6Rのフレームワーク
先述した5つのセグメント評価基準の他にも、「6R(ろくアール)」と呼ばれる評価フレームワークも存在しています。
この2つの評価基準は、どちらに優劣があるわけではなく、補完し合う関係なので両方覚えておくと便利です。
6Rは、
- Response(レスポンス):市場を測定可能である
- Reach(リーチ):市場に到達可能である
- Realistic Scale(リアリスティック・スケール):有効な市場規模がある
- Rival(ライバル):競合が少ない市場を選ぶ
- Rate of Growth(レイト・オブ・グロース):成長が見込める市場を選ぶ
- Rank/Ripple Effect(ランク/リップル・エフェクト):他のセグメントに影響力(波及効果)があるセグメントの優先度を高める
から構成されます。
このうち「Response(レスポンス)」「Reach(リーチ)」「Realistic Scale(リアリスティック・スケール)」の3つについては、先ほどの5つの評価基準の「測定可能性」「接近可能性」「利益確保可能性」にて説明しました。
ここでは残りの「Rival(ライバル)」「Rate of Growth(レイト・オブ・グロース)」「Rank/Ripple Effect(ランク/リップル・エフェクト)」について説明します。
Rival:競合が少ない市場を選ぶ
市場セグメントを選ぶ際に、競合が少ない市場を評価するのが「Rival(ライバル)」です。
誰でも見つけることができて、儲かりやすい市場セグメントには、多くの企業が目をつけて参入してきます。
しかし、そんな市場セグメントはすぐに競争圧力が高まり、儲からない市場セグメントになってしまいます。
そういったことを避けるために、前もって競合が多いか少ないかを検討することもできます。
これは、マイケル・ポーター氏の「ファイブフォース分析」の考えにも通じます。
ファイブフォース分析とは、
- 新規参入業者
- 代替品
- 顧客(買い手)
- 供給業者(売り手)
- 既存企業
の、5つの競争要因から生まれる競争圧力を分析する方法のことです。
ファイブフォース分析では、競合が多いか少ないかだけでなく、
- 新規参入者によって供給量が需要を上回らないか
- 代替品に顧客が流出したり代替品との値下げ競争に巻き込まれないか
- 顧客の奪い合いになったり顧客からの値下げ圧力を受けることはないか
- 原材料の奪い合いになったり供給業者の値上げ圧力を受けることはないか
といったことも考えます。
これは5つの評価基準の「利益確保可能性」にも通じる内容なので、
- 競合が多くないか
- 将来的に競合が増えやすい傾向にあるか
- 競争圧力が少なく利益を確保しやすいか
といったことファイブフォース分析で考えることをおすすめします。
ちなみに「競合が少ない=良い市場セグメント」というわけではありません。
競合が少ない、つまり競合が参入したがらないのには理由があります。ライバルが少ない市場セグメントを見つけたとしても慎重にその理由を探ってください。
Rate of Growth:成長が見込める市場を選ぶ
その市場セグメントが将来的に成長するかどうかを考えるのが「Rate of Grouth(市場セグメントの成長率)」です。
当然ながら、大きな成長が見込める市場セグメントには競合他社も参入します。
そして競合他社がたくさん参入してくれば、先ほどの「Rival(ライバル)」の評価は下がります。
そのため、競合が少なく、且つ、成長性の高い市場セグメントを見つけるのはとても困難な作業になります。
このようなジレンマの解決は、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析」にも通じる部分があります。
PPM分析は、
- 市場成長率
- 相対的市場シェア
を使って、
- 花形(Stars)
- 金のなる木(Cash Cows)
- 負け犬(Dogs)
- 問題児(Question Marks)
の4つのタイプに事業を分類する分析方法です。
上記の「花形」や「問題児」に位置する市場成長率の高い事業は、多くの競合との競争に晒されるので、マーケティングのコストが膨らみます。
そして、継続的に予算を投入し続けなければいけません。
もし標的の候補になる市場セグメントが成長の真っ只中にある場合には、市場成長による大きなリターンが見込める一方で、市場でのシェア争いに莫大なコストが費やされることを想定する必要があります。
Rank/Ripple Effect:影響力のある市場セグメントを優先する
特定の市場セグメントを攻略した際に、そのクチコミが他の市場セグメントにも伝搬すれば、マーケティングコストを大きく引き下げることができます。
このような別の市場セグメントへの波及効果を見込めるセグメントを高く評価しようと考えるのが「Rank/Ripple Effect(順位・波及効果)」です。
わかりやすい例は、スポーツ用品メーカーが、
- プロスポーツ選手
- セミプロ選手
- アマチュア選手
といった順に攻略していくマーケティングの手法です。
セミプロ選手やアマチュア選手は、プロスポーツ選手に憧れを抱く傾向にあります。
これをマーケティング用語では、プロスポーツ選手達はセミプロやアマチュアにとっての「願望集団」と呼びます。
願望集団とは、
- 消費者がそこに属したいと思っているグループ
のことで、消費者の購買行動に強い影響を与える準拠集団の一種です。
例えば、プロスポーツ選手が特定のシューズやトレーニング器具などに対して「とても気に入っている」「効果がある」などと言ったとしたら、セミプロやアマチュア選手はスポーツ用品店に足を運びます。
つまり、スポーツ用品メーカーにとってプロスポーツ選手の市場セグメントは、他のセグメントに対して波及効果の高い市場セグメントだと言えます。
同様に、プロ市場とアマチュア市場の両方が存在している業界では、プロ市場の市場セグメントを高い優先度で攻略しようとする傾向が見られます。