しかしその後は、何らかの不満があったり必要性がなくなったいるすると解約され、多くの場合で顧客が長期間戻ってこなかったり、最悪のケースでは二度と戻ってこなかったりします。

また公共交通機関や水道光熱を提供するサービスなど社会的なインフラに関わる事業も、利用者の生活スタイルの変化で顧客が二度と戻ってこないことが多くあります。例えば利用者が引越してしまえば、またその土地に戻ってくるまで、公共交通機関や社会インフラを利用しなくなります。

顧客維持市場

LTVの顧客維持市場とは、顧客が気軽に製品やサービスの乗り換えを行ってしまう市場のことです。この顧客維持市場の商品やサービス自体は、短い期間に対するLTVの計算か、現在価値を考慮しない計算方法になることが多いようです。ただし、それらを取り扱う店舗や販売代理店は、顧客との間に関係性を築くことで中長期にわたる現在価値を考慮したLTVの計算が可能になります。

具体例としては、

  • 日用品
  • 飲食店
  • 航空会社

などが挙げられます。

顧客維持市場の商品やサービスは、

  • 機能に差が出にくい
  • 切り替えるリスクがとても低い

などの特徴があります。

例えば日用品では、様々な企業が同じ機能の製品が販売されているため、どれを買ったとしても目的は最低限果たすことができます。また飲食店では限られた予算でお腹を満たすことができますし、航空会社が違ったとしても出発地と到着地は変わりません。

このように得られる機能がほとんど同じで、切り替えたとしても大きなリスクが発生しない場合は、顧客が気軽に切り替えを行ってしまうため、商品やサービス単体ではLTVの計算が難しくなります。

LTVとスイッチングコストの関係

ここまでターゲットとする市場によってLTVが違うことを説明しましたが、このようなことが起こる一番の理由が「スイッチングコスト」の存在です。

スイッチングコストとは、

  • ある製品やサービスから別の製品やサービスに切り替える場合に必要なコスト

のことで、具体的には、

  • 金銭的コスト:他の製品やサービスに切り替えるために必要な金銭的な負担
  • 手続き(物理的)コスト:他の製品やサービスに切り替えるための手間暇
    • 探索コスト:新たに切り替える製品やサービスを探すための負担
    • 移動コスト:切り替えることによる物理的な移動距離の変化
    • 作業コスト:切り替えに必要な書類手続きなどの作業
    • 学習コスト:切り替え後に新たに覚えなければならないことへの負担
  • 関係性(心理的)コスト:他の製品やサービスとの関係性を再構築する負担

などのコストに分類することができます。

もし顧客にとって商品やサービスのスイッチングコストが高ければ、LTV(ライフタイムバリュー)は長くなる傾向にあります。

スイッチングコストのより詳しい解説は、こちらの記事をご覧ください。

スイッチングコスト スイッチングコストとは?意味と事例をわかりやすく解説

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