セグメンテーションの変数一覧
セグメンテーションの変数とは「市場セグメントの切り口」のことです。
変数を使う目的は、
- 似通ったニーズやウォンツを持つ消費者を切り分ける
ためです。
そのため、考える手順としては、
- 解決できるニーズやウォンツを明確にする
- そのニーズやウォンツを持った消費者の特徴を列挙する
- それらの特徴を切り出すのに最適な変数を探す
- 手順2〜3を繰り返す
というステップを踏みます。
また、市場セグメントの切り口は、
- B2C(一般消費者)向け
- B2B(企業)向け
で異なります。
これらの変数の詳細な情報については、マーケティング調査で情報収集が必要です。
- 1次データ:調査目的に合った方法で自分たちで独自に集めた情報
- 2次データ:公開されているデータや販売されているデータ
など元に、変数の妥当性を検討します。
多くのビジネス書では、一般消費者向け(B2C)の変数しか説明されていないことが多いのですが、ここでは企業向け(B2B)の変数も併せて説明したいと思います。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 p307」「ゼミナール マーケティング入門 第2版 p225」などを参考にしつつ、独自にまとめなおしています。)
B2Cのセグメンテーション変数一覧
「地理的変数」は「ジオグラフィック変数」とも呼ばれます。
地理的変数 | 具体例 |
居住地域 | 大陸、国、八地方区分 、都道府県、市区町村など |
人口規模 | 人口の数 |
人口密度 | 都市、郊外、地方 |
気候帯 | 北部/南部、寒暖、四季 |
「人口統計変数」は「デモグラフィック変数」とも呼ばれます。
人口統計変数 | 具体例 |
年齢 | 年齢区分 |
世代 | 団塊の世代、しらけ世代、バブル世代、氷河期世代、ゆとり世代、さとり世代など |
性別 | 男性、女性 |
性的少数(LGBT) | レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー |
世帯・ライフステージ | 独身、未婚/既婚、共働き世帯、DINKS(共働き子なし世帯)、子持ち世帯、子育て世帯、老齢夫婦世帯、老齢単身世帯など |
「社会的変数」は「社会経済的変数」「ソシオグラフィック変数」などとも呼ばれ、上記の人口統計変数として扱われることもあります。
社会的変数 | 具体例 |
所得・資産 | 年収、金融資産総額など |
職業 | 日本標準職業分類 、学生、主夫/主婦、無職 |
職位 | 社長、部長、次長、課長、係長、主任など |
教育水準 | 中卒、高卒、高校中退、専門卒、大学中退、短大卒、大卒、院卒など |
宗教 | 無宗教、仏教、神道、キリスト教、イスラム教など |
支持政党 | 支持なし、自由民主党、共産党など |
人種 | 白人、黒人、アジア人、ヒスパニックなど |
国籍 | 日本国籍、アメリカ国籍、中国国籍、韓国国籍など |
社会階層 | 最下層、貧困層、労働者階級、中流階級、上流階級など |
準拠集団 | 第一時準拠集団、第二次準拠集団、願望集団、分離集団 |
「心理的変数」は「サイコグラフィック変数」とも呼ばれます。
心理的変数 | 具体例 |
ライフスタイル | 家庭重視、仕事重視、趣味重視、文化志向、スポーツ志向、アウトドア志向など |
性格 | 社交的、内向的、慎重、リスクテイカー、保守的、受動的、能動的など |
「行動変数」は「生活行動変数」「ビヘイビアル変数」とも呼ばれ、消費者の行動パターンと紐つけることができます。
行動変数 | 具体例 |
利用場面 | 日常/非日常、行事、祝日、年末年始、長期休暇、イベント、ライフイベントなど |
評価基準 | 品質重視、機能重視、性能重視、価格重視、見た目重視、スピード重視など |
利用経験 | あり/なし、新規/既存など |
利用頻度 | 毎月の利用頻度、年間の利用頻度など |
利用金額 | 毎月の利用金額、年間の利用金額など |
顧客ロイヤリティ | リピーター、ファン、プロモーターなど |
関与度 | 関心の高さ/低さ、こだわりの強さなど |
購買意思決定プロセス | 問題認識段階、情報探索段階、代替品評価段階、購買決定段階、購買後 |
態度 | 熱狂的、肯定的、無関心、否定的、敵対的 |
上記の「利用頻度」や「利用金額」を分析する方法として、「RFM分析」というフレームワークがあります。
B2Bのセグメンテーション変数一覧
企業向け(B2B)市場は、一般消費者(B2C)市場と違った特徴を持っています。こちらの記事も参考にしてください。
産業統計変数 | 具体例 |
企業規模 | 従業員数、資本金、売上高など |
所在地 | 大陸、国、八地方区分 、都道府県、市区町村など |
業種 | 日本標準産業分類 など |
行動変数 | 具体例 |
購買志向 | 価格志向、ソリューション志向、ゴールドスタンダード、戦略的価値 |
製品類型 | ルーチン、レバレッジ、戦略的、ボトルネック |
注文数量 | 大ロット、小ロット、大口発注、小口発注など |
組織構造 | 集権的な購買、部門ごとの購買、官僚型組織など |
セグメンテーションの4Rと5つの評価基準
切り出した市場セグメントをターゲット市場として最適かどうかを評価するための基準として、
- Rank(ランク):優先順位付けできる
- Realistic Scale(リアリスティック・スケール):有効な市場規模がある
- Reach(リーチ):市場に到達可能である
- Response(レスポンス):市場を測定可能である
の、4つの条件(4R)があります。
しかしこの4つの条件には、「市場から独自の反応が返ってくること」という条件が抜けてしまっていて不完全なのでお勧めしません。
なぜなら、もし複数の市場セグメントから同じ反応が返ってくる(例えば同じ広告に同じ割合で反響があるなど)場合には、市場を細分化している意味がなくなるからです。
代わりに筆者がおすすめするのは、コトラー氏が著書でまとめている、
- 測定可能性:市場の規模を測れること
- 接近可能性:市場にアプローチできること
- 差別化可能性:市場から独自の反応が返ってくること
- 利益確保可能性:市場から十分な利益を見込めること
- 実行可能性:現実的なマーケティング施策を設計できること
という市場細分化の5つの評価基準です。(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 」p326)
1980年代に提唱された5つの評価基準は、より普遍的でマーケティング戦略の本質を無駄なく捉えているように感じます。
ここから先は、次のステップである「ターゲティング」になります。
以下の記事から続きをご覧ください。
ターゲティングとは?設定のやり方と戦略についてわかりやすく図解