ニーズとシーズの違いと商品開発
ニーズという言葉とともによく検索されるのが、「シーズ(Seeds:種)」です。
シーズとは、
- デマンドの受け皿となる商品・サービスのベース技術
のことであり、競合他社より優れた商品やサービスを提供するための価値の源泉になります。
言わば、
- 様々な商品やサービスが育つ元となる種(タネ)
です。
わかりやすいものだと、特許技術やノウハウなどが代表的なシーズです。他の経営学の用語であれば「コアコンピタンス」や「ケイパビリティ」が近い意味の言葉になります。
企業はシーズをベースにして、商品やサービスを開発します。
下の図を見るとは、
- 商品・サービスと「支払能力の壁」は直結している
ことがわかるかと思います。
つまり、先ほどご説明した「支払能力の壁」の高さは、どのような商品やサービスを提供するかによって大きく変わります。
そしてその商品やサービスは、どんなシーズを使うかによってもコストが変わります。
例えば、高度な最新技術を使って電気製品を作れば、その電気製品の小売価格が高くなってしまうかもしれません。これは単に人件費や材料費が高いというわけでなく、高度な最新技術を手に入れるために使った莫大な研究開発費を売り上げから回収しなければならないからです。
そのため、消費者が持つニーズとウォンツを解決するだけでなく、商品開発において適切なシーズを選ぶことで、「支払能力の壁」を消費者が越えることのできる高さに抑えなければなりません。
ニーズとウォンツの違いまとめ
最後にもう一度「ニーズ(必要性)」「ウォンツ(欲求)」「デマンド(需要)」の関係を図で確認してみましょう。
例えば、「通勤」について考えると、
- ニーズ:会社まで移動する必要性
- ウォンツ:自家用車、電車、バス、タクシー
- デマンド:プリウス、JR東日本、都営バス、日本交通
となります。「昼食」について考えると、
- ニーズ:お昼時に空腹を満たす必要性
- ウォンツ:ファストフード、定食屋、コンビニ食
- デマンド:マクドナルド、大戸屋、セブンイレブンのおにぎり
などが考えられます。
また有名な「ドリルと穴の例」であれば、
- ニーズ:棚を作るために木材に穴を開ける必要性
- ウォンツ:電動ドリルで穴を開けたい、穴の空いた木材が欲しい
- デマンド:〇〇社の小型電動ドリル、〇〇社の組み立て棚セット
となります。
ニーズとは?
ニーズとは、
- 消費者が持つ課題の解決や目的を達成する必要性
のことで、
- 潜在ニーズ:必要性があることに消費者自身が気づいていないニーズ
- 顕在ニーズ:必要性があると消費者自身が気づいているニーズ
に分けることができます。
わかりやすく言い換えると、
- 当たり前すぎて不便を不便と感じていないのが潜在ニーズ
- 消費者が不便さを自覚していて解決しようとしていることが顕在ニーズ
です。
ウォンツとは?
ウォンツとは、
- 課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求
ことで、
- 基本ウォンツ:具体的な解決の方向性に対する欲求
- 条件ウォンツ:解決の方向性を選別するための条件
- 期待ウォンツ:当然満たされるべきと思っている暗黙の事柄
の3つに分けることができます。
ニーズとの違いを具体例で表すと、
- ニーズ:お腹がすいた
- 基本ウォンツ:牛丼を食べたい
- 条件ウォンツ:予算は500円以内
- 期待ウォンツ:お店に入ったらすぐに食べれる
となります。
ベネフィットとは?
ベネフィットとは、
- 顧客が得られる便益
のことで、
- 「ニーズ」と「ウォンツ」を満たす便益をコンセプト化(概念化)したもの
を指します。
具体例として、牛丼チェーン「吉野家」の、
- 「うまい、やすい、はやい」
というベネフィットを表したコピーは、顧客の「条件ウォンツ」や「期待ウォンツ」を的確に表現しているだけでなく、企業の行動指針(バリュー)としても機能しています。
デマンドとは?
デマンドとは、
- 消費者の支払い能力が伴う特定の商品やサービスへの需要
のことです。
具体的な解決方法を求める「ウォンツ」が産まれても、
- 消費者が特定の製品やサービスに注意を向ける
- 消費者にウォンツを解決する支払い能力がある
という条件が揃わなければ、売上は生まれません。
そのため売上を作るためには、マーケティング活動によって、消費者に特定の製品やサービスに注意を引き、支払いが可能な状況まで導く必要があります。
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