ターゲティング戦略:コトラー型とエーベル型の違い
ターゲティング戦略には、
- フィリップ・コトラー教授の3つのターゲティング戦略
- デレク・エーベル教授の5つのターゲティング戦略
が存在しています。
いずれも1980年頃に提唱された考え方で、どちらが優れているかというより、
- シンプル化されたターゲティング戦略
- より高度で詳細なターゲティング戦略
というように捉えることができます。
シンプルなコトラー型ターゲティング戦略
まずマーケティングの大家、フィリップ・コトラー教授のターゲティング戦略は、
- 無差別型ターゲティング戦略
- 差別型ターゲティング戦略
- 集中型ターゲティング戦略
の3つです。
図で表すと以下の通り。
マーケティングミックス(4P)である、
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
をセグメントごとに対応させる、といったイメージです。
これは、同時期(1980年)に発表された、
- マイケル・ポーター教授の3つの基本戦略
に共通する部分が見られます。
3つの基本戦略では、
- ターゲットを市場全体に定めるか特定セグメントに定めるか
- ポジショニングを重視する(差別化戦略)かコスト優位を目指すか
といった視点で戦略が決まります。
つまり、
- コトラー教授の無差別型はポーター教授のコストリーダーシップ戦略に近い
- コトラー教授の差別型はポーター教授の差別化戦略に近い
- コトラー教授の集中型はポーター教授の集中戦略に近い
と考えることもできます。
ただし、ポーター教授は事業や産業といったより大きな視点、コトラー教授は製品やサービスといったよりミクロな視点であることには注意が必要です。
3つの基本戦略についてのより詳しい情報は、下記の記事をご覧ください。
高度なエーベル型ターゲティング戦略
「エーベルの三次元事業定義モデル(1980年)」で有名な、デレク・エーベル教授は、
- 単一セグメントへの集中戦略
- 製品専門化戦略
- 市場専門化戦略
- 選択的専門化戦略
- 市場のフルカバレッジ戦略
といった5つのターゲティング戦略を提唱しています。
エーベルの三次元事業定義モデルとは、
- その事業の恩恵を受ける顧客は誰なのか?
- その事業で満たすべき顧客ニーズは何なのか?
- その事業はどんな技術によって実現できるのか?
という3つの問いで事業領域を定義する方法のこと。
これらの問いにある、
- 顧客ニーズ
- 技術
というのが、ターゲティング戦略にも繋がっていきます。
以下のターゲティング戦略の図解には、
- 縦軸:製品1、製品2、製品3…
- 横軸:市場1、市場2、市場3…
と2つの軸が設定されていることがわかると思います。
この2つの軸はそれぞれ、
- 市場 = 顧客ニーズ
- 製品 = 技術
と解釈することができます。
セグメンテーションの説明でもお伝えしましたが、セグメンテーションは変数を使って顧客のニーズやウォンツを抜き出すこと。
つまり、このエーベルのターゲティング戦略の図は、セグメンテーションで顧客のニーズやウォンツを抜き出した市場セグメントが横軸に並んでいる、ということになります。
これはイゴール・アンゾフ教授の「アンゾフのマトリクス(1957年)」も思い起こさせますよね。
アンゾフのマトリクスは、
- 「製品ライン」と「市場(製品使命)」の2つの軸で多角化戦略を考える
ためのフレームワークで、
- 市場(製品使命)
という軸も、マーケティングの視点では市場セグメントであり、顧客のニーズやウォンツを顕在化させたものになります。
以降のページでは、エーベル教授の5つのターゲティング戦略をベースにしながら、コトラー教授の戦略とその他の戦略フレームワークについて解説します。