観察法によるマーケティングリサーチ
「観察法」とは、調査対象の行動や反応、取り巻く環境などを観察することで情報を集める方法です。
著名な経営者には、顧客と自社との接点である現場に足しげく通う人が多くいます。それは「今」起きていることを、経営者自身の五感で感じ取ることができ、様々な情報から気づきを得られるからです。
観察の対象としては、
- 顧客を観察する
- 自社を観察する
- 競合他社を観察する
の3つに分けることができます。これは3C分析とも繋がる考え方です。
店舗での観察
例えば小売業では、顧客の店内の動線や行動、視線の動きなどに注目します。調査員が顧客に紛れて、観察対象になった顧客に張り付いて、入店から退店までの一連の行動を詳細に記録します。そして記録した何人もの顧客での行動を集約し、分析して議論を行います。
自社や競合他社を観察する場合には、調査員が実際に店舗を訪れたりして、サービス品質や製品をチェックしたりします。この場合は外部の調査会社に依頼することも少なくありません。
自社のサービスを調査する「ミステリー・ショッパー(覆面調査)」と呼ばれる方法は、全国展開するチェーン店の小売店やサービス業などでは定期的に実施され、サービス品質の向上や改善に役立てられています。
また競合他社のサービスなどを調査員が体験し、気づいたことや感じたこと、自社のサービスとの違いなどを観察して情報を集めることも行います。
店舗以外での観察
この観察法が行われるのは、店舗だけではありません。メーカーなどが行う観察法は、製品が実際に使われている場所に行って観察を行います。
有名な例としては、無印良品の商品開発が挙げられます。
無印良品では、顧客と共に商品を作り上げるという文化があります。その一環として、顧客の自宅を訪問して、無印良品の製品が生活の場でどのように使われているかを観察しています。
生活の現場で調査員は、
- 製品の問題点の発見
- 製品の新しい使い方の発見
- 消費者ニーズの収集
などを行い、既存製品の改良や新製品の開発に情報を活かします。
機械装置を使った観察
観察法では、調査員が直接観察する方法の他に、機械や装置を使って観察する方法もあります。
例えば、アイトラッキングの装置を使えば、調査対象者の目の動きを追うことができます。棚に並んだ商品を探す目の動きや、パッケージや広告で対象者が注目する場所、操作画面で目的のボタンを探す動きなど、目の動きを機械で観察することで情報を収集します。
また顧客の店内の行動も、調査員が一人一人観察するのではなく、AIによる画像認識技術を使って大量の調査対象者の行動を処理することもできます。
また店内に入った調査対象者の携帯端末の電波をセンサーで取得することで、一度に多数の調査対象者の行動も記録することができます。
実験法によるマーケティングリサーチ
実験法とは、複数のグループで実験を行い、特定の因果関係を発見するために行います。
因果関係とは、
- ある出来事が別の出来事を直接的に引き起こす関係
のことです。
つまり、
- 〇〇をすると売り上げが増える(減る)
- 〇〇をすると来店頻度が上がる(下がる)
- 〇〇をするとブランドイメージが上がる(下がる)
など、実験することによって、
- 〇〇すると××が起こる
という原因と結果の関係を見つけるのが実験法の目的になります。
具体的には、企業はマーケティングリサーチで実験を行うことで、
- 料金の変更が売り上げに影響するのか
- 店舗レイアウトの変更が客足にどう影響するのか
- 会計時にクーポン券を渡すと再来店時の客単価がどう変化するのか
などなど、様々なことを知ることができます。
そのためには、
- 原因を与えたグループ
- 原因を与えていないグループ
の2つのグループを同じ条件で用意して、比較する必要があります。
例えば飲食店や小売店であれば、
- 同じ地方
- 同じ商圏人口
- 同じ1日の来店客数
- 同じ顧客層
- 同じ売り上げ規模
の店舗を数店用意して、
- 通常の店舗レイアウトのグループ
- 新しい店舗レイアウトのグループ
に分けて実験を行います。
そして一定の実験期間を経て、各店舗の数値の比較を行います。
この時に注意しなければならないのは、
- 単純に数値が多いか少ないかで比較してはいけない
ということです。
なぜかというと、
- たまたまそうだった場合
- 誤差の範囲だった場合
があるからです。
このような説得力のない調査結果を避けるために、統計の手法を使います。
ここでは詳しく説明しませんが、統計を使って実験したグループを比較すると、「有意差」があるかどうかがわかります。もし結果に統計的な「有意差」があれば、「たまたま」そうなったという確率が非常に低いと言えます。
このように実験を行うだけではなく、その結果を意味のある情報に加工するまでが実験法になります。
具体的な実例については、「一部店舗」などのキーワードでニュースを検索してみると色々と見つかるはずです。
一部の店舗で実験を行い、結果に「有意差」が得られたら因果関係がある可能性が高まります。継続的に実験を行うことで、マーケティングの情報を手に入れ、ビジネスの成長につなげることができます。