ファイブフォース分析の「儲け」と「競争圧力」
ここでの「儲け」とは「利益」のことです。利益は価格(売値)とコスト(原価)で決まります。
- 利益 = 価格 + コスト
利益が減ってしまう状況、つまり儲からない状況とは、
- 価格が下がる
- コストが上がる
ということが起きる場合になります。
言い換えると「競争圧力」とは、
- 商品やサービスの価格が下がってしまう要因
- 商品やサービスのコストが上がってしまう要因
となります。これらを分析するのがファイブフォース分析です。
それぞれの競争圧力の例は、下記のとおりです。
- 新規参入の脅威
- 供給量が需要を上回って価格が下がる
- 参入させにくくするために投資を行ってコストが上がる
- 代替品の脅威
- 代替品と値下げ競争になって価格が下がる
- 代替品への顧客流出を防ぐための販売促進でコストが上がる
- 顧客(買い手)の交渉力
- 値下げ要求に応じることになり価格が下がる
- 顧客の品質要求が高くなりコストが上がる
- 供給業者(売り手)の交渉力
- 品質の低い原材料しか供給されず価格が下がる
- 原材料の値上げに従うことになりコストが上がる
- 業者間の敵対関係
- 値下げ競争で価格が下がる
- 広告宣伝費が膨らんでコストが上がる
これらの競争圧力を分析することで、その産業や業界がどれくらい儲けやすいのか、または儲けにくいのかを知ることができます。
ちなみにSWOT分析では、競争圧力はどれも「脅威」に分類される内容ですね。逆にその競争圧力が存在しなければ「機会」と考えることもできます。
分析した結果から
- 儲けやすい業界に参入する
- 儲けにくい業界から撤退する
- 競争圧力を弱める方法を考える
…など、様々な事業戦略を考えることができます。具体的な戦略については、「ポーターの3つの基本戦略」のいずれかを取ることを提案しています。3つの基本戦略は競争圧力を弱めることが目的です。
ファイブフォース分析の目的
ファイブフォース分析の目的は、分析対象となる業界が魅力的かどうか(儲かるかどうか)を判断することです。
以下がファイブフォース分析の特徴になります。
- 業界の特定の瞬間をとらえて分析する
- 5者の競争圧力をバラバラに考える
- 全ての企業が合理的に判断することを前提にする
- 時間による業界環境の変化をとらえて分析する
- 5者の関係性を考慮して競争圧力を考える
- 不合理な判断をする競合の存在を想定する
ファイブフォース分析は、その分析した時点の様子しかとらえることができません。分析をして戦略を考えて、さてこれから実行…という時には状況が変わっているかもしれません。
また5者による圧力はバラバラに表現されているので、基本的にそれぞれを個別に考えることになります。複数の圧力が組み合わさった場合の影響は、分析しにくいと言えます。
もうひとつ重要なのは、このフレームワークは経済学がベースにあるため「みんな合理的な判断をする」のが前提にあるということです。例えば「仕入れが難しいから儲かりにくい。だから新規参入は今後も少ないだろう。」という分析結果が出たとします。しかし実際には、それでも参入して業界にイノベーションを起こし、圧倒的シェアを奪う企業もいます。