Desire(欲求):消費者が製品やサービスを欲しくなる
Desire(デザイア、欲求・欲望)のフェーズでは、
- 状態の変化:気になる → 欲しい
- 広告の役割:消費者のウォンツを満たす
- アプローチ:顧客の声や商品の詳しい情報を提供
ということが必要で、
- 消費者に特定の製品やサービスを「買いたい」「利用したい」と思わせること
が広告の目的です。
消費者はニーズとマッチした情報を手に入れると、製品やサービスが「気になって」興味を持ち始めます。しかしこれだけでは、消費者がライバルの製品やサービスにお金を払ってしまうかもしれません。そうならないためには、特定の自社の製品やサービスを「欲しい」と思わせる必要があります。
そのためには、売り手は広告を通して「顧客の声」や「製品やサービスの詳細な情報」を提供して、数ある競合の中から自分たちの特定の製品やサービスを選んでもらうことが重要です。
ここで重要になるのが、消費者の中でニーズの次に生まれる「ウォンツ」です。
ウォンツとは、
- 課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求
ことであり、
- 基本ウォンツ:具体的な解決の方向性に対する欲求
- 条件ウォンツ:解決の方向性を選別するための条件
- 期待ウォンツ:当然満たされるべきと思っている暗黙の事柄
の3つに分けることができます。
消費者はこの3つのウォンツを使って、自分にマッチした製品やサービスを絞り込んでいきます。
例えば、
- 自宅のハウスダストをどうにかしたい
という「顕在ニーズ」を持った消費者が、
- 「この空気清浄機を使えばハウスダストを取り除けます!」
といった広告を目にすると関心が高まります。
その後、
- 空気清浄機が欲しい
という「ウォンツ」が生まれた消費者は、空気清浄機について情報の収集を始めます。
そして、
- 基本ウォンツ:ハウスダストを取り除いてくれる
- 条件ウォンツ:消費電力が低くコンパクトなサイズで色は白色
- 期待ウォンツ:動作音は気にならない程度で故障しにくい
といったように、ウォンツの具体性が高まります。
そして消費者は数ある似たような製品やサービスを評価して、具体的なウォンツに当てはまるものだけを絞り込んでいきます。
その絞り込みに必要なのが、前述した「顧客の声」や「製品やサービスの詳細な情報」といった情報です。
まず顧客の声などクチコミの情報については、その消費者が属する「準拠集団」から得られる情報を重視します。
準拠集団とは、
- 消費者の行動や態度に影響を与えるグループ
のことで、
- 第一次準拠集団:家族、友人(オンライン含む)、隣人、同僚など
- 第二次準拠集団:職場団体、労働組合、宗教団体など
- 願望集団:そこに属したいと思っているグループ
- 分離集団:価値観や態度を受け入れられないグループ
の4つのグループに分けることができます。
例えば雑誌の記事広告で、消費者が憧れる歌手(願望集団のオピニオンリーダー)が「この空気清浄機を使い始めて、喉を痛めることが減りました。レコーディング室でも使っています。」などとコメントしているのを見かけたら、その消費者はその特定の空気清浄機を「欲しい」と感じるでしょう。
他にも様々な製品やサービスで見かける「お友達をご紹介いただくと1000円分の商品券をプレゼント!」や「ご家族も加入いただければ最初の3ヶ月は無料!」などといったキャンペーンも準拠集団を利用した広告の一種です。これらの場合は金銭的なリスクの低減効果の影響もありますが、家族や知人が同じものを使っていることを理由に、消費者の選択肢に残る可能性が高まります。
このように、情報が消費者の準拠集団を経由するほど、消費者に広告の影響を与えやすくなります。
また準拠集団経由ではなく、売り手が消費者に直接情報を与えて、自社の製品を選ぶように「説得」する場合には「精緻化見込みモデル」の考え方が参考になります。
精緻化見込みモデルとは、
- 消費者を説得する手段を2種類のルートで表現した論理モデル
のことで、
- 中心的ルート(論理的関与):消費者に論理的な情報を合理的に検討させる
- 周辺的ルート(感情的関与):消費者に感情的な手がかりを与えて判断させる
という2種類のルートからの説得を説明したものです。
もし売り手が中心的ルートを経由する広告を打つ場合には、
- 得られる機能の詳細
- 性能などの定量的情報
- 実験結果などの科学的根拠
などといった論理的な情報を中心に置きます。
一方で、周辺的ルートを経由する広告を打つ場合には、
- 好感度の高い有名人やタレントを広告に起用する
- 視覚的な効果によってイメージを構成する
- 感情に訴えかけるコピーやメッセージを利用する
などといった感情的な手がかりを広告に盛り込みます。
これらのルートのどちらを中心に広告を構成するかは、製品やサービスの特性、ブランドイメージなどによっても異なります。そのためマーケティングリサーチを行なって、マーケティング活動全体との整合性も考えなければなりません。