ターゲティング戦略その3:市場専門化戦略
先ほどの製品専門化戦略とは逆に、単一の市場セグメントを複数の製品で満たし続けようとするのが「市場専門化戦略」です。
単一の市場セグメントに深く働きかけることで、
- マーケティング活動における経験曲線効果を得る
- 市場セグメント内での製品シェアだけでなくブランドや企業のシェアを高める
といったことを実現します。
これはアンゾフ・マトリックスでは「市場浸透戦略」と「製品開発戦略」を同時に行うようなイメージになります。
製品開発戦略は、
- 新しい製品で既存市場のシェアを高めようとする戦略
であり、既存の製品を軸にする形で、市場セグメントのニーズやウォンツを別の製品でもカバーできるように製品開発を行います。
このターゲティング戦略のデメリットは、「単一セグメントへの集中戦略」と同様で、
- その特定の市場セグメントに大きな変化があった場合に売上が激減する可能性
- 別の企業のイノベーションによって市場セグメントが消滅する可能性
- 大手企業の参入によって一気に形勢が逆転してしまう可能性
といった、市場セグメントへの依存によるリスクが存在していることです。
ターゲティング戦略その4:選択的専門化戦略
最初に説明した「単一セグメントへの集中戦略」を、複数の市場セグメントで展開するのが「選択的専門化戦略」です。
選択的専門化戦略は、単一セグメントへの集中戦略が成功し、資金的な余裕が生まれた場合に取るべき戦略になります。
集中型ターゲティング戦略(=単一セグメントへの集中戦略)に対してコトラー教授が指摘していた、
- その特定の市場セグメントに大きな変化があった場合に売上が激減する可能性
- 別の企業のイノベーションによって市場セグメントが消滅する可能性
- 大手企業の参入によって一気に形勢が逆転してしまう可能性
というデメリットは選択的専門化戦略によってカバーすることができるようになります。
また複数の異なる製品を手掛けることで、範囲の経済が働く可能性もあります。
しかしこの戦略にもデメリットがあります。
- 経営資源が分散してしまう
- 個別のマーケティングが必要になり効率化ができない
- 個別の製品を作る必要があり規模の経済が働かない
などが挙げられます。
経営者としては、儲かっている市場セグメントにすべての経営資源を投入することを諦める一方で、収益性が多少落ちても経営の安全性を高める、というトレードオフを行うことになります。